第48話 分断――離された二人と、揺らぎ始める欠片
翌朝。
学園は、いつも通りの顔をしていた。
授業、鐘、行き交う生徒たち。
――だが、俺にとっては違った。
(……静かすぎる)
■ 一人での朝
寮を出る。
いつもなら隣にいたリリアはいない。
代わりに、少し後ろを歩くエリスの足音だけが響く。
エリス「……集中しなさい。
今は“距離”を保つことが安定につながる」
俺「……わかってる」
(頭では)
(でも、欠片が――)
胸の奥が、
微妙にズレた鼓動を打っている。
(今まで、
こんな感じはなかった)
■ 訓練での異変
隔離訓練区画。
今日の課題は、
“触れずに観測する”だけのはずだった。
俺は、
空間の線を感じ取ろうとする。
(……いつもなら、
ここに“結び目”が……)
だが――
感覚が、荒れている。
エリス「……止めなさい」
俺「え?」
「欠片が、
“外側”を探し始めてる」
(外側……?)
エリスの表情が硬くなる。
「……共鳴相手を、
探しているのよ」
(……リリア)
■ 同時刻、リリア側
別棟。
光属性専用の調整室。
リリアは、
静かに立っていた。
教官「集中しなさい。
未来視は“見る”ものじゃない。
“流す”ものだ」
リリア「……はい」
だが――
視界の端に、
黒い影が増えている。
(……離れた未来が、
増殖してる)
胸が、
締めつけられる。
(ユウト……
近くにいない)
彼女は、
無意識に胸元を押さえた。
■ 欠片狩りの“揺さぶり”
その夜。
ユウトの部屋。
(眠れない……)
欠片が、
低く唸るように震えている。
(……来る)
ノック。
だが――
気配が、おかしい。
俺「……誰だ?」
返事はない。
次の瞬間。
部屋の空間が、
わずかに“ズレた”。
エリス「ユウト、動くな!」
同時に、
影が壁から“滲み出る”。
侵入者「――孤立、確認」
(もう来た……!)
■ 単独戦闘
侵入者は一人。
だが、動きが異常に滑らかだ。
侵入者「鍵から離された欠片は、
不安定になる」
(……知っててやってる)
俺は、
歯を食いしばる。
(壊さない。
でも――)
(守れないなら、
意味がない)
侵入者の刃が、
**“存在しない角度”**から迫る。
(くっ……!)
俺は、
咄嗟に空間を“閉じた”。
だが――
閉じすぎた。
空気が、
一瞬、真空に近づく。
侵入者「……っ!」
侵入者は後退したが、
俺の膝が、
がくりと落ちる。
(……やりすぎた)
エリスが、
即座に抑制術式を展開する。
「無茶をしないで!
制御が――」
俺「……足りない」
エリス「なに?」
俺は、
はっきり言った。
「リリアがいないと、
制御が――
足りない」
エリスは、
一瞬、言葉を失った。
■ リリア側も、襲われる
同じ夜。
調整室の外。
リリアは、
急に立ち止まった。
(……来た)
光が、
無意識に集まる。
影が、
天井から落ちる。
侵入者「――鍵、発見」
リリア「……私が?」
(やっぱり……)
侵入者は、
優しい声で囁いた。
「安心しなさい。
あなたは壊さない」
「“使う”だけだ」
(……絶対に、嫌)
リリアは、
光を解き放った。
「《光導・拒絶》!」
だが――
影は、
未来の一歩先にいた。
侵入者「未来視は、
“近くに欠片がないと
精度が落ちる”」
(……そんな)
■ 同時に起きる“共鳴”
二人が、
それぞれの場所で追い詰められた瞬間。
――同時に。
《ドクンッ!!》
距離を越えて、
欠片が強く脈打った。
(……リリア!?)
リリアも、
胸を押さえる。
(……ユウト!!)
空間と光が、
呼び合う。
■ 決断の時
エリスが、
歯を食いしばる。
「……学園長の命令を破るわ」
俺「エリス?」
「分断は――
失敗だった」
彼女は、
結界解除の術式に手を伸ばす。
「行きなさい。
取り戻しなさい」
俺は、
立ち上がった。
(……守る)
(今度は――
離れない)
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