14.打倒酢豚大作戦詰め合わせ
「ふっふっふ……今日も私の髪はキマってますねぇ……自分に酔いしれそうです」
「グォォォォォォォォォォォ!!」
「ふふふ、そうでしょうそうでしょう。見てくださいこの髪が……た……」
「グォォォォォォォォォォォ!?」
びちゃびちゃびちゃ。
「……これは、酢豚……?」
「あっははははははは!命中しましたよレイさん!酢豚が酢豚塗れです!これは笑えますね!」
「本当だな!ははははははは!」
あー、クソ面白い!おっとそうじゃなかった、状況を説明しないと。えー、現在、酢豚に酢豚を投下した俺達。ちなみに、ライカに俺が乗って空を飛んでる感じ。そして、その目的は勿論……
「これぞ打倒酢豚作戦その三『酢豚ドロップメンタルブレイク作戦』です!」
そう。俺達はこれでも、そうこれでも(大事な事なので二回言った)七賢者と交戦中。前にリヴィが言った「倒せるまで何回も色んな手段を試せばいい」をそれしか道がないので実行中。綺麗好き(に見える)あいつに酢豚を投下すれば、メンタルを破壊して勝てるかもしれないという作戦だ。ちなみに、作戦その一は「これから毎日森を焼こうぜ」で、実行する前にルミネによって鉄拳制裁で頓挫。作戦その二は「ライカ爆弾投下作戦」で、これはライカが抵抗して光魔法を打ちまくって店の内壁を破壊するくらい暴れて頓挫。よって、作戦が実行されるのは初めて。試行錯誤(本当に錯誤している)を重ねたし、いけるよな!うん!え?現実逃避?何それ美味しいの?ともかく、これでフィニッシュだ!
「さあやってやれライカ!」
「はーい!『ホーリー・ブライトネス』!!」
「グォォォォォォォォォォォォォ!!」
「あっ」
「あっ」
弾かれた。
…………。
「ライカ……俺の言いたいこと、分かるか?」
「はい……アレですね」
そう、攻撃が効かないとなれば、アレしかない。さぁ、息が止まるまでとことんやるぞ!
「「逃ーげるんだよー!!」」
「あっきったねぇアイツら逃げるぞ!ボスコポルコ、逃がすんじゃないですよ!!」
「グォォォォォォォォォォォォォ!!」
そうだよ!逃げるんだよ!!え!?かっこ悪い!?知るかんなもん!プライドなんてあったもんじゃない、死んでるけど命は大事!よって、全力戦略的撤退!
……最近、逃げることしかしていない気がする。
「……レイとライカ、ちゃんとやっているかしら」
「……わから、ない」
「……酢豚だけじゃ無理なんじゃないかなぁ……魔法効かないんだし……」
「ただいま……」
「うぐっ……ぐすっ……た……ただいまですぅ……ぐすっ」
「お帰りなさい」
「おおぅ……何があったのライカちゃん」
「火、火が……火がじゅって……じゅって……」
「炎属性の魔法が若干掠ったんだよ」
「それは……災難だったね、はいお水」
「……あとひやしてあげる。はい」
「ぐすっ……ありがとうございますぅ……」
戦闘で疲れた……いや戦闘してないね、逃走で疲れた体に冷たい水が染み渡る。生きてて良かった……と言いたい所だけど、また作戦を練り直さなきゃだな。はぁ……
「皆さん、お疲れ様です。こちら、当店からのささやかなサービスです」
「あ、ロッシェさん」
そう、実は俺達が今いるこの場所は世界樹の便利屋トゥットファーレじゃなくて、喫茶店エルマーナ。知恵を出すならより沢山の人がいた方がいいということで、ここで作戦会議をしている。そこで、気を利かせてロッシェさんが食べ物を持ってきてくれたみたいだ。えーっと、ロッシェさんが持ってるのは……ミルフィーユ!?マジで!?俺ミルフィーユ好きなんだよ、やった!
「ぐすっ……さーびす……?わぁっ!美味しそうなケーキです!ありがとうございます!」
美味しそうなミルフィーユに、泣くライカも思わず笑顔。やはり、ミルフィーユは世界を救う。俺はミルフィーユの可能性を信じてる。
「ありがとうございます!それじゃあ早速、頂きます……わぁ、美味しい!……あ、でも、食料手に入らないのに頂いていいんですか?」
「おいしい……おいしい……!」
「大丈夫ですよ、これは店で買った食材を使ってますので。ただ、うち秘伝のケーキはやはり森の素材がないと厳しいので味は劣ってしまうのですが……」
「いえいえ、このミルフィーユとっても美味しいですよ!?もう、サイコーです!」
「そうですか?……うふふ、ありがとうございます」
「うん、これ美味しいわね。レイはどう思う……レイ?」
「ん?レイくんがどうかしたの……うわ泣いてる」
「泣いてますねー」
「……ごーきゅー」
何これ……こんなに美味しいミルフィーユ、食べたことない……この世界に来てほぼ唯一の良かったこと、それはこのミルフィーユに出会えたことだと思う……世界も、捨てたもんじゃないね。ミルフィーユ万歳。
「……そんなに好きなのかしら」
「……そうみたいだね」
「あっ!おにーちゃん、おねぇちゃん!いらっしゃーい!」
「二人とも、大丈夫でしたか?」
「ドルチェちゃんにシフォンちゃん!大丈夫でしたよ!」
さっきまで君、泣いてたけどね。今は俺が泣いてるけど。でももう泣き止んだ、大丈夫。
「全然歯が立たなかったけど……まぁ無事に帰ってはこれたよ」
「そうですか……よかった……」
「おねぇちゃんたち、おつかれさま!はい、ついかのおのみものだよ!」
「ありがとう、シフォン」
貰ったのはカフェラテ。それをぐいっと飲み干すと、思考がクリアになったような感覚がした。作戦会議再開だ。
「で、結局どうするよ?」
「色々、あいつの特徴とかを調べないといけないし……やっぱり、今はとにかく何でもやってみることが大切じゃないかしら」
「それしかないよねぇ……うーん……」
「うぅ……でももう焦げるのは嫌です……」
「……なにもゆうこうだがおもいつかない、ころすにはどうしたら……」
結局ゴリ押しくらいしか案がなく、みんなで頭を抱える。……本当に、どうしたらいいんだろうな……
「おにーちゃん、おねぇちゃん、だいじょうぶだよ!やれば、きっとなんとかなるよ!」
「シフォン……」
「シフォンちゃん……」
「おねぇちゃんたちはすごいってシフォンしってるもん!それに、がんばってるおねぇちゃんとおにーちゃんたちのこと、シフォン、とってもだいすきだよ!」
「「「「はうっ!!」」」」
「……このようじょ、あざとい」
シフォンちゃんの純粋無垢な一言が皆(フェル除く)にクリティカルヒット!もう、めちゃくちゃ可愛い!それは反則だよなぁ……幼女の笑顔+大好き発言とか。そこまで言われたら……やるしかないよな。
「……これは、やるしかないわね」
「そうだね。もっとやってみてダメだったら落ち込もう」
「シフォンちゃんたち!絶対、七賢者倒してみせますからね!」
(……ちょろいんばっかり)
「うんっ!やくそくだよっ!」
「皆さん……ありがとうございます!」
「よし、それじゃ早速、色々試してみるぞ!」
「「「了解!!!」」」
「えい、えい、おー」
いざ、出陣!
(私……皆さんに頼ってばっかりで何も出来てない……駄目だなぁ)
次の日。
「へへーん、こっちですよー!」
「グォォォォォォォォォォォォォ!!」
「……よし、ここよ!フェル!」
「……おっけ。……たぁっ!」
「グォォォォォォォォォォォォォ!?」
「やった!誘導成功!落とし穴には落ちるみたいだよ!」
「でかした!それじゃあありったけ攻撃ぶち込んで……あっ」
「グォォォォォォォォォォォォォ!!」
「「「「飛んだー!?」」」」
「とべるぶたはとくべつなぶた……やばいかも」
「いらっしゃいま……だ、大丈夫ですか!?」
「大丈夫大丈夫ちょっとガリっていっただけ」
「駄目ですよそれ!?い、急いで救急セットを……」
「あっ注文はパスタで……がくっ」
「レイさーん!?」
また次の日。
「例のアレ、段々増産出来てきたね」
「ですね!これを集めれば、行けるかもしれませんね!」
「ところで、どうやって保管すればいい?」
「天日干しでお願いします」
「そんなんでいいんだ……」
「……ただいま」
「……ただいま……」
「……ただ、いま」
「三人ともお帰りなさい!どうでしたか?」
「あやつの羽を押さえつけてみたけど、吹き飛ばされた」
「痛かったわ……」
「フェルコンパンチきかなかった」
「ふぇるるんもそれ使えるんですね……」
またまた次の日。
「また負けました……ロッシェさん、ランチお願いしますぅ……」
「了解です。疲れ、しっかり取ってくださいね」
「魔法陣に魔法詰めるの結構時間かかっちゃった……でも、終わったよ!」
「でかした!これで、有効打が一つ出来たな!」
「これでいけるかもしれないわね……」
「みんな、おつかれさま!シフォンがとびっきりのサービスしちゃうよ!はい、コーヒー!」
「……あざとようじょまじあざとい。でもそこがいい。いやされる……」
「……お姉ちゃん、私、ちょっと体調悪いから今日もう上がってもいい?」
「あら、そうなの……風邪かしら、早めに治してね。上がっても大丈夫よ。ごめんね、無理させちゃって」
「……ありがとう。それじゃあ、お仕事頑張ってね」
(トゥットファーレの皆さんはものすごく頑張ってくれてる。お姉ちゃんも沢山料理作ってくれてるし、シフォンは皆を癒してくれてる。……でも、私だけ何も出来てない。なら……)
「……私は、私に出来る精一杯のことをしないと」
そして、また次の日。
「おはよう。……今日は天気悪いな。めっちゃ雨の音がする……。で、今日は何する?」
「おはよう。そうね……天気も悪いし、雨風防げるとらっかちゃんはどうかしら。とらっかちゃんにちょっと改造を施してみたから、それを……」
そう言いかけていると、便利屋のドアが唐突に、少々乱暴に開く。……誰だこんな朝早くに?
「すみません!ドルチェ来てませんか!?」
「ロッシェさん!?」
そう。血相変えて飛び込んで来たのは、ロッシェさんだった。ドルチェ来てませんかだって?来てないけど……何やら、嫌な予感が……
「……いえ、来てないです。」
「……私も、見てないですね……」
「私もよ」
「俺もです」
「……そうですか……」
「あの、ドルチェちゃん、どうかしたんですか?」
「その……ドルチェが……ドルチェが………
……昨日からいなくなってしまったんです!」
……窓を叩く雨の音は一層強くなり、雷鳴が轟いた。……それは、ドルチェの身に迫る危険を暗示するかのようだった。




