お昼騒動
はてさて、なんとも面倒臭い後輩が出来た私だが仕事としては寧ろ楽になった。
なんといってもしょうた君はハイスペックボーイだ。
どんな仕事を押し付けてもやり方を少し教えるだけで完璧にこなしてくる。
更には私の仕事効率をあげるやり方を教えてくれた。
お陰様で1時間かかる仕事が45分で片付いたよ!やったね!!
…あれ、どっちが先輩だっけ?
先輩の威厳どこいった。
「璃夢先輩、お昼一緒にいかがですか?」
「アーウン、私マダ終わって無いカラー」
処々棒読みになったのは仕方がないのだと思う。
イケメンオーラ全快でキラキラとした笑顔で話しかけられてみろ、目が潰れるわ、近づくな。
「え?そうなんですか?手伝いますよ?」
イケメンなしょうた君は私以外と食べると言う選択肢を既に捨ててるらしい。
描写はないがこの間にも女性社員の皆様がしょうた君を昼食に誘っている。が、しょうた君は全無視しているのだ。
ある意味精神力の強いね、お前。
私はさっきから女性社員の皆様から殺気を送られてて怯えてると言うのに。勿論表面上だけ。
だって別に怖くないし。どうでもいいし。知らないよイケメンに言い寄られて調子乗るなとかね、どうでもよくない?
私はただイケメンを遠くから拝んで彼氏は平々凡々な男の子で良いんだよ。
寧ろそれが良いんだよ!平凡万歳!
「……璃夢先輩?もしかして俺以外の事考えてるの?」
ん?なんだかしょうた君の目からハイライトが消えた気が…
「ええっと…?」
「璃夢センセ着いてきて。仕事とか後で俺も手伝うから。」
「え?ええ?ちょっとまって?!」
あれよあれよと腕を引かれ出てきたのはオフィスの裏…ってちょっとまて!
誰が私に壁ドンしろといった!私じゃなくて別の子にやれよ!
私がやられるとか誰得?!
「ち、ちょっと…これどういうことよ!」
「だって…璃夢センセェが俺以外の事考えてたから…嫉妬しちゃって。」
そんな子供が拗ねた顔しないでくれ。
ワンコみたいで可愛いじゃないかよ。
犬派ですが何か。
「嫉妬って…何言ってるのよ。彼氏でもないのに偉そうにまぁ。」
「は?何、璃夢センセ彼氏いるの。」
あれ?またハイライトが消えた…?
「残念ながら、いい人に巡り会えずいまだ華の独身ですよー。」
あ、ハイライトが戻った。
「そっかそっか!良かったぁ…璃夢センセェに近付く男は皆いらないから始末しなくちゃ、ね?」
ん?良かったぁって言った後何かボソボソ言ってたけど聞き取れなかった。何だ?
「宮古君、何か言った?」
「んーん、べーつにっ!」
何故そんなにも機嫌が良いんだ君は。
「それより璃夢先輩、お昼食べに行きましょ!」
腕をまたまたがっちりと捕まれ私はそのまま不本意ながらイケメンエリート後輩君とお昼を共にしたのである。
女性社員の目が一層怖くなったのは言うまでもなさそうだ。
*****
俺の可愛い璃夢先輩。あの歳でナチュラルメイクで可愛いとかさすがセンセェ。
俺が話しかけると少し不満げな瞳に俺だけを写してくれる。
先輩の視線を独り占めできてる。
何て素晴らしいんだろう、何て気持ちいいんだろう。
大好きな大好きな大好きな大好きな璃夢センセ。
どうやったら振り向いてもらえるかな?
どうやったら常に俺だけを見てくれるかな?
俺はずっとずっとずーっと璃夢センセだけを見てたのに…
初めて出会ったのは俺がまだ幼い園児の時。
センセェは職業体験として俺が通ってた保育園に来てくれた。
璃夢センセはクリーム色の髪に茶色の瞳、制服はスカートが少し短めで端から見れば不良に見えたかも。
でも顔は童顔で身長も低めだった璃夢センセを怖いと思う人はいなかったと思う。
俺も怖いとは思わなかった。
寧ろ可愛いって思ったのは内緒である。
初めは別段興味はなかった。
でも他の子が遊んでるのをみると羨ましくて、どうすれば俺にも話しかけてもらえるか園児なりに考えて取り敢えず今持ってる本をセンセェに読んでって頼んでみた。
そしたら璃夢センセ優しいからなにか言いたげに読んでくれたんだよね。
そんで璃夢センセ読むのすっごく上手で保育園の先生も吃驚してたっけ。さすが璃夢センセだなぁ。
そして、一番嬉しかったのはコンプレックスだった髪色を良いんじゃない?って認めてくれたこと…
あと、璃夢センセがお揃いって言ってくれたこと
。
凄く嬉しかったなぁ。
それ以来俺は髪色についてなにか言われたら
「いいでしょ、これ地毛なんだよ。俺の自慢。」
と言うようにしている。
璃夢センセとお揃いで、璃夢センセが良いんじゃない?って言ってくれた色。
こんなの子供心のちっぽけな恋心だと言う人はたくさんいた。
でも忘れようとする度璃夢センセの顔が出てきて忘れられなかった。
帰り道璃夢センセとすれ違うことも何度かあった。
その度に璃夢センセを想う気持ちが大きくなってこれが本当の恋心なんだってわかったんだ。
今になってもこの気持ちは変わってないよ。
璃夢センセが大好きで愛してる。
実を言うと俺の家は中々の金持ちだ。
だから璃夢センセのことをずっと見ていることができた。
我が家の教員免許を持ったメイドに教師として高校に送り璃夢センセの様子を随時報告するように仕向けたこともある。
璃夢センセに近付く害虫(男)は徹底的に排除した。
なので璃夢センセが傷物じゃないことも知っている。
この会社の事だって情報屋に売ってもらったのだ。
璃夢センセは偶然って思い込もうとしてるみたいだけど。
と言うわけで璃夢センセへの恋心は消えることなく今もなお健全に育まれているのである。
高校の時の友達には歪んでるって言われたけど、それは愛故ってことで。
しかし、璃夢センセちょっと見ないうちに余計美人になったと思う。
お陰で何か害虫が彷徨いてるみたいだし。
璃夢センセとちょっと仲が良いからって調子乗ってるんじゃないだろうな。
何て名前だっけ?確かしたの名前が樹だったような。
まぁ誰だろうと俺と璃夢センセの間に入るものは徹底的に潰す。
例えどんな手を使ってもね…