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異世界便利屋、トゥットファーレ!  作者: 牛酪
五章.花の国、氷華と冥府の七日間
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88.謁見、長老ボビン

「着きまちた!ここが花の国でち!」

「わぁ…………綺麗!」

「見渡す限りの花、花、花!正に花の楽園ですねっ!」


道中で出会った花の妖精、フリルに案内をしてもらい辿り着いたのは花の国。そこは、色とりどりの花が咲き乱れる理想郷のような場所だった。


「ありがとう、フリル。案内までしてもらって」

「えっへへ、困ったらお互い様でち!それにうのりのりさんから来訪者の話は伺ってまちたからね!」

「うのりのりが口利きだったのか…………ところであいつは大丈夫なんだろうか…………」


脱兎のごとく、いやまさしく脱兎なんだけど逃げ出したうのりのり。あいつ、一応魔王城のペットだしそのままにしといたらまずいのでは…………。


「さっきフェルから通信魔法がきたわ。『なぞうさぎがかえってきたんだが。てめーらだいじょぶか』って言ってたから、帰れたみたいよ」

「逃げ足の早い事この上ない…………」


…………まぁそれはともかくとして。花の国に来た目的、それはうちの便利屋…………通称『世界樹』、チート持ちの樹の情報集めだ。


とりあえず、まずは女神様に謁見したい所だけど…………そんな簡単に会えるものなのかな?フリルに聞いてみるとするか


「なぁ、フリル」

「ふぇ?なんでちか?」

「うのりのりから話を聞いてたなら分かると思うんだけど、俺達謎の樹の調査をしてるんだよ。その、この国で一番花とか植物とかに詳しいであろう女神様に会って聞く事って可能なのか?」

「あー、それでちか…………」


フリルは少し困った顔をした後、答える。


「ごめんなさいでち…………現在フローラ様はお出かけなさっているので、いらっしゃらないんでち…………期待に添えず申し訳ないでち」

「あ、そうなのか。いやフリルのせいじゃないし全然大丈夫だけど」


となると、情報集めは難航しそうかなぁ…………。


「あ、でも!そんな皆さん気を落とさないで欲しいでち!今から皆さんには『長老』に会ってもらおうと思ってるでち!」

「長老、かしら?」


長老。なるほど、なんだか物知りでありそうな響き…………。


「フローラ様の右腕にして、この国のナンバー2。そんな長老のボビン様にご意見を伺ってもらおうかと思ってる次第でち」

「ナンバー2なのね。それなら、きっと物知りね」

「花の国の長老様かぁ。どんな人だか気になるし、会ってみたいかも。レイくん、それでいいよね?」

「あぁ。それじゃ、案内よろしく」

「はいでち~」


花の国の入口を抜け、街道を歩き、植物で出来た巨大な建物に辿り着く。ここはきっと王宮とかそんな類の建物なのだろう。


中に入り、長い通路を歩きながら俺達は話を続ける。


「長老様ってどんな人なんでしょうね」

「きっと威厳あるご老人だよ。『我は~』とか言いそうじゃない?」

「私は『ワガハイ』説を推すわ」

「それうのりのりじゃねぇか」


談笑している内に、気がつけば装飾の豪華な扉の前へ。ここだけ明らかに雰囲気が違うし、きっと偉い人の部屋なのだろう。中に長老がいるのかな?


「ここが長老様のお部屋でち」

「ありがと、フリル。それじゃ早速インするわ」

「ちょちょ、待ってくだち!その、えっと…………」

「どうしたの、フリルちゃん?」

「えっと…………私が開けまちけど、あんまり驚かないで欲しいでち。心の準備、しといて欲しいでち」

「え?おい、それってどういう…………」

「お~ぷ~ん」

「ちょぉっ!?」

「おいバカ!フリルが開けるって言ってんだから、勝手に…………!?」


空気を読まないバカ(リの方)がフリルの言う事を無視して扉を開け放つ。そこにいたのは…………。


「おぉ~!君達が件の来訪者だね!やっほ~!長老のボビンお姉ちゃんだゾ☆」

「これが…………!?」

「長老…………!?」


そこにいたのは、他の妖精と違って普通の人間大のサイズで。それでいて、齢十七位にしか見えない若いお姉さんだった…………。


「え、この方が長老なんですか」

「…………でち。長老っぽくないでちけど、れっきとした長老でち」

「それって私が若く見えるって事だよね?ありがと~!」

「露骨なキャラ作りはやめて欲しいでち長老。普段そんな喋り方しないでしょはっきり言ってキモいでち」

「…………意外とズバッと言うねフリル君。そうだよ若作りだよさーせんでしたー。…………まぁそんな訳で、長老のボビンだ。よろしく頼むよ」


思ってたより毒舌だったフリルにも驚くが、それよりこの長老(?)の方に驚きだ。…………これはダメな人だ、ナナさん的なタイプのダメな人だ。直感が告げている。


「ちょ、長老さんすっごく若く見えるけど…………長『老』なんですか」

「妖精は歳をとっても見た目が変わらないでちからね。お姉さん面してまちがこの人実は齢ごせ…………」

「フーリールーくーん♡それ以上言ったら汝の(はらわた)を引きちぎり地獄の業火で焼き上げ吊し上げた後にその肉を細かく砕き蘇生術をかけながら生きたまま苦しみを味あわせその後も」

「わーわーわー!!な、何も聞こえないでち!でもなんかごめんなさいでち!すみませんでちぃぃ!!」

「…………次はないよ♡」


あ、やっぱりナナさんタイプの人だ。全く笑ってない笑顔といとも容易く放たれる容赦のない言葉がまんまナナさん(ゲス)


因みにフリルは土下座をしている。マジで殺りかねないし、まぁ仕方ない。ドンマイ。


「まぁという訳で!フローラ様の右腕にしてこの国のナンバー2!テーマパークで言う所の社長とオーナーの関係のオーナーの方の私に何でも聞いてくれたまえ♪」

「わかったわ。嫗の方ね。お話してもいいかしら」

「ちょっと待たんかい」


❶{名詞}おうな。ばば。せなかのかがんだ老婆。(広辞苑より)


リヴィも一切容赦なくキレッキレのボケをぶちかましながらボビンをお婆さん扱いし始めた。これ、あまりに悪意なくボケてきたからボビンも対処に困ってるぞ…………。


…………それはともかくとして、この人に話を聞かないと進んでいかない。気は進まないけど。リヴィに対話を任せっきりにすると状況がカオスの支配下におかれそうだから、俺がざっくり話してしまおう。


「そのですね……………」


粗方話終えると、ボビンは頷きながら。


「ふむふむ…………それは私としても興味深いね。調査隊を派遣でもして本格的に調べてみようか」

「わぁぁ!本当ですか!」

「本当だとも!…………ただ、うちの調査隊はちっこいからね、調査にどうしても時間がかかっちゃって…………一週間は待ってもらいたいかな」


物理的に小さいから調査に時間がかかる…………なるほど。


「それまでここでの宿もしっかりと用意させてもらうから、ゆっくり休んでもらって構わないよ♪ここはいい所だから是非しっかりと観光してもらいたいしね」

「観光…………悪くないわね」

「最近七賢者だの厄災だの幻霊だのやばいのとやり合ってたからねー。たまのバカンスもいいかもね」


リヴィとルミネの言う通り、最近働き詰めだったからこういったバカンスの提案は凄くありがたい。ここはお言葉に甘えさせてもらうとしようか!


「それじゃ、それでお願いします」

「了解!花の国での休暇、楽しんでくれたまえ!」


こうして、俺達の花の国でのバカンスが始まったのだった。


…………因みに、フリルはまだ土下座を続けていた。

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