34.封印解除へ、東奔西走
「マスター、掃除終わりましたー」
「ナナちゃん、ナイスパセ。でも後ろ手に持ってる下着は返してもらおうかパセ」
「バレました……」
「当たり前パセ」
「しょぼーん…………そういえば、便利屋の皆さまは今頃何しているのでしょうか?」
「急に話題変えてきたなパセ」
「細かいことは水に流しましょう!マスターの下着は水で洗って保存したいですけど!」
「やめるパセ変態」
「冗談ですよ冗談。……それで、便利屋の皆さま何しているのでしょうかね」
「そうパせねぇ……そんなにすぐマジックアイテムを持ってくるとも思えないし、もう暫くかかるかもしれないパ―――」
「トラックで来た。っ!!」
「セーーーっ!?」
「ちょっ、ま、マスター!?だ、大丈夫ですか!?」
……前にもこんな事、あったような。
……そうです、とらっかによるダイナミック不法……いや、ダイナミックお邪魔します、今回も炸裂。
止めなかったのかって?あぁ止めたさ、サーキットの魔王状態の二人には全く通じなかったけどね!スイッチが入った時の運転中のリヴィの恐ろしいこと恐ろしいこと……。
「ちょっ、何でトラックで突っ込んでくるパセ……殺す気パセか……」
「ごめんなさい、少し自分の中に滾る衝動が抑えきれなくなって」
「その衝動、出来れば一生抑えてて欲しかったパセ……おーいててて、パセ……」
……でも、この世界の住民ちょっとトラックに轢かれた位じゃピンピンしてる頑丈な人多くない?おーいてててで済むもんなのあれ?ミジンギさんもうちょっと痛がった方が良いと思いますよ、あいつ調子乗ってるんで。
「まぁまぁ、そんなに怒らないで……?ナナ、どうしたのその顔。面白いわよ」
「怒ってるんですよ!マスターに何してくれてるんですか!!」
案の定、主人を攻撃されたことでナナさんがキレた。今まで散々腹黒い一面を見せてくれたし、多分リヴィ面倒なことになるだろうなぁ……。
「ご、ごめんなさい。これで手を打ってくれないかしら」
「ワイロなんかじゃわたくしのマスターに手を出した罪が薄れるわけ……が……」
瞬間、ナナさんの口撃が止まる。そして、段々恍惚とした表情に……おいちょっと待て、何渡したお前。
リヴィとナナさんの横に回り確認してみると……
…………パンツだった。
「前ミジンギからくすねてきたの、これで許してくれないかしら」
「ありがとうございます……!家宝にさせていただきます、リヴィさま!」
「おいちょっと待つパセ、くすねてきたってどういうことパセ、キミ」
「……ネクロマンスで破れた下着を直して回収して、いつかナナのばいしゅ……説得に使えないかと取っておいたの」
そう言うと、許してくれと言わんばかりに舌を出しウィンクをした。俗に言う「てへぺろ」ってやつだ、リアルじゃ初めて見た。
凄いな。てへぺろって、こんなにも殺意を増幅させるものなんだな……。当事者でない俺でもなんかぶん殴りたい。
「全く……とりあえず、それは後で没収するとして」
「えっ」
「キミ達、もしかしてもうマジックアイテム回収出来た感じパセか?」
なんと察しのいい。言わなくても分かってくれるなんて、流石ミジンギさん!言っても分からないどこかの馬鹿とは違うね!
「……くしゅんっ」
「へくちっ」
「二人ともどうしたの?風邪?」
……これ以上心の中で話題に出したら、バレる可能性があるな……。気をつけよう……。
「風邪は万病の元って言うから、気をつけてね……って、そうじゃなかった。マジックアイテムなら回収しましたよ」
「はい!これです!ぼかーん!」
じゃーんじゃねぇのかよ!爆発しそうで怖いわ!せめてどーんとかにしとけ!
「おぉ……確かに魔力パンパンパセねパンパン」
「ふふん、開けてみたいですよね?」
「うん、みたいパセ」
「行きますよ、せーの!」
「……ぷ、ぷしゅー」
「………………」
「………………」
「開きません!!魔力の音はセルフですっ!!」
「封印されてるみたいで……どうしようレイくんさっきの想像以上に恥ずかしいんだけど……」
「頑張れ」
なんだあの茶番。ていうかライカ、だからお前は何故そういうネタを知っている。やるなら自分一人でやれよ、ルミネを巻き込むな。魔力の音やるの相当恥ずかしかっただろうに、気の毒に……。
「……なんか凄いものを見せられた気がするパセが……まぁ、いいパセ。確かに、こいつはバッチリ封印されてるパセねぇ……」
「そうなの。ミジンギ、これ解けたりしないかしら?」
「うーん……残念だけどこのレベルの封印は私じゃ無理パセ……。ナナちゃんも無理パセよね?」
「しょぼーん……マスターのぱんつ……えっ?は、はい、ちゃんとぱんつなら履いてますよ!」
「話聞いてなかったのかパセ……」
とんでもないカミングアウトだな、おい。ナナさん、口を開く度に変態加減と腹黒さが露呈していくのどうなんだろう……。毎度毎度出会う人の初見の印象と今の印象が違うのも本当にどうなんだろうね……。
「封印パセよ、封印。ナナちゃん、解けるパセ?」
「あっ、封印でしたか。やだわたくしったらはしたない……」
そうだね。はしたなさMAXだったよね、ナナさん。
「……で、どうなんパセ?」
「無理ですね。ちょっとした封印ならまだしも、このレベルになるとちょっと……」
「うーん……」
ナナさんも無理となると、封印を解ける人っているのか?
うーん……封印を解けそうな人……強そうな人……スト……却下。それを除くと……。
……あ、いたわ。
「……なぁみんな、魔王なら封印解けるんじゃないか?」
「……あっ、確かに。魔王さんならもしかしたら行けるかもね、なんてったって魔族の王だし」
「そうですね!魔王さんならやってくれるかもです!」
「さす魔王、と言ったところかしら?」
「あのいけ好かない魔王に任せるのは不本意ですが、封印を解いてマスターの願いを叶えられると言うのなら仕方ありませんね」
約一名辛辣だけど、多分これは魔王なら行けるって事でOKなんだよね?だよね?
「それじゃあ、この上だし魔王ちゃんの所に早く行ってくるといいパセ。吉報期待してるパセよ~」
「ありがとうございますミジンギさん!行ってきますですー!」
「行ってくるわね」
「…………魔王ちゃん?」
「あの人も大概大物だよな……」
魔王をちゃん付け、流石っすミジンギさん。常識人って部分だけは、揺らがないでくださいね。……フリじゃないよ?本当だよ?
「………………」
「………………」
「えーっと、よく来たな冒険者たちよ、だっけ?まぁいいや、おにーちゃん、おねーちゃん、いらっしゃーい!」
「「魔王どこ行った」」
魔王城に向かった俺達を出迎えてくれたのは、まさかのシフォンちゃん。
よく見ると、シフォンは「一週間魔王」と書かれた襷を付けている。……期間、延長したのか……。
……今度、ウェイトレス魔王様でも見に行こうかな……。
「……むっ、ここにいたか、ようじょ」
「あっ、フェルちゃん!今度は何して遊ぶ?」
「……潜伏戦」
「わかった!フェルちゃん鬼ね!それじゃ、隠れるよー!」
「……ふふ、かならずみつけだしてさらしくびにしてくれるわ」
君たち、仲良いね。
あと、なんかかくれんぼの言い方おかしくない?そんな大仰な遊びだったっけ、かくれんぼって。しかも晒し首って。
「……ありゃ、お客さんじゃん。久しぶり……という程でもないか」
「ディアブロじゃない」
「魔王さん、まだエルマーナで働いてるんです?」
「うん。なんか魔王様、ノリノリらしいよ」
「……なんか想像すると笑いが込み上げてきたよ……ふふふ」
「……会話が進まねぇ」
どうしてこの人達は、余計な会話を挟むことに余念がないのだろうか……。まぁ、退屈しないのは良いんだけど、話の腰がバッキバキに折れるのはやっぱりちょっとなぁ……。
「あぁ、ごめんごめん。何か用事あった?」
「ああ。実は、マジックアイテム持って帰って来れたんだよ」
「マジでっ!?やるじゃん、トゥットファーレ!」
「ど、どうも」
面と向かって褒められると、何だか少し照れくさいものがある。ディアブロさんも風邪少ない良心だよな……。こういう人がたくさんいればいいのに……って自分で話の腰を折っちまった。話を進めねば。
「それで、マジックアイテムは持って帰ってこれたんだけど、封印が施されてて。ディアブロさん、解けたりする?」
「そういうことならまっかせて!封印解除は私の十八番だから!」
「「「ありがとうございます助かります」」」
はい神。ディアブロさん神。マジでありがとうございます。
これで諸々の問題が解決!勝った!第二章完!ってやつだね、いやっほう!
「それじゃあ、地下に封印解除用の部屋があるから、行こうか!」
「了解です!」
「いよいよマジックアイテムの力解禁ですねっ!ワクワクしてきました!」
「封じられし力の解禁……!中二魂が刺激されるわね……!」
「馬鹿なこと言ってないで早く行くぞ」
そうして俺達は、地下への階段を下る。階段を下っていくと、魔王城一階とは違う厳かな雰囲気が辺りに立ち込める。その雰囲気に少し圧倒されながら、俺達は扉の前に辿り着いた。
「ここが封印解除用ルーム。前に封印解除した時、城まるごと木っ端微塵に吹き飛んだことがあったから作った部屋なんだ。魔力を完全に遮断する壁と扉で作られた部屋だよ」
「ま、まるごと……」
……封印解除って、意外と危険な作業なんだな……。
「それじゃ、ご開帳~。ささ、入って入って」
そう促され、俺達は部屋に入る。そこにあったのは、山のように積んである魔術用の道具。そして、部屋の真ん中には『封印解除』と刻まれた台が。
……何だか、緊張してきた。
「じゃあ、封印解くよ。マジックアイテム、貸してちょーだい」
「はいですー」
「では、早速…………む?」
「どうしたのディアブロさん?」
「いや、なんか今物音がしたような……?」
「……私は何も聞こえなかったけれど……気の所為じゃないかしら?」
「うーん……まぁ、そうか。気にしない方面で行こう。あ、ドア閉めて」
「了解したわ」
ギギギと音を立ててドアが閉まる。
これでこの部屋は完全に密室。仮に爆発したとしても大丈夫だろう。俺達は今まで何回も爆発に巻き込まれてきたわけだし。
「それじゃ、始めるよ。……おお、神よ……。その御力で、閉ざされし封印の扉を開き、力を解き放ち給え!」
ディアブロさんとマジックアイテムから、紫色の光が発せられる。……この身体がそわそわする感じ……。俺でも分かる、魔力が大量放出されているのだろう。もう少しで、たぶん完全に封印は解ける。
「隠されし力、今こそ発揮する時!『封印解除』っ!!」
その瞬間、空気が弾ける。
完全に封印が外れたのだろう、辺りに力が満ち満ちてゆく。
……でも、これは……。これって……。
「……なに、これ」
「う……嘘ですよね?だ、だって、これ……」
……封印解除されて出てきた魔力。
……それは……
…………それは、神聖なもの等ではなく、瘴気を伴ったおぞましい異形だった。
「……くケケ、よク俺を封印から覚まシてクレたな、雑種どモ」




