メイドですが男子校に潜入しております②
私が聖白鳥学園に編入するのは春斗さまよりも先です。それはなぜかと言いますとこちらにも色々、聖白鳥学園でやることがあるのですわ、例えば春斗さまが生活する個室にとうちょ……を付けたり、本音を言えばプライバシー侵害で気が引けますがこれも仕事です。
あとは春斗さまよりも先に編入しておくことでバレる危険性を下げると言うこともあるそうですね。
「よし」
ついでに、旦那さまと奥さまに呼び出され聖白鳥学園に編入するよう指示された次の日は通っている佐倉高校をお休みして先輩メイドたちと一緒に聖白鳥学園に編入する用意をしていました。あっ、もちろん春斗さまにはバレないようにですよ。
男子校に編入するあたり、髪型服装を変えなければなりません。ですから私は先輩メイドの一人、いかにも女子力が高そうなゆるふわ系の小鳥遊 冬華先輩に私の長い黒髪をバッサリと切ってもらいました。
いや〜私も長くてうっとおしいと思っていましたからちょうどバッサリ切れて良かったです。でも小鳥遊先輩は『本当に良いの⁉︎ねぇ、女の子の髪は宝物なのよ⁉︎せめてカツラとか被ったら!』と他の案を出してくれたのですがカツラだと取れた時が恐ろしいので。
「うっ、ゔゔん」
声はアニメ声からスポーツドリンクが似合う爽やか系男子の声に変えて聖白鳥学園の制服を着てはい、私は身長が低めだけど、どこからどう見てもスポーツドリンクが似合う爽やか系で知的な男性です!おっと伊達メガネも忘れずに。
「千秋ちゃんが爽やか系男子になっちゃった」
「でも、どこからどう見ても男よ」
「千秋がいなくなると寂しいな」
旦那さまと奥さまに呼び出された2日後、そして、春斗さまが学校に行ってから数時間後。そう、私はこれから御子柴家の高級車で聖白鳥学園に向かうのですわ。準備が早いのはメイドですからね、あとは御子柴家の財力の力。
「私、いや俺もみんなと会えなくなると思うと、辛いよ」
「キャー!!!イケボ〜!!!!!」
「耳テロ〜」
「ぐはっ」
「惚れる!これは絶対に惚れるわ」
「千秋さんの特技は本当に素晴らしいです」
「ははっ、すげぇな」
お屋敷の前では全ての先輩メイドや執事が集まってお見送りをして下さいました。本当にみなさまお優しい方ばかりです。
「性格はどうするんだよ」
「有明料理長、大丈夫です。聖白鳥学園での俺の性格は明るく表情豊かで品があり知的で誰もが憧れる爽やかが全面に出たキャラですので、ご安心を」
「キャラ作りもお前の特技だもんな」
からかうような口調で言ってきた有明料理長に私はおふざけ抜きで真剣に答えました。
「はい、そうです」
「即答かよ」
八重歯を見せて笑っています。有明料理長は太陽のように温かい笑顔が素敵な方で、いつも調理場を和ませてくれました。あう、なんだか涙が溢れそうになってきましたわ。
「さぁ、時間よ」
「はい」
リムジンの窓から顔を覗かせた奥さまに言われ、私は駆け足で車に乗りました。そして窓から顔を出し先輩メイドや執事たちや料理長が見えなくなるまでバイバーイっと別れを告げます。
「いつでも、帰ってこいよー」
「連絡しないとこっちから連絡するわー」
「元気でねー!」
「頑張れ!」
「みなさん、ありがとうございました〜!」
全員の体が見えなくなったところで私は対面に座る奥さまと旦那さまに向き合い今後の予定の最終確認をしました。
「春斗が編入してくるまでは自由にしていて良いわ。もちろんやることはやってからよ」
「はい」
「それから春斗が編入してきた後は毎日、春斗に関する報告をメールで私のパソコンに送ってちょうだい。どんな小さなことでも良いからね」
「はい」
報告書を書くのは親バカで心配性な旦那さまを安心させるためでもあるのよ。と、奥さまが付け加えて旦那さまは困ったように笑っていました。
「あとは、2日前に話したことをやってほしいのと」
御子柴家に有益な人間かそうではないかの判別。ここで、話が奥さまから旦那さまに交代しました。きっとお話の内容は春斗さまや他の生徒にバレないように動いてと言うのでしょう。
「くれぐれもバレないように」
「承知しております」
ほら、やっぱり。
「でも、学校側には全て話してあるから教師には気を張らなくても良いのよ。それに万が一何かあったらすぐに報告してね」
『全て』の中には奥さまの邪な考えは含まれていませんよね。
へー成る程、奥さまの『万が一』の話を深く考えれば御子柴家が圧力かお金か何か知らないけれど、そんなようなことをして聖白鳥学園に私を編入させたのですか。
「分かりました」
* * *
車で走ること3時間くらい、えぇまだ聖白鳥学園に着きませんよ。だって聖白鳥学園までは遠いのですから。
「あの旦那さま、奥さま」
ふとここで私は朝から気になっていたことを質問してみました。実は私、春斗さまには何もお別れの言葉を言わずに出てきてしまったのですよね。
まぁ、バレないためにもその方が良いのですがやっぱり嘘でも良いから挨拶をしなければいけなかったかなと後悔しております。そのことを伝えますと奥さまからこんな発言が。
「大丈夫よ、春斗にはあなたは素敵な声優の夢を追うため、御子柴家から離れたって伝えておくから」
あっ、それは私らしい理由ですわ〜。
春斗さま、何も言わずに勝手に出て行って申し訳ございません。ですが、私はいつまでも春斗さまのお側にいます。
心の中で春斗さまに謝りながら私はこれからのことについて考えるのでした。




