041.二者択一、あるいは
041
「晴れてよかったねー」
昨日の雨を感じさせないようなすがすがしい空の下――僕の心情はそうはいかないが――僕は伸と共に学校へと向かう。今回――というかこの二週間は、本当に共に学校に通っていた。
僕の遅めの自転車に併走するかたちで、車道側を伸が走っている。完調とまではいかない、僕の左手の怪我を心配してのことだった。叔母さんにそうしろと言われたから、というのが大きかったのかもしれない。しかし、僕は少し違うイメージを、彼女に対して抱いていた。
《――力になるから》
と、彼女は確かに言ったのだ。未だ《僕》のことを話すことはできないけれど、それでも、彼女は僕に手を差し伸べてくれた。折姫さんがそうしてくれたように、風下がそうしてくれたように。
そう考えると、心が痛むような気がした。
心そのものとなった僕自身が、痛むような気がした。
折姫さんも風下も、それぞれが《鏡現》について知った上で、それに対する考えを示してくれた。
一つに、折姫さんの《屈折姫》――物事を屈折させる差異能を用いて《僕》の周囲を屈折させることで、《僕》が周囲を十全に現取れないようにするという方法。そうすることで《僕》の中にいる僕が多少なりとも日の目を見られるように取り計らう。と、そんな風なことを彼女は言っていた。
もう一つに、風下の《読芯術》――物事の芯を見通す才能をもってして……あれ? そういえば、あいつはどうやって《僕》の件をどうこうするつもりだったのだろうか? その段階に至る前に帰ってしまったから、その細かな方法については未だ不明だった。
折姫さんは己がエゴのためだと。
風下は友達のためだと。
それぞれがそんな方法、理由で僕を助けようとしてくれていた。
僕はまだ――そのどちらをも選ぶことができずにいる。
どちらかの手を取るということは、必然的にどちらかの手を振り払うということだ。その選択を前に、正直に言って僕は怖じ気づいていた。今なら特に、伏郎さんの気持ちを理解できる気がする。選択を拒否して、他者の言うがままに生きていきたかった彼の気持ちを。
失うことが怖いのだ。
人生は選択の連続などとよく言うが、その選択の裏には当然、選択されるものと選択されないものが存在する。選択されないものは――僕なんかに言われたくはないだろうけれど――惨めだ。選ばれず、日の目を見ない。
僕の選択によって、選択されないものが生まれてしまうというのならば、僕は選択を拒絶する――いや、違うな。他人本位で考えているように見せて、これは実際のところどこまでも自分本位の考え方でしかなった。
これはただ、保険のために二つの選択肢を両方残しておきたいという、極めて自己中心的な考え方だ。
自分のエゴのため、君を助けてあげるよ――そう言われて喜びの涙を流している時点で、それはわかりきったことでもあった。自分が助かるのならば、その理由の所在は関係ない、ということだ。
《自分を理解できるのは、いつだって自分自身だけ》
人はどこまでも自分本位にしか生きることができない――折姫さんは、そう言いたかったのだろうか。
励ましているのか、それとも貶しているのか――あの人の本心は、今の僕にはわからなかった。
僕を助けようという本当の理由についても、同様に。




