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異世界便利屋、トゥットファーレ!  作者: 牛酪
五章.花の国、氷華と冥府の七日間
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103.一筋の光を探して

「………………」


花の国に吹く風は冷たい。それは、私が凍らせたから。そこに罪悪感なんてものは一切存在しない。何故なら、それは大神官様の頼みだから…………。大神官様は私の全て、あのお方の前では私の感情なんてものは塵に等しい。罪悪感など感じないし、感じてはならない。


「…………あと二日」


あと二日もすれば花の国は完全に枯れ果てるだろう。それが大神官様の望み…………ならば、私は。…………私は。


「…………冷たい」


氷魔法を使うようになって、幾星霜が過ぎた。凍ってしまったのは敵か、もしくは自分の心か。ただ一つ確かな事、それは大神官様の存在…………。私が私であるためにも、この仕事は完遂する。それだけだ。


「――――一応奴らが何か仕掛けでも作っていないか確認しないと…………ッ!?」


空を飛んでいた私目掛けて何かが飛んでくる!


「はぁッ!!」


瞬間、一突きを放つ。…………危なかった、謎の物体は氷の槍に突き刺さって止まった。一体、何を撃ち出してきたのか…………。


「これは…………」


正体を確認する。…………が、思わず間抜けな声を出しそうになってしまう。飛んできたのは…………


「…………ナマコ?」


ナマコだった。


◆◆◆


「ナマコショット!相手は(生理的嫌悪感で)死ぬ」

「色々試すにしてももうちょっとマシなのなかったのかよリヴィ!?」


花の国に来て5日目。あと2日以内に七賢者を討伐しなければ、この国の花々はおろか世界中の草花が枯れ果ててしまう。


そこで俺達はタイムリミットギリギリで仕掛けるある作戦を立てたのだが…………相手の情報はあるに越したことはない。という訳で、手数と一芸には定評がある俺達トゥットファーレで相手の弱点を探る事にした(嫌がらせの意味も結構ある)。ちなみに六花とクッキー、それにボビンは作戦準備のため今回は俺達だけだ。


「ナマコはさほど効果ないみたいね。次はイカよ!ライカ、爆発ですっ飛ばしちゃって!」

「りょーかいでーす!」

「海鮮以外の選択肢はないのかなぁ…………」

「腐ってるから海『鮮』ではないわね。海腐?」

「んな事どうでもいいよ!何か他にないのかよ!」


飛んで行ったイカも串刺しにしたテトラがゴミを見るような目でこちらを見てくる。…………致し方なし。自分陣営でも引くよ、これ。


「イカ刺しね(笑)」

「………………」

「ちょっやばいやばい槍構えてこっち来るよみんな!?」

「弱点を探れとは言ったけど煽れとは一言も言ってねーぞバカ!とにかく逃げるぞ!」

「リヴィりんのばかー!!」


高速で迫ってくるテトラから全力で逃げる!にしても、速い!結構重そうな槍持ってるのによくあんなスピードで飛んでくるな!?


「お、追いつかれる…………私はもう無理、がくっ」

「リヴィちゃーん!?こうなったら担いで逃げるしか!」

「片手で持ち上げた!?ていうかマジでヤバいぞ刺される!」

「こうなったら孫の手です!目を閉じていて下さい!」


それは奥の手だろと心内でツッコミを入れるが早いか、ライカが魔法を放つ!


「『ホーリー・ブライトネス』!」

「っ!?め、目がっ…………!」


なるほど、目眩し!ナイスだライカ!


「今のうちに逃げるぞ!」


目に手を当てて苦しむテトラに背を向け走り出す!とりあえず身を隠せる路地裏へ!


「ぜぇ…………はぁ…………何とか撒きましたね…………」

「そうだね、結構疲れた…………降りてリヴィちゃん」

「ありがとルミネ…………煽るのはマズかったわね…………」

「やる前に気付けよ…………死ぬかと思った…………」


体力お化けのルミネ以外が息を切らせながら、とりあえず安堵する。しかし、精神攻撃は効かないか…………。どうしたもんかね…………。


「次は毒虫でも放ってやろうかしら…………」

「精神攻撃系は効かないっての」

「いや毒でやっつけようと思ったのだけれど」

「そもそも死んでるのに毒ってあるの…………?」

「あっ!私が蘇生魔法で生き返らせれば毒成分復活です!?」

「死霊術効かなくなるわね」

「ジレンマ!」


…………『手数の多さを活かして弱点を探る』とか啖呵を切って見たものの、よくよく考えてみたらやたらめったら攻撃のバリエーションが豊富なのはリヴィとあと一応俺位だしなぁ…………。ライカは爆発、ルミネは物理位しかないし…………。


「ていうか試す度に命懸けじゃ神経すり減っちゃいますよぉ…………なんかこう、相手と接触せずに弱点を探る方法なんかないですかね?」

「無理でしょ…………私達の周りに七賢者の情報を持ってる人なんていないよ?魔王さんでもよく分かってないんだから」

「氷菓の七賢者って事でフェルに連絡取ってみたけど、『きゃらかぶり、ころす』って言ってたわよ」

「あいつ過激思考すぎない?でも、氷系ネットワークもダメかぁ…………」

「氷系ネットワークって何なのレイくん…………?」


議論を交わすも、並知能二人とバカ二人ではいい案など到底絞り出せない。頭を掻きむしっても、出てくるのは抜けた髪の毛だけ。クソ、何か無いのか何か…………。


「あー!考え事してたら頭痛くなってきました!頭使うのは苦手です!」


自称でも探偵やってた人がそれでいいのか?前はキレッキレだったのに、どうして今はこんな…………


「甘いものでも食べないと考えが纏まりません!パイナップルとか!」

「うるせーな、泣き言言う暇があったら少しは知恵を絞れ…………」

「あーっ!!」

「うわっ!?ど、どうしたのリヴィちゃん!?」


リヴィがいきなり大声を出す。こいつのこんな姿は珍しいな…………一体何を思いついたんだ?


「あったわ…………あったのよ!」

「な、何が?」

「七賢者の情報を知るための手がかりが!」

「マジかよ!?」


ハッキリと断言したって事は、相当自信があるって事か!?でもこいつ普段から堂々としてるし、どっちだ!?


「してリヴィりん、その手がかりって?」


その言葉を聞き終えたリヴィは、いつも持っている兎のぬいぐるみの縫い目をほどき手を突っ込みながら告げる。


「酢豚」


………………。


…………………………。


…………酢豚パイナップルさん!?

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