第3話
そして。
天界恋愛管理局。
緊急会議。
⸻
「運命演出課」
「無理です」
「吊り橋効果課」
「無理です」
「ラブハプニング課」
「お願いします、引き取ってください」
「嫌です」
各部署の責任者が首を横に振る。
中央に座る大天使エルヴィスは、深いため息をついた。
「最後の可能性にかけます」
「キューピッド課へ」
⸻
キューピッド課
「ここは失敗しないでくださいね」
「はい!」
アリアは大きな弓を渡された。
「今回は単純です」
「AさんがBさんを好きになる」
「その設定を間違えない」
「矢を当てる」
「それだけです」
「分かりました!」
モニターを見る。
対象。
男子高校生A。
女子高校生B。
本来なら――
『AくんがBさんを好きになる』
アリアは入力する。
「Aが……」
「Bを……」
「好きになる……」
「完璧です!」
しかし。
緊張で手が震える。
「えっと……」
「A?」
「B?」
「どっちがどっちでしたっけ……?」
カチッ。
入力完了。
「よし!」
矢を放つ。
シュッ!
――外れた。
「あ」
矢はそのまま飛んでいき。
全然違う場所にいた女子へ命中した。
「……」
「……」
「どうなりました?」
モニターを見る。
女子高校生。
知らない男子高校生を見つめている。
「……」
「またですか」
「またです」
その日の恋愛エネルギー。
ゼロ
大天使の執務室。
アリアは小さく座っていた。
「申し訳ありません……」
大天使エルヴィスは報告書を見る。
「アリア」
「はい……」
「あなたは、自分がなぜ失敗していると思いますか?」
「え?」
「才能がないから?」
「不器用だから?」
「……」
「違います」
ミカエルは静かに言った。
「あなたは、恋を知らないからです」
「……」
「私は……」
アリアは俯く。
「人間の恋を、ずっと見てきました」
「何千回も」
「ならば分かるでしょう」
「いいえ」
ミカエルは首を振る。
「あなたは見ていただけです」
「恋を数字でしか理解していない」
「好感度」
「成功率」
「恋愛エネルギー」
「あなたにとって恋は、仕事の結果でしかない」
アリアは何も言えなかった。
その時。
「でも、この子は優しいですよ」
声をかけたのは、エルヴィスの秘書であるアリアの母イブだった。
「人間の幸せを願っているから」
「だからこそ」
エルヴィスは続ける。
「人間として恋を経験しなさい」
「自分で誰かを大切に思う気持ちを知りなさい」
「それができなければ、本当の意味で恋を扱う天使にはなれません」
「人間界へ……?」
アリアの顔が青ざめる。
「男の人がいる場所ですよね?」
「います」
「毎日会いますよね?」
「会います」
「無理です!!」
アリアの羽が爆発する。
「目を合わせられません!」
「話せません!」
「近づかれたら心臓止まります!」
「止まりません」
エルヴィスは即答した。
「期間は一年」
「人間界で生活し、人間の恋を学びなさい」
「そして――」
「あなた自身の恋を見つけなさい」
魔法陣が広がる。
「え?」
「ちょっと待ってください!」
「準備が!」
「ありません!」
光がアリアを包む。
「いってらっしゃい」
「アリアなら大丈夫よ」
「お母さん!?」
「頑張ってね♪」
「いやああああああああ!!」
こうして。
恋を結ぶはずの天使。
恋を知らないポンコツ天使・アリアは 人間界へ降り立つことになった。




