86.【0日目】便利屋と世界樹
今回から5章開幕です。それでは、どうぞ。
「ここに余ったプリンがあります」
相対するは、台所。五つ入りのプリンを買った翌日の朝、既に残りは一つ。
「リヴィりんとルーちゃんは『あげるよ』と言ってました。後は…………分かりますね?」
「よしプリンを賭けてジャンケンだ」
「何で空気読まないんですかー!?そこは『可愛いライカちゃんにあげるよ』でしょー!?」
「死んでもそんな事言わん」
真剣勝負、恨みっこなし。この舐め腐った天使には是非とも負けてもらいたい。まぁ、俺が負けたら素直に渡すけど…………渡さないとどっかの人みたいで嫌だし。
「絶対負けるから嫌です!譲ってください!」
「はいジャンケンしましょうねー」
「聞く耳持たないやつですこれ!?こうなったら意地でも勝つしかないです!ええい、パパよ!」
ママは性転換したのか?
「じゃーん、けーん…………」
そして、プリンを賭けた真剣勝負の行方は…………!
「ポン!」
【ボン!!】
げぶっ!?
「あー、負けちゃいました…………およ?レイさんが黒焦げになって倒れてますね?…………という事は、食べられないですよね~?いっただっきまーす!…………うーん、美味しいです~!」
…………真剣勝負の行方は、汚い手を使ったライカに軍配が上がった…………。
「お、お前…………今フラグ爆弾使っただろ」
「あ、早いですね復活。ところで何の事です?私はただ『負けそう』って言って実際に負けちゃっただけですよ?」
こいつ…………!
…………前回の決戦でこいつが会得した能力。それは、『フラグを回収すると起爆する爆弾』。例えばさっきのは、『負けそう』と言うフラグを回収して、爆弾を気づかず仕掛けられていた俺が爆発した感じ。
…………つまりさっきの勝負は、ライカが勝てばそのままプリンを持っていかれ、ライカが負ければ俺が爆発してプリンを食べれる状況じゃなくなるので美味しく頂かれる。まさにヤラセ勝負ってやつだ…………。無駄な知恵を付けやがって…………。
「お前な…………これ、狙っただろ」
「えー?何の事だかさっぱり?」
「ふざけんな!だいたい毎日のように爆発しやがって、そんな事したら家が壊れ…………壊れ…………てない?」
恒例行事のように爆発しまくっているが、壁や床には一切傷なし。…………電子レンジは、壊れてるな…………。
「あっ、本当ですね。なんか頑丈ですねー」
「…………そういえばこの家、チート能力持ってるんだよなぁ」
当たり前になってしまったので特に気にしていなかったが、ここトゥットファーレ拠点兼自宅は巨大な樹。それも、俺に付与して貰えるはずだったチート能力を持った魔力の強大なもの。
他に特徴を挙げるとすれば、そうだな。………………そうだな。
………………。
………………知らない。
「…………俺達、この木の事について何も知らなすぎじゃね?」
「そうですねー…………付与した私でさえよく分かってませんからね」
「それはどうなの?」
自分で付与した物くらい、覚えておいて欲しかった…………。探偵として才能開花してもこういう奴なんだよなぁ…………。
「ふぁぁ…………おはよう。…………二人とも台所で何やってるのかしら」
「そうだよ、全然戻ってこないからちょっと心配…………あぁぁぁ!?電子レンジが真っ黒け!?嘘、買ってからまだそんなに経ってないのに!?」
そんな話をしていたら、都合よくリヴィとルミネが現れた。…………二人にも話を振ってみるとしよう。
「あのさ、相談があるんだけど」
「この電子レンジお気に入りだったのに…………って、相談?どしたの?」
「ここ…………正確に言うとこの木の事なんだけど」
「ここ?…………あぁ、そういう事?」
黒焦げになった電子レンジと傷一つない壁を交互に見た後、ルミネはそう言った。流石、察しのいい。
「え?なに?今日のおやつの事かしら?」
何も見ずに、リヴィはそう言った。流石、察しの悪い。
「違うよリヴィちゃん、ほら、この樹の事だよ」
「あぁ、世界樹ね。理解したわ」
…………言われたら気付くのを及第点とすべきか否か、とても悩ましい。
「それで?この樹がどうしたの?」
「いや、俺達この樹について全然知らないと思ってな…………なんか知ってる人とか訪ねに行こうかと思って」
「それならいい所、知ってるわよ」
「本当ですかリヴィりん!?」
…………リヴィが言っているのは多分あそこだろう。
「そこは…………」
◆◆◆◆
「ここよ」
「知ってた」
毎度おなじみ、魔王城前。何かあるとすぐここに来るのはトゥットファーレあるあるだ…………。もう正直この展開飽きたろ。何回目だよ。
「ていうか前に魔王に聞かなかったっけ?ルミネとライカが加入する前に」
「ぁ」
「おい」
忘れてたんかい。
「…………まぁでも、何か知ってる知り合いを紹介してもらえるかもだし入ってみるか」
「そうだね。お邪魔します」
「邪魔するわ。魔王いるかしら」
「たのもー!!」
一人だけなんか毛色が違う奴がいるけど、とにかく魔王城の中へ。えーっと、ディアブロかフェルは…………
「うのー!」
「ひびゃっ!?」
と二人を探していたら、何かよく分からない生物がライカの顔面に突っ込んだ!?あれは…………うさぎ?
…………突っ込んだ生物をよく見ると、うさぎ。でもただのうさぎじゃない。なんか…………なんか、海苔に乗ってる。…………うん、海苔。なんで、海苔?さながら魔法の絨毯の如く海苔に乗ってるぞ、このうさぎ。
「うのちゃーん、待って…………って、あれ?トゥットファーレのみんなじゃん。どうしたの?」
「あ、ディアブロ。何かしらこの珍生物」
リヴィが最もな疑問を投げかける。それに対するディアブロの返答は、
「あぁ、うのりのり」
新たな疑問を産むだけの結果になった。
「…………うのりのり、ですか」
「そだよ、ルミネ。海苔に乗ってるうさぎでうのりのり。最近魔王城のペットとして飼い始めたんだけど、中々やんちゃな奴でさ」
「そ、そうですか。へぇ」
ルミネが引いている。俺も同感だ。そいつ、魔物の類いじゃないの?
「まぁ、うのちゃんの事は一旦置いといて。何か用があって来たの?」
「そうですぶろりん!実は、かくかくしかじかで」
ライカが粗方の事情を伝えると、ディアブロは頷き、笑顔になった。
「何だ!それなら私がいい知り合い知ってるよ」
「本当ですかっ!?」
おぉ!魔王に聞くまでもなく収穫が!今回は幸先がいいな!
「『花の国』って知ってる?」
「花の国…………かしら?」
「そそ。世界中の花を管理している花の妖精が住まう国なんだ。しかも、なんと!」
「なんと?」
「この世界で唯一、女神様が直接顕現して治めている国なんだ!」
め、女神!?
「あっ、思い出しました!フローラ様が治めている花の国ですね!」
「流石天使、女神様の事は知ってたみたいだね」
「フローラ様…………って女神が治めてる国なのか」
「フローラ様は通貨単位にもなった超絶有名な女神様ですよ!」
あぁ、フロル!なるほど、フローラからとってフロルだったのね!
「花の国に行けば、何か分かるかも。明日には向こうに着けるように手配しておくね」
「ありがとう、ディアブロ」
「いえいえ、どういたしまして。リヴィも花の国楽しんできてね」
花の国、か。世界樹のルーツを探る旅…………なんだか、とても異世界っぽいイベントじゃ!?この世界に来てから長いけど、ようやく、ようやく真のファンタジーイベントに辿り着けたのか!
「花の国!花の国ですよみんな!楽しみですね!」
「そうね。早く行ってみたいわ」
「今日は準備しなきゃだね」
「そうだな。トゥットファーレ、花の国へ…………」
「「「「出発!!」」」」
こうして、俺達の花の国行きは決定した。




