第3話 魔力測定、幼児のくせにバグってると言われる
――その日は、村がちょっとだけざわついていた。
理由は簡単。
俺の魔力測定の日だからだ。
(いや、そんな“村祭りの日みたいな空気”にしないでほしいんだが)
母さんのリアは朝からソワソワ。
父さんのガイは「落ち着け!」と母さんをなだめながら、自分が一番落ち着いてなかった。
「ユウトは絶対すごい魔力持ってるはずだ! なんか……ほら、手の器用さとか雰囲気とか!」
(魔力と雰囲気の関連薄くない?)
「ガイさん、落ち着いてください。ただの測定ですってば」
「いやいや、うちの子は絶対、やる男なんだ!」
(プレッシャーが重いって)
村の中央にある集会所に行くと、すでに人だかりができている。
「ガイの息子だってよ、楽しみだな」
「いやいや、リアの方に似たら魔術系だろう?」
「将来、学園に行ったりしてな!」
(……なんだろう。急に“地域の期待を背負う主人公”みたいな空気になってる)
いや、嬉しいけど、幼児だぞ俺。
■ 魔力測定の儀(幼児用)
室内には、丸いクリスタルが置かれていた。
両手で抱えられるサイズで、淡いブルーに光っている。
村の測定担当の老人――ロッサばあちゃんが、俺を見てニコニコした。
「ユウト坊、来たねぇ」
(ばあちゃん、この間くれたクッキー美味かったよ)
「このクリスタルに手を乗せるだけでいいからね。痛くないよ」
(了解です)
俺はクリスタルに手を乗せる。
すると――
バチッッ!!
「え」
光が走り、クリスタルが淡く震えた。
「ちょ、これ大丈夫!?」
「えっ、前こんな反応した子いたか?」
「ないな」
(おいおいおい、初っ端から前例なし!?)
クリスタルの表面がぐるぐる色を変えていく。
青、緑、黄色、赤、紫……七色ループ。
最後に、どん、と白い光が弾けた。
老人が慌てて計測板を確認する。
「えーっと……ユウト坊の魔力量は……」
沈黙が落ちる。
皆がごくりと息を飲む。
そして――
「……B+!!」
「おおおおおっ!!?」
「Bランク!? 赤ん坊で!?」
「村でBランクは前代未聞じゃないか!?」
(B+って、すごいのか?)
ロッサばあちゃんが俺の頭を撫でる。
「ユウト坊、すごいよ。村じゃ一番だねぇ」
(まじ?)
「学園に行けば、C〜Bあたりが一般的だ。B+なら、中級学園なら推薦狙えるぞ!」
(推薦!? 俺、幼児だぞ!?)
父さんは泣く。
母さんも泣く。
村の人もなんか泣く。
「やっぱりうちのユウトはすごいんだ!!」
「リア似で魔術タイプかもなぁ!」
「いや、ガイさんに似て身体能力も強そうだし両刀タイプかもよ!」
(いや……両刀とか言うとなんか誤解生むからやめて)
■ しかし、このあと事件が起きる
「じゃあ次、属性測定もするよ」
属性とは、炎・水・風・土……など魔法の“向き”のことらしい。
俺はまた別の小さめのクリスタルに手を置く。
すると――
ポンッ!
クリスタルは「無色透明」のまま光らなかった。
「あれ?」
「……えーっと……ユウト坊は……」
ロッサばあちゃんが板を確認し、眉をひそめる。
「未分類だねぇ」
「未分類!!?」
「そんなのありえるのか?」
「いや、滅多にいない……というか、“魔力だけ強くて属性が無い”ってかなり変わってる」
(変わってるのは分かったけど、俺どうなん?)
老人が説明してくれる。
「未分類は、“伸びしろが未知数”とも言われてるんだよ」
(へぇ……)
「鍛えれば、全部の属性を少しずつ使えたり、あるいは特殊な魔術に目覚めたりするかも」
(えっ、それって結構ロマンあるやつ?)
「ただし、伸びなければ一生“そこそこ魔力があるだけの器用貧乏”だねぇ」
(なんというガチャ結果……!)
■ その夜、成長ログが荒ぶる
家に戻った俺は、早速ログを確認する。
◆ 特別ログ ◆
《魔力Lv1 → Lv2》
《魔力適性:未分類が確定しました》
《成長方針を調整します》
▼ 今日の一歩
・深呼吸しながら魔力をゆっくり巡らせてみましょう
※ 未分類の魔力は“扱い方”が重要です
(……未分類の魔力って方向性フリーなのか?)
ちょっとワクワクしてきた。
属性がないってことは、逆に言えば制限もない。
前世のゲームでも「無属性最強」がよくいたし……。
(てか、“一歩”が相変わらず赤ん坊仕様なんだよな)
「ゆっくり息を吸って〜吐いて〜」
母さんが寝かしつけてくれる横で、
俺は魔力を巡らせる練習をこっそりやる。
(……ん? なんか、あったかい?)
胸の奥で、ふわっと光るような感覚。
◆ スキルログ ◆
《魔力操作 Lv1 解放》
《魔力操作 Lv1 → Lv2》
(おおおおお!)
成長が早い。
“未分類”って不安定だけど、そのぶん反応が鋭いのかもしれない。
■ 翌朝、父さんのセリフに吹いた
「ユウト、昨日はすごかったなぁ……!」
(いや俺、特に何もしてないが)
父さんが薪割りしながら笑う。
「将来、学園に入っても……“未分類のユウト”って呼ばれるのか!」
(なんか二つ名みたいでカッコいいやつになってる!?)
母さんも負けていない。
「うちの子、絶対ぜ〜ったい学園で人気者になるわね!」
(いやハードル上げすぎ!)
村のおばちゃんにまで言われる。
「学園入ったら、彼女の一人や二人すぐできるよ〜!」
(いや俺、まだよちよち歩きなんですが!?)
でも――悪くない。
期待されるの、悪くない。
前世じゃ、誰も俺の努力なんて見てくれなかった。
気づいたら「はいノルマ、はい残業」だった。
でも今は――
(この世界では、ちゃんと見てもらえるんだな)
だからこそ。
(……絶対、強くなってやる)
未分類だろうがB+だろうが、関係ない。
俺には成長ログがある。
一歩ずつ積み上げる最強の能力が。
次は――
学園に行くための【入学試験】だ。
もちろん幼児なのでまだまだ先だが、
俺の“成り上がりロード”はもう始まっている。
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