第40話 評価の余波――変わる視線、動き出す未来
模擬戦評価演習の翌日。
特待クラス棟の廊下は、
昨日までとは明らかに空気が違っていた。
ひそひそ、ではない。
視線は集まるが、
そこにあったのは恐怖よりも――警戒と認識。
(……完全に“見られ方”変わったな)
ティオ
「ユウト、なんか……
誰も文句言ってこないな」
ミーナ
「う、うん……
ちょっと距離あるけど……悪くない……」
ルカ
「尊敬の目、だと思う!」
シオン
「……“上位存在”として扱われ始めた」
(その言い方やめてくれ)
特待クラスの変化
教室に入ると、
昨日までユウトを避けていた生徒たちが、
自然と道を空けた。
だが、
誰も敵意を向けてこない。
火属性のカイルは、
少し離れた席からこちらを見て、
軽く顎を引いた。
(……認められた、か)
アストレア教官が教壇に立つ。
「昨日の評価演習について、
改めて言っておく」
教室が静まる。
「ミナト・ユウトの力は、
確かに特異だ」
一瞬、緊張が走る。
「だが――
制御と判断において、
このクラスの模範である」
ざわ……。
「力の大きさよりも、
“どう使うか”。
それを忘れるな」
(……先生、フォローが上手すぎる)
教官の視線が、
一瞬だけ俺に向けられた。
(……重いけど、悪くない)
リリアの沈黙
授業後。
いつもならすぐ話しかけてくるリリアが、
今日は少し距離を取っていた。
(……?)
「リリア?」
彼女は一瞬、
驚いたように目を上げてから、微笑んだ。
「ううん、なんでもない」
(いや、絶対なんかある)
だがその時、
エリスが声をかけてきた。
「ミナトくん。
放課後、少し時間を」
「また研究室?」
「いいえ。
今日は……“記録室”」
(記録室?
それまた不穏な響き……)
記録室――過去と未来の狭間
学園地下。
静かな石造りの部屋。
古文書、魔導記録、
そして――失敗例の封印棚。
エリスは一冊の書を取り出した。
《空間干渉事例・未完》
「“完全一致”はない。
でも、似た兆候を示した者はいた」
共通点は三つ。
・極端に早い覚醒
・夢による構造視認
・周囲の未来に“ズレ”を生じさせる
「リリア・アークライトには、
微弱だけど……未来視の兆候がある」
「昨日の演習後、
彼女はこう言った」
――未来が、変わった。
「あなたが力を“壊さずに使った”ことで、
破滅に繋がる未来が一つ、消えた」
(……俺が、未来を……)
エリスは静かに言った。
「ユウト。
あなたは、世界を変え得る」
(……重すぎる)
その夜
寮の中庭。
月明かりの下。
「ね、ユウト」
「うん」
「わたし、ずっと二つの未来を見てた」
一つは、
孤立して、力に飲み込まれる未来。
もう一つは、
誰かと繋がりながら進む未来。
「昨日、はっきりした」
「……どっち?」
「後者」
彼女は、一歩近づく。
「だから、ね。
これからも、隣にいる」
欠片が、
静かに、穏やかに脈打った。
(怖い力だ)
(でも――)
ユウトは、ゆっくり息を吐く。
「……一人じゃなければ、
大丈夫だと思う」
それは、
英雄の宣言でも、
世界を救う誓いでもない。
ただ、
力と共に生きると決めた
一人の選択だった。
空は、穏やかに澄んでいる。
未来は、
まだ白紙だ。
だが――
その白紙に、
誰と並んで線を引くかだけは、
もう決まっていた。
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