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異世界便利屋、トゥットファーレ!  作者: 牛酪
二章.建築業者系アルケミスト、始めました
36/110

33.馬鹿コンビ死す

タイトルでネタバレしてるような感じですが、気にせずお読みください。なお作者の遊〇王に対する知識は一般人程度です。

「二人とも大丈夫!?しっかりして!!」


平日の昼下がり、そこに似つかわしくない悲痛な叫びが谺響する。

……洞窟から出てきた俺達。そこで見たのは、ぐったりとしたリヴィとライカの姿だった……。

普段なら寝ているだけだと考えるが、この光景は普通じゃない。

まるで、生気を抜かれたみたいな……目の光を無くし見開いたまま力なく倒れているのだ。

……こんな風に冷静を装ってこそいるが、俺だってこの世界に来てから一番動揺している。何故?どうしてこうなった?何が原因で…………まさか、あの七賢者が裏でこっちに干渉して……!?


「リヴィちゃん!ライカちゃん!大丈夫!?生きてるよね!?ねぇ!!」


そう叫ぶルミネの目からは、涙が零れ落ちる。……俺だって……俺だって、気を抜いたら涙が出てきてしまうかもしれない。目の奥が熱い。普段からやらかしてばかりだったけど、あいつらもいつの間にか俺の中ではなくてはならない存在になっていたらしい。そんなあいつらがもう目を覚まさない可能性があると思うと……思うと…………


「ねぇ……返事してよ……ぐすっ、二人とも……ぐすっ」


涙を必死に堪え、嗚咽を漏らす。……その悲痛な問いかけに、返事は返って…………


「…………すぴー」

「…………すかー」

「……………………え?」

「……………………は?」


……………………。

……返って、来た。寝息で。


「……ねぇレイくん、これって……」

「……まさか、普通に目開けて寝てただけ……?」


いやまさかね。そんなはずある訳ないよね。ははは、まさか……ねぇ?


改めて二人の様子をまじまじと見てみる。……よく見ると、微かではあるが規則正しい寝息が確認できた。

……えーっと……これ、やっぱり寝てただけですね。


「…………生きてて良かったけど、何か心配して損した……」

「…………全くだ……」


生きてんのかい!紛らわしいわ!何かちょっと動揺してお前らは俺の中で大切な存在になっていたとかクサイこと考えちゃったじゃん!思い返してみると究極に恥ずかしいな、おい!黒歴史まっしぐらだよ!


「むにゃむにゃ……はえ?」

「うぅん…………むぅ?」

「あっ、起きた」


起きると同時に、二人の瞳に光が灯る。どうやら、本当に無事だったみたいだ……ひとまず、良かった。


「ほぇ……私達、寝てました?」

「ああ、ばっちり。死んだかと疑うぐらい安らかに目を開いたまま寝てたぞ、それはもう安らかに」

「な、なんか威圧を感じます……心配かけちゃいました?ごめんなさい」

「むぅ……それにしてもこんな所で寝ちゃうなんて、相当疲れてたのかしら……寝る前の記憶がないし……」

「え?記憶、無いの?」

「ええ。何だかルミネとレイを見送ってから後の記憶が朧気なの。ライカとボンバーウーマンしようとした所位までなら覚えてるのだけど……」

「何してたんだよお前ら」


下手したら洞窟崩壊の危険性もあったぞ、それ。やはり、この二人を置いて行く時は見張りを付けないと駄目か……。


「いやー本当に暇で暇でー。もー退屈だったんで……ほへ?」

「どしたのライカちゃん?」

「いやあの、あれ見てください」

「どれ?……って、あれって」

「いつの間にか瘴気が無くなってるわね」

「呪いが解けたってことか?」

「多分。あんな大規模な呪いがこんなすぐに解けるなんて、解いた人は只者じゃないわよ」


ネイブの街に洞窟に潜る前までかかっていた暗雲と瘴気は綺麗さっぱり消え、後に残っているのは綺麗な外観の街だった。

……一体、誰が呪いを解いたんだろう?ライカ曰く、かなり強力な呪いだったみたいだし……。


………………強力?強い…………。


……………………。


「「「「ストロンガーさんか(ですか)」」」」


満場一致。

違ったら多分あの人なら空間を歪めて訂正しに来るし、そうしないっていうことは多分ストロンガーさんがやったのだろう。本当にあの人、どういう性能してるんだろう……。


「じゃあ、タクシー(ストロンガーさん)呼んで帰ります?」

「何気に酷いこと言ってるねライカちゃん……」

「でもその方が楽じゃないですか、ほら呼びますよ!」


そう言って、ライカはいつものベル(ストロンガー印)を取り出す。そのベルはチリンチリンと軽快な音を立て……。


「……あれ?」


……しかしなにもおこらなかった。


「……お、おかしいですね、もう一度」


チリンチリーン。

……しかしなにもおこらなかった。


「………………とりゃぁぁぁぁぁぁ!!」


チリンチリンチリンチリンチリンチリンチリンチリンチリンチリーン。

…………いくら鳴らしても、ストロンガーさんは来なかった。


「はぁ……はぁ……何でいつもすぐ来るストロンガーさんが全然来ないんですかぁ……!?」

「彼も忙しいのよ、きっと」

「……まぁ、いつまでもストロンガーさんを頼ってる訳にもいかないしな」

「そうだね」

「うっ……またビニール袋さんとお友達にならなきゃいけないみたいです……嫌ですぅ……」


……我慢してくれとしか、言えない……。




























「うーん……交信阻害の魔法って結構疲れるなぁ……まぁ、いいや。もうすぐミッションコンプリート、あなた達はゲームオーバーだね、ふふふ」




























「やっと着いた、長かった……」

「やっぱり正規ルートだと長いわねぇ……本当に一日以上かかったわ」

「ほら、ライカちゃんもう着いたから大丈夫だから、背中さすっててあげるから、落ち着いて、ね?」

「はい……ありがとうございますルーちゃん……。……ビニール袋さん、ここまでありがとうございました……。あなたとは口を縛って、この辺でさよならです……。ばいばいです……」


諸々カットで、スペランタの街へ帰還。

ちなみにここに来るまでに、ライカ事件、リヴィ&とらっかサーキットの魔王化事件、ルミネによる鉄拳制裁からのとらっか損傷事件など様々な事件があったのだが、全て割愛。全て事細かに語ってたらSAN値が削れそうだし、何より疲れそうだから省略しました。許してください。


「む?お前達、今帰って来たのか?」

「あれ?ハルバさんじゃないですか、どうしてこんな所に?」

「ちょっと野暮用があってな」


街の入口には、ハルバさんが立っていた。本人が言うに、偶然俺達とかち合ったようだが……。……考えすぎかもしれないけど、もしかしたら待っててくれたのかもな。

……ハルバさんも、随分と丸くなったよなぁ……。最初の頃は殺意しか向けてこなかったのに。


「ところで、マジックアイテムとやらは回収出来たのか?」

「ええ、これよ」

「じゃーん!です!」


復活早いな、ライカ。さっきまで意気消沈だったのに。


「ほう……これか。なんか、凄いな」

「ですよね!魔力が満ちているのを感じますです!封印されてますけどね!」

「そうか……ところで、聞きたいことがあるのだが」

「何かしら?」


ハルバさんの顔つきが急に真剣になる。その表情に圧倒されて、俺とルミネは唾を飲む(リヴィとライカはよく分かっていないのか首を傾げている)。緊張も冷めやらぬまま、ハルバさんが口にした言葉は……。


「……お前達、出先で何かやらかさなかったか?」

「あっそれは特に大丈夫です。ライカちゃん自重してましたので!」


自重、してたか?

まぁそれはともかく、今回は珍しく他人に迷惑をかけるようなことはやらかさなかった。俺達も成長しているんだな……。

だから、今回の質問に関しては胸を張ってYESと返せる。仲間が何も罪を背負っていない状態がこんなにも清々しい気分になれるとは思わなかった……いやそれは人としてどうなのか?


「本当に、本当だな?やらかしてないんだよな?」

「本当ですよ、もうハルバさんったら疑り深いんですから~」

「私達の仲じゃない、疑うなんて野暮よ」

「何だか馴れ馴れしいな……」


御尤もです、ハルバさん。うちの馬鹿二人が本当にすみません……。


「ま、まぁとにかく、やらかしてないのは本当ですよハルバさん。やらかしてたら多分わたし達罰金払えずに投獄ですよ」

「それもそうだが……お前それ言ってて悲しくならないか……?」

「……正直、悲しいです」


そう言うルミネの目の端には、涙が……。

……他人事じゃないだけに、笑えない……。


「……そろそろ行ったほうがいいんじゃないか?」

「あっ、そうだね。ハルバさん、公園楽しみにしていてくださいね」

「あぁ、期待しているぞ」


そうして、俺達は目的地へと向かう?へっ?何処へ向かっているかって?それは勿論、一箇所しかない。そこは勿論……

……封印を解いてくれそうな人がいる、地下の和蘭芹の街だ。


「よし!じゃあミジンギさんに会いに行くぞ!」

「「「おー!」」」






























「……まさか、な」

案の定死にませんでした。次回は明日更新です。

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