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第三十九話 「レジスタンスリーダーの最後」

「<巨人鎧(ゴーレムアーマー)!!>」


 ウィルが魔法を瞬時に唱えると、ウィルの足元を中心にして地面の土が急速に振動を開始し、動くはずのない土がウィル目掛けて軽い土砂崩れが起こったかのように集まり出す。

 

 そして、その常に流動する土の塊はウィルの足元まで到達するとウィルの全身を囲うようにして新たな形を形成していく。


 (なんだこれは!?)


 長年バウンティハンターとして影で活躍してきた55ですら、見たことのない魔法だった。


 しかし、このような未知の魔法が形成されていくのを黙って見守る55ではない。すぐさま『レールガン』を起動させ、高速の電撃光線を動く土の塊に打ち込む。雷系の攻撃魔法は土系の魔法よりは特性上少し有利に働く。レジスタンスリーダーの切り札なのか分からんが、早めに潰しといた方がいい。


 放たれた電撃光線はすぐさま形成途中の土の塊に衝突すると、バシャッ!!という鈍い音と共に大量の土が飛び散り、形成していた土の塊が崩壊した。


(大したことないな 『レールガン』の存在を知らなかったか)


 55は満足げに再び電撃光線を放とうする。


 ウィルを囲っていた土の塊が先ほどよりも成長していた。しかも人の形に。


(何!?他の土でカバーしただと... それにしては補填率が高すぎる)


 先ほど55が崩壊させた土の塊だが、その後壊れた箇所を補うようにして崩壊前よりも急激に地面の土が動き出し、ウィルの周りを囲うようにして土が人型の巨人と化したいたのだ。


 その巨人は55が浮いている位置の人三人分の高さを優に超える高さを誇っている。


(少し甘く見すぎたかもしれん....が)


 巨人の太い土の腕が55目掛けて上から降ってきた。


 それを55はマジックアイテム『フライングシューズ』を使い、空中で体を仰け反りにし降ってきた腕を交わすと、ほぼゼロ距離で『レールガン』を起動させ、電撃光線をこれでもかというほど連射する。


 ブウォーン ブウォーン ブウォーン ブウォーン ブウォーン ブウォーン ブウォーン。


 電撃光線の空気を貫く余波の振動が音となり響く。その音と同時に巨人の腕が破裂し、連射が終わった後には腕の原型が既に失われていた。


(先ほどと比べて土の補填速度が急激に落ちたな... 形成中は魔法発動者を守るためだったのか さすがに常時あの補填速度を保つことはできないようだ)


 全弾打ち込んだ『レールガン』を腰にしまい、55は背中に仕込んだ背骨ほどの長さの黒い円柱状の鉄の塊を抜き出す。


 マジックアイテム『バズーカ』である。


 『レールガン』同様、マジックアイテムに魔法を発動者が注入することで利用できるが、装弾数に限りがある代物だ。『バズーカ』は背骨の長さほどしかないが、その見た目以上に装弾数が多く威力範囲が大きい。


 今回の巨人のような相手にはぴったりだ。


 55は空中を飛びながら、巨人の周りを回転する。巨人が55に狙いを定めるのを遅らせるためだ。巨人のように大きな体だと自然と動きも鈍くなる。自然界は全てを網羅できるほど甘くはない。


 まだ原型のある方の巨人の腕が飛び回る55を捕まえようと横殴りにして奮ってきた。


 すぐに55は迫りつつある巨人の腕目掛けて『バズーカ』を起動し、腕を破壊するため保有する弾を全弾ぶち込む。


 ドーン ドーン ドーン ドーン ドーン ドーン ドーン。


 巨人の土の腕に当たり、幾つも爆発が起きる。確実に両腕はこれで潰せたはずだ。


 爆破により大量の粉塵が55の周りの空中に舞って視界が確保できない。


 慌てて55は粉塵のない空間まで移動しようと試みるが、


 音もせずに、突如下から現れた物体を確認しようとしたときには遅かった。視界の悪さから55が確認した物体。それは巨人の膝であることが分かったときには55の体に重い衝撃が走っていた。


「グワッツッアア!!!」


 下からきた力により制御を失った『フライングシューズ』は55ごと空中で何度も弧を描いてぐるぐると旋回した後、地面へと落ちた。


 55の口から大量の血が目の前の地面に吹き出しているのが、確認できた。


 呼吸ができない。


 慌てて肩を使い、55は仰向けの状態に己の体を持っていき、痛む手で胸を叩く。


 叩いた事で肺に新鮮な空気が急激に流れ込んでくる。


「グホッ!! ハア ハア ハア....」


 なんとか呼吸を再開させた55はよろよろと立ち上がり、自分を落とした巨人を見据える。


 どうやら巨人の方も55の攻撃を諸に受けた所為か腕と肩から上の部分が崩れ落ちていた。


 顔についたベトベトする血を腕で脱ぎ払い55は賞賛を送る。


「ウィル・クェーサー!!! ただの治安維持兵かと思ったがなかなかやるではないか!.... 賞金首にもなる訳だな」


 ただ巨人からの返答はない。今だにウィルの姿は巨人の土の壁に覆われている所為か確認できていないからか。


 自分の賞賛に無反応のウィルが許せない55はイラつきながら己の銀色の手袋を起動させる。


 その手袋もまたマジックアイテムだった。


 『エンハンスハンド』


 普段からマジックアイテムを多用する55は別に通常の攻撃魔法が使えない訳ではないのだ。使える上でマジックアイテムを利用している。


 手数を増やすために。


 治安維持兵は剣をマジックアイテムとして己の攻撃魔法を強化しているようだが、55は手袋を使っている。普段から『レールガン』や『バズーカ』を身につけていると嵩張るという理由からだ。


 バウンティハンターとして実力の高い55は己の力のみに過信せず、使えるアイテムはなんでも利用するというスタンスだ。その55がマジックアイテム以外の己の魔法を使うのは久しぶりのことなのだ。


「<磁力爆破>!!」


 55が魔法を唱えるとかざした手の平の前方から、黒い球体が幾つも出現し始めた。


 そして、その黒い球体は互いに反発し合いながらフワフワと巨人目掛けて飛んで行ったかと思うと巨人を目の前にして破裂したのだ。


 破裂により飛散した大量の黒い粉が崩壊寸前の巨人の全身に纏わりついた。


 すると、


 巨人の体が小刻みに振動しだし、


 内側から破裂した。


 そしてそれまで巨人を形成していた大量の土がボロボロと崩れだし、本来の地面へと戻った。


(死んだかな)


 55はウィルの死体を確認するため土砂の塊と化した山へと向かう。


 山へと到着した55であったが、


 ウィルの死体どころか血痕すら見当たらない。


(何!?どこへ消えた?)


 

 

 55の後方からモクモクと迫りつつある地面の盛り上がりがあった。


 そして、その盛り上がりは55のすぐ足元まで達すると、


 地面からウィルが飛び出してきたのだ。


 咄嗟の出来事に焦った55は振り返りながらパンチをかまそうと試みる。


 しかし、背後を取られた55はウィルの攻撃魔法を諸に受けた。


 「<風切り>!」


 ウィルの右手から投げ払われた圧縮された空気の線が55の背中を切りつける。


 直撃すんでのところで体をよけた55だったが、避けきれず空気の線に耳が接触し、右耳が剥がれ落ちた。


 痛みを噛み殺し、55は腕に備え付けていた隠しナイフを腕を振るいながら取り出し、攻撃で開いたウィルの右脇腹に差し込んだ。


「ダッアアアっ!!?」


 痛みに負け、ウィルは55から距離を置こうとした。


 しかし、この千載一遇の機会を逃したのはウィルのミスだったようだ。


 機会を掴んだ55が、ウィルの右腕を押さえつけた上で『エンハンスハンド』を起動させたのだ。


「<熱拳>」


 55が魔法を唱えると『エンハンスハンド』が急激に銀色から赤黒色に姿を変え、温度が上昇し始めた。周りから蒸気が溢れるその拳をウィルの腹に思いっきり食らわせる。


 食らったパンチにより飛ばされ、地面に叩きつけられたウィルは反撃しようとするが、己の腹が熱によりただれ、皮膚が溶けかけていた。


「手こずらせやがって」


 55は倒れたウィルに向かいながらナイフを構える。首を切断し、賞金首の証拠を持ち帰るために最終準備に入ったのだ。


 ウィルが倒れている目の前に来た55は足でウィルの体を抑え、抵抗できないようにすると片手でナイフを、そしてもう片方の手でウィルの顎を掴み、首を露わにさせる。


 自分は死ぬはずがない。ジーンとともに新たな魔法を習得したのだから。


 自分は死ぬはずがない。なにせレジスタンスのリーダーなのだから。


 自分は死ぬはずがない。....


 迫りつつある55のナイフに自分ができる対抗手段が何もないと悟ると、突然ウィルに死にたくないという人間の生存本能が蘇ってきた。


「やっ やめてくれえええええ!!!! クソガッああああああああ!!!!」


 動く体の部位を全て出来るだけ動かし55から逃れようとする。


 しかし、自分の思い通りにならない。


「それがレジスタンスリーダーの在り方なのかね.... 失望するだろうよ 男なら腹をくくれやあ!!」


 55がウィルを抑える力をさらに強くしたのが感じられた。


(自分は死ぬのか.... ここまできて クソっ)


 僅か数秒がとても長く感じる。


 恐れと死んだ後はどうなるのかという好奇心が入り混じり始める。


 覚悟を生半可に決めれない自分がいるようだ。


(こんな自分ならレジスタンスリーダーは他に任せた方が適任だろう....)


















 「諦めるのか?ウィル」





 聞き馴染みの声が聞こえる。






 鈍い音がウィルのすぐ傍で聞こえたかと思うと、


 55の首が目の前に転がっていた。


 顔が血と涙で汚れていたウィルは腹の痛みを抱え、横に倒れている55を見ながらゆっくりと上半身を起こす。


 すると、目の前に立っていたのは



 父親のジャック・クェーサーだった。



「親父.... 何故 ここに.... 治安維持兵の仕事は.....」



「うるせえ!! 馬鹿な野郎が!! レジスタンスなんかやりおって....」



 自分と同様に目に涙を浮かべている親父が、自分の胸ぐらを掴みズリズリと引きずり始めた。



「....何を...する」



「.....」



 しばらく引きずられたウィルは次第に川の流れる音が聞こえてきたことに気づいた。



「親父!!?」



 すると、ウィルはジャックに抱え上げられ、川へと放り込まれた。





 

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