最終話〜トレイの上の鍵
本作をお読みいただき、ありがとうございます。
これまで紆余曲折を経て、時にぶつかり、時にすれ違ってきた平野と「私」。
「最悪の週末」という手痛い失敗を経て、二人がたどり着いたのは、完璧さからはほど遠い、けれど愛おしいほどに等身大の日常でした。
正しさよりも、優しさを。
計画通りにいかない日々を、笑い合える強さを手に入れた二人の結末を、どうぞ最後まで見届けていただければ幸いです。
それでは、最終話「トレイの上の鍵」をお楽しみください。
章):トレイの上の鍵
「カチャ」という軽い金属音が、静かなリビングに響く。
あれから数ヶ月。玄関のトレイには、平野が律儀に置き続けた鍵がいつも並んでいる。あの「最悪の週末」を乗り越えた私たちは、怒るステップを一つ飛ばして、お互いの不完全さを笑って許せるようになっていた。
仕事帰りの平野が「ただいま」とドアを開ける。その手には、あの日と同じ、近所のスーパーの惣菜袋。
「今日も映画でも観る?」
「いいね、じゃあポテトチップスも開けちゃおうか」
完璧な計画よりも、予期せぬ失敗を笑い合えるこの部屋こそが、私たちの居場所だ。トレイの上で静かに重なる二つの鍵を見つめながら、私はこれから始まる何気ない日々に、心から愛しさを感じていた。
【了】
この度は『保健室の中で入れ替わり』を最後までお読みいただき、本当にありがとうございました。
身体が入れ替わるという突飛なハプニングから始まった平野と「私」の物語ですが、最終話をもって無事に完結を迎えることができました。
完璧ではないからこそ愛おしい、そんな二人の等身大の日常や、失敗をも笑い合える関係性の変化を、読者の皆様に温かく見守っていただけたならこれ以上の喜びはありません。
執筆中、二人の距離感や心の機微に悩むこともありましたが、皆様の応援やアクセスが何よりの励みになりました。これまでお付き合いいただき、心から感謝申し上げます。
またどこかで新しい物語をお届けできる日を楽しみにしています。本当にありがとうございました!




