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異世界便利屋、トゥットファーレ!  作者: 牛酪
一章.便利屋トゥットファーレ、開店!
17/110

16.決戦!七賢者!!(前編)

書いてるうちに長くなってしまったので、今回は前後編構成です。それでは、始まります。

夢を見た。それは、七賢者に乱暴なことをされる夢。何度も、何度も、何度も何度もなんども……いよいよ命の危険を感じた時、意識は覚醒した。

体が重い。冷たい。寒い……。……私が目覚めたその場所は、森の中。強烈な雨は私の体を打ち、倦怠感を加速させる。そう、私は捕まってしまったのだ。


あの日あの時、自分も役に立とうと突撃したというのに、結果はこの有様。

植物の幻獣と聞いていたから、除草剤で何とか出来ないかと思い立ったものの、勝負にすらならず私は捕らえられてしまった。

本当に、私は馬鹿だ。突撃しても、上手くいくはずないと最初から分かっていたはずなのに……


「ふっふっふ、やってやりました。こいつを殺せば、奴らの憎しみは急上昇、計画は更に次のステップへ……ふはははは!」


あの夢。七賢者に暴行を加えられる夢……あれが夢で、そのまま霧の様に消えてしまえば良かったのに……その思いは届かず、それは現実になろうとしている。


(あぁ……私、死ぬんだな……)


どこか諦めにも似たその感情が、私の胸の中を埋め尽くす。

思えば、私はいつもこうだった。何か出来ないことがある度に、思い悩んで、空回って、不始末を起こして、皆に助けて貰って……

でも、今回ばかりはそうはいかない。何せ、あの便利屋の皆さんが何日もかけて頑張っても倒せなかった相手。そんなものを、私を助けて、その上で倒すなんて芸当は出来るはずがない。そんな負担、皆さんにかける訳にはいかない。

だから、私はここで死ぬ。それだけだ。


(…………)


今も尚勢いを増す豪雨は、私の身体を激しく打ちつける。その冷たさは、全てを飲み込むかのように私の身体を蝕む。あの七賢者が何もしなくても、きっと私はこのまま衰弱していって死ぬのだろう。……短い人生だったな……。


「……おい、小娘」

「…………」

「返事なしですか。まぁ、いいです。この後、貴女を見せしめに殺します。私を酢豚呼ばわりしたあの馬鹿どもの前で。そのために、見回りにいってきます。逃げちゃダメですよ?まあ、縛っているから逃げられないでしょうけどね!ふはははは!!」

「…………」


そう言って、七賢者は見回りに出て行った。やっぱり、私は死ぬんだ。そう、死ぬ。それは覆せないし、覆すこともできないんだ。だから、もう諦めた。このまま身を任せるだけだ。

……なのに。それなのに。


「うっ……ううぅ……」


死ぬことをとっくに受け入れたはずなのに。もう諦めていたはずなのに。


「……なのに……どうして……」


……涙が止まらないんだろう。私の目から、涙が一粒、また一粒と零れていく。止まらない。

こんな感情、とっくに捨てたはずなのに。捕まったその時から、覚悟は決めていたはずなのに……それなのに……

……あぁ、そうか。


「私……皆にまた会いたいって思っちゃってるんだ」


どれだけ取り繕っても、理屈として受け入れようとしても、この気持ちだけは変わらなかった。変えれなかった。変わるはずがなかった。

私が死ぬ覚悟を決めたのも、便利屋の皆さんのため。お姉ちゃんのため。シフォンのため。あの人たちを、危険にさらさないため。

自分が死ぬことで皆が守られるなら、それでいいと考えた。それが最善策だと考えた。理性がそうさせていた。

でも、それは感情を覆い隠しただけに過ぎない。時間が経てば経つほど、理性で隠した本心が剥き出しになっていく。我慢出来なくなっていく。そしてそれは、今まで抑圧していただけに、より強く胸の内を締め付け、感情を吐き出させる。


「うっ……うぅ……死にたくない……死にたくないよ……」


私は泣いた。それは激しいものではなかったけれど、今まで心の奥底に閉じ込めていたものを吐き出すかのような、絶望の涙だった。

雨と涙とが混ざって、顔がぐちゃぐちゃになる。それでも、私は泣いた。恥も外聞も気にせず泣いた。そうしないと、壊れてしまいそうだったから……


「……誰か……誰か、助けに来てよぉ……」


……助けは、来ない。それでも私は泣き続けた。求め続けた。


「……お願い……助けて……」

「……待たせたな」

「……え?」

「……俺だ、ドルチェ。助けに来たんだ」


全身に衝撃が走る。この声は、間違いなくレイさん。……助けに来てくれたんだ!涙を手で拭き、顔を上げると、そこにいたのは……


「……え」


蜂だった。













どうも、レイです。えーっと、何か知らんがここに至るまでの描写省かれた気がするから説明するけど、現在、俺はドルチェを助けに来た。

これが寄せ集め作戦第一段階、「ドルチェをがんばって助けてレイ(丸投げ)」だ。あ、ネーミングはリヴィな。本当に丸投げはどうかと思う。

そして、そしてだ。ドルチェが泣いていた所を見つけて、助けに来たんだが、ドルチェはポカンとしている。

まぁ原因は、俺の姿だな。その姿ってのは……


「……え、蜂?……本当に、レイさんですか……?」

「そうだよ、酢豚に見つからないように蜂に憑依して飛んできたんだよ」

「……そ、そうだったんですか」


ほらちょっと引いてるよ。虫が助けに来たら引くよねそうだよね。

ちなみに、これの原案もリヴィだ。その時は笑顔でハエを持ち出して「これに憑依しなさい」なんて言ってたから、それよりかは遥かにマシだね、うん。あいつ時々鬼畜だよなマジで。


「とりあえず、縄切るから。えーっと……『憑依解除』!」


憑依を解除して、人間の姿に。そして、ナイフを取り出してっと……


「おし、切れたぞ」

「……ありがとうございます」

「あと、濡れたままじゃ風邪引くからこれ使え。なんか着替えが一瞬で出来る魔法の詰まった瓶らしいから」

「……すみません。何から何まで……じゃあ、使わせていただきます。……えい!」

「おおっ」


ドルチェがその瓶を開くと、身体が光に包まれていく。それはアイドルアニメの変身シーンみたいで、ちょっと見入ってしまった。光が止むと、そこにいたのは合羽を着たドルチェだった。

……ドルチェって、看板娘なだけあって顔立ちいいよな。なんかただの合羽も様になるっていうか……ってそんなのどうでもいいわ。


「……着替えられました。ありがとうございます、これなら雨も大丈夫そうです」

「よし。そんじゃ、逃げるぞ」

「はい。…………あの……少し、聞きたいことが……」

「ん?何だ?」

「あの……どうして、私を」

「なっ!?お前は例の馬鹿集団の!?」

「やばい見つかった!走るぞ!!」

「えっ!?は、はい!」


話してた時間が勿体なかったか!ええい、こうなりゃ逃げるまで!

三十六計逃げるに如かず、元よりそのつもりだったからプライドも遠慮もなく逃げるぞ!敵に背中を向けるの万歳!


「逃しません!ボスコポルコ、行きなさい!」

「グォォォォォォォォォォォ!!」

「走れー!!」

「はっ、はい!!」


ドルチェは意外と足が早いらしく、結構速く走っている俺のペースにもついてきている。

え?お前足速いのかって?ふっふっふ……自慢じゃないけど、昔から俺は逃げ足だけは速いんだ!

本当に自慢じゃない!クソダサナメクジとは俺の事です!


「大丈夫か、ドルチェ!?」

「は、はい、大丈夫で……うわぁ!?」

「ドルチェ!?」


雨で地面がぬかるんでいるせいか、ドルチェが転んでしまった!?

ま、マズイぞこれは!早く助けないと、ボスコポルコに追いつかれちまう!!


「だ、大丈夫か!?」

「うぅ……い、今ので、足が……」


その言葉を聞いた瞬間、全身から血の気が引いた。たぶん、足首をくじいてしまったんだろう。

そう冷静に判断するも、既に頭の中はパニックになりかけている。

マズイマズイマズイ!これはガチでマズイぞ!?どどどど、どうすれば……


「……私はもう走れないから、私を置いて逃げてください。レイさんの無事の方が大切ですから」

「!?……な、何言ってるんだドルチェ!?」

「だから、私は大丈夫です。死ぬ覚悟、とっくに出来てますから」

「……お前……」


そう言うドルチェの顔は、笑っているのに笑っていない。あの時のロッシェさんと同じだ。

あの時は、あいつが何とかしてくれた。あいつは何考えてるのかよく分からないし滅茶苦茶だけど、やる時はしっかりやるやつだ。正直、そういう所は結構尊敬している。

だったら……だったら、俺のやることは、一つしかない。何のチート能力も持ってない俺だけど……いや、俺だからこそ、やるんだ!


「……本当に大丈夫なのか?」

「……はい」

「なら……なんでお前、泣いてるんだ?」

「!?……え……嘘……」


ドルチェの瞳からは、確かに一筋の涙の線が伝っていた。……本当に大丈夫なら、こんな泣き方する訳ない。


「走れないんなら、俺がおぶって逃げるから。ほら、行くぞ」

「…………どうして……」

「え?」

「どうして、そんなに私に優しくするんですか!?」

「……ドルチェ?」

「私は皆さんに迷惑をおかけしてしまった!無茶して、失敗して……本来なら、見捨てられても仕方ないはず!なのに!それなのに!なんで私を助けようとするんですか!?その結果レイさんが危険にさらされるかもしれないのに!!……それなのに、どうして私を見捨てないんですか……どうして……」

「…………」


……俺が思うに、きっとドルチェは自分のしてしまった失敗をずっと悔いていたんだ。

その結果、自分を責めて責めて責め続けて……自分に自信が持てなくなってしまった、もっと言うと自暴自棄になってしまったのかもしれない。

自分を信じられない、自分には価値がないと思い込んでしまっているから、自分を助けてくれる理由が分からなくて混乱してしまっている……。それが、ドルチェの本心なのだろう。

……なら、俺も本心で対抗するしかないよな。本当、似た者同士の姉妹だよ、全く。


「……ドルチェを見捨てない理由か」

「そうです!そんなのないはずです!だから……だから、早く逃げてください!」

「……理由なんて……そんなの……あるに決まってるだろ!」

「……え……?」

「七賢者に挑み続けていたこの数日間!ずっとずっと、ドルチェ達三姉妹と関わってきて、関係を築き上げてきた!だから、俺達は大切な友達だ!仲間だ!!そんな仲間を、見捨てるわけないだろ!!」

「……レイさん……」

「大切な仲間のお前が死ぬのは、絶対に嫌だ!だから俺が……俺達が……死んでも、いや、絶対に死なずに守るから!!」

「ま、まもっ!?ま、ままままままま……」

「だ、大丈夫か!?」

「……い、いや、何でも無いです、大丈夫です。その……守るって言ってくれて、ありがとうございます。嬉しかった、です」


そう言ったドルチェの顔は、何故か少し赤らんではいたものの、笑顔が戻ってきていた。

それは勿論、偽りなんかじゃない、本心からの笑顔。やっぱりその方が可愛いよ、お前。


「ふっふっふ……何故逃げなかったのかは理解できませんが、ともかく好都合です。逃げないのならこのままミンチにしてくれますよ!!」

「グォォォォォォォォォォォォォォ!!」

「……七賢者……!」


……このまま、ハッピーエンドってなったらよかったんだけどなぁ。まぁ、世の中はそう上手く行かないってことだな。

え?何でこんなにも落ち着いているのかって?それはだな……


「れ、レイさん、どうしましょう……このままじゃ私達……」

「心配するな、策ならあるよ」

「ほ、本当ですか!?」

「あぁ、そろそろ転機が来るよ」


そう、策があるのだ。さっき、俺は作戦の第一段階を実行するって言ってここに来たよな?つまり、それは作戦の第二段階以降もあるということで。んでもって、その第二作戦っていうのはだな……


「おっ、来た」

「……む?何かが降ってきますね?」

「……まさか、あれって!?」

「そう、そのまさかだ」


空から落ちて来る()()……前にもそんなことがあったよな?要するに……


「とぉぉぉぉぉぉぉ!!」

「きゃぁぁぁ!?」

「グォォォォォォォォォォォォォォ!?」

「うおっ!?」

「……やっと来たな!左遷使(ライカ)!」

「ふっふっふ!今度は爆発しませんでした!超絶美少女天使ライカちゃん、華麗に参上です!!」


さあ、作戦第二段階の開始だ!!

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