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幼児から始めるゆるゆる無双学園生活  作者: 蒼野湊
第3章 アステル魔術学園編

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第50話 余白――再結の翌日と、静かに残る違和感

朝。


鐘の音が、

昨日と同じように鳴っている。


寮の窓から見える景色も、

いつもと変わらない。


(……なのに)


胸の奥が、

少しだけ――静かすぎた。


■ 何事もなかったような日常


廊下を歩く生徒たち。

授業の準備。

交わされる挨拶。


ティオ「おー、ユウト!

 昨日どこ行ってたんだ?

 警備がピリついてたぞ」


俺「……ちょっと、用事」


ティオ「ふーん?

 ま、無事ならいいや」


(……いいや、で済ませてくれるのがありがたい)


ミーナは、

少し心配そうに俺を見ていたが、

何も聞かなかった。


(みんな……

 知らない)


(知る必要も、ない)


■ リリアとの距離


教室。


俺の席の、

二つ前。


リリアが座っている。


(近い……けど)


昨日の夜と同じだ。

距離はある。


話しかけようと思えば、

できる距離。


でも――

しない。


リリアも、

振り返らなかった。


(……決めたわけじゃない)


(ただ、

 今はこの距離がいい)


欠片は、

静かだった。


暴れもしない。

求めもしない。


(……安定してる)


でも、その静けさが――

少しだけ、不安だった。


■ 授業中の違和感


理論講義。


空間構造の基礎。


アストレア教官の説明を聞きながら、

俺は内側に意識を向ける。


(……線が、少ない)


今までなら、

教室全体に張り巡らされていた

“結び目”の感覚。


それが――

必要最低限しか見えない。


(制御が上手くなった?)


それとも――


(……“抑えられてる”?)


エリスの視線を感じる。


一瞬、

目が合った。


彼女は、

何も言わず、

小さく頷いた。


(……気づいてる)


■ 放課後の確認


隔離訓練区画。


今日の訓練は、

短かった。


エリス「異常はない」


俺「……でも」


「ええ。

 “過剰”がない」


(それが、

 引っかかる)


エリスは、

魔導端末を閉じながら言った。


「再結で、

 あなたの欠片は

 安定を優先する状態に入った」


俺「……悪いこと?」


「いいえ。

 “強さ”だけを見れば、

 むしろ下がっている」


(……下がった)


「でも――

 “選択の自由度”は、

 上がった」


俺は、

少し考えてから言った。


「……爆発しなくなった、

 って感じか」


エリスは、

小さく笑った。


「ええ。

 “壊さない前提”の力になった」


(それは……

 俺が望んだ形だ)


なのに――

胸の奥に、

小さな引っかかりが残る。


■ リリアの未来視


同じ頃。


光属性調整室。


リリアは、

静かに目を閉じていた。


(……見えない)


未来が、

“一本の道”になっている。


分岐が、

少ない。


(……安定してる)


でも――

それは同時に。


(……逃げ場が、少ない)


彼女は、

ゆっくり息を吐いた。


(ユウト……

 これでいいのかな)


■ 夕暮れの中庭


日が傾く。


中庭のベンチ。


偶然を装って、

俺とリリアは同時に腰を下ろした。


沈黙。


長い。


でも、

嫌じゃない。


リリアが、

小さく言った。


「……今日、

 未来が静かだった」


俺「……俺も」


少しだけ、

言葉を選んで続ける。


「……安定してる。

 でも……」


リリアは、

同じ言葉を口にした。


「……“余白”が、少ない」


目が合う。


一瞬、

笑いそうになって――

やめた。


(同じこと、

 考えてる)


■ まだ、終わっていない


空が、

夕焼けから夜へ変わる。


欠片は、

静かだ。


落ち着いている。


でも――

“眠っている”わけじゃない。


(……選択肢が減るってことは)


(いつか、

 選ばされる)


遠くで、

鐘が鳴った。


一日の終わり。


でも、

物語の終わりじゃない。

本話もお読みいただき、ありがとうございました!


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