第38話 特待クラスに走る噂――恐怖と嫉妬、その先に
隔離訓練区画での訓練から二日後。
特待クラス棟の廊下は、
どこか落ち着かない空気に包まれていた。
ひそひそ、ざわざわ――
明らかに、俺を中心にした視線と声。
(……来たな)
ティオ「ユウト、なんか周りの目おかしくね?」
ミーナ「う、噂……広がってるみたい……」
ルカ「昨日、他のクラスの人にも見られたよ?」
シオン「……隔離区画の結界、完全じゃなかった」
(やっぱり漏れたか……)
■ 噂の中身
休憩時間。
少し離れた場所から、はっきり聞こえてくる。
「聞いた? 特待のミナトってやつ」
「空間を“動かした”らしいぞ」
「魔法じゃないって……」
「危険物扱いって本当か?」
別の声。
「でも、アークライト家のリリアが肩入れしてるんだろ?」
「じゃあ本物だ……」
「いや、あれは“化け物”だ」
――化け物。
胸が、少しだけチクリとした。
(……仕方ないか。
俺自身、まだ理解できてない力だし)
その時。
「……随分、好き勝手言ってくれるな」
低く、刺すような声が割り込んだ。
■ 初めての対立者
振り返ると、
そこに立っていたのは――
銀髪短髪、
鋭い目つき、
特待クラスの制服を着た少年。
腕には魔導刻印。
明らかに実戦慣れしている。
「お前が、ミナト・ユウトか」
俺「……そうだけど」
少年は、鼻で笑った。
「俺は カイル・グレン。
火属性特待。
貴族連合の推薦枠だ」
(推薦枠……つまりエリート中のエリート)
カイル「学園は“力ある者”の場所だ。
だがな――」
一歩、距離を詰めてくる。
「制御できない力は、
“力”じゃなくて“災厄”だ」
空気が張りつめた。
ティオ「おい、喧嘩売ってんのか?」
ミーナ「や、やめて……」
ルカ「感じ悪い……」
シオン「……典型的な火属性思考」
(お前はさらっと毒吐くな)
カイルは俺だけを見て言った。
「噂じゃ、お前は“隔離”されてるそうだな。
危険だから?」
俺「……訓練を受けてるだけだ」
カイル「同じだ」
火花が、
彼の指先で弾けた。
「だったら証明しろよ。
お前の力が“制御された力”だってことを」
(来たな……決闘フラグ)
■ リリア、即参戦(言葉で)
「――その必要はないわ」
凛とした声。
リリアが一歩前に出る。
「ユウトは、学園と教官の管理下にある。
あなたが試す理由はない」
カイルはリリアを見て、目を細めた。
「光のアークライトか。
……なるほどな」
(嫌な納得の仕方するな)
カイル「だが、
“守られてる”時点で答えは出てる」
俺は、前に出た。
俺「……カイル。
俺は、証明したいとは思ってない」
カイル「は?」
俺「でも――
“災厄”って言われっぱなしなのも、
正直、気分はよくない」
廊下が、静まり返る。
俺「だから……
公式の場でやろう」
カイル「公式?」
その瞬間、
ちょうど背後から声がした。
「いい提案だね」
振り返ると、
アストレア教官が腕を組んで立っていた。
■ 教官公認の“場”
アストレア教官「ちょうどいい。
来週、特待クラス合同の
模擬戦評価演習がある」
生徒たちがざわめく。
「模擬戦……!」
「対人評価だ……!」
アストレア教官「そこで、
ミナトとグレン、同じ区画に入ってもらう」
カイルは、口角を上げた。
「……いいだろう。
そこで白黒つけよう」
(白黒って……
俺、そんな覚悟決める場面だっけ……?)
だが――
逃げる選択肢はなかった。
リリアが小さく囁く。
「ユウト……無理しないで」
俺は、頷いた。
「大丈夫。
……制御する」
胸の奥で、
欠片が静かに応えた。
(試すんじゃない)
(証明するんだ)
(俺が――
“俺の力を使う”ってことを)




