第24話 飛鳥へとカノンへと
授業が始まって どうしても飛鳥のことが気になって 後ろ姿ばっかり見てた。
授業も よく聞けなくて 黒板をノートにうつすだけで
「・・・っ」
どうしても 目を離すことができなかった。
視界が 脳内が 胸の中が
全部に『飛鳥』が侵食していく。
かあぁっと顔が赤くなるのを感じた。
飛鳥の事 好き?
やっぱりわからない
わからないままで返事してもしょうがないだろうし・・・
次の休み時間だった。
「燐 ちょっと来てくんない?」
「へ?」
新一に腕をつかまれる。
「どーかしたの?」
聞いても新一は答えることなく腕をひっぱり廊下へ出る。
廊下は人が少なかった。
1組と・・・もう1クラスが移動教室らしい。からっぽの教室があった。
「どうしたの?」
「・・・あのさ 飛鳥の事なんだけど」
新一が私を少し上目遣いで見る。
気を使ってるつもりだろうか?
「うん・・・どうかしたの?」
「や、その・・・返事 どうするのかなーって」
「・・・新一が心配することじゃないよ」
まぁ、心配してるのは 飛鳥の事なんだろうけど。
「早く・・・返事出したほうがいいと思う」
「へ?どうしたわけ?」
「・・・なんとなく いい予感がしない」
新一は目をそらして教室へ戻っていった。
呼び出しておいて1人で先に帰るのか 身勝手な・・・
身勝手なところは知ってたけど。
新一にも いつか大切な人ができるのだろう。
夢乃にも 奈央にも 明美にも 要にも・・・
私は どうなるんだろう
私のとっての大事な人って 飛鳥なのかな?
その日の昼休憩
「春日部!この荷物職員室まで運んでくれないか?」
担任の先生が私を呼び止めた。
見ると本が詰まれてた。
またか・・・私はこういう用件を黙って聞くように見えるってことなのかな?
「先生ーこれ私1人じゃ無理ですよ?」
軽く先生を睨む。
先生は困ったように笑って男子を見る。
「カノン 春日部と荷物運んでくれ!」
「はーい!」
カノンがにこにこしながらこっちに駆け寄る。
あぁ よりによってカノン・・・
飛鳥のことが頭の中でいっぱいになっててカノンのこと忘れてた・・・
この違いも やっぱり・・・飛鳥の事が好きだからなの?
・・・それにしても 気まずい・・・かも。
まぁ、職員室だし・・・2人になることはないけど。
「失礼しました」
職員室を出る。
うん 何もなかった。
「燐!」
カノンに腕をつかまれる。
あ・・・
「こないだの返事 どうなったわけ?」
「・・・・・・」
「ダメならダメで言ってくんない?」
「えと・・・」
どうしよう
たぶん・・・ほとんどの確率でカノンのことは好きじゃない。
カノン相手にドキドキしたこともなければ男で意識したこともない
カノンの後姿を見つめたり・・・って 飛鳥へのことと比べることもないんだけど。
けど ない・・・と思う。カノンは。
「ゴ・・・ゴメン 私は・・・カノンの事好きじゃないと・・・思う」
階段を上りたいけど・・・階段は背中。目の前にカノン
まして腕をつかまれてるから・・・なんていうか 逃げられない状況。
「・・・」
カノンが一瞬少し上を見てくすりと笑った。
「?」
不意にカノンの顔が近づく。
「へ・・・やっ!?」
次に起こることならわかってた。
避けようとしたけど後ろは階段でへたに動けなかった。
「・・・っ!」
目をつむるが何も起こらない。
目を開けると すぐ目の前にカノンの顔があるだけだった。
「・・・?」
トンッ
後ろで音がしてふりむく。
いたのは 飛鳥だった。
「飛鳥・・・?」
飛鳥は私の腕をつかむと乱暴に歩き出す。
「へ?どっどうしたの?」
「どうしたのじゃねぇ!!」
飛鳥はそう怒鳴って廊下を歩き続ける。
渡り廊下を過ぎて 旧校舎に。
移動教室はもう終わってるはずで 誰もいない。
後ろを見るとカノンはいなかった。
「ねぇ 飛鳥?何・・・」
飛鳥はこっちも見ずに立ち止まった。
しんと静まりかえった校舎は奇妙な空間だった。




