第34話 森の奥、忍び寄る影――届かぬ憧れと警鐘
リュードの朝。
薬草採取の高評価が伝わり、ギルドでレイルたちの名前も小さく話題になっていた。
「おはようございます、レイルさん。森の奥でまた異変が起きているんです」
サリナとカティアが深刻な面持ちで話しかけてくる。
「家畜や物資がやられて、住民も怯えていて……パーティーに“調査”をお願いできませんか?」
「もちろん、やらせてください」
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◆ギルドでパーティー名登録
依頼票の手続きを済ませると、サリナが少し微笑みながら声をかけてくる。
「そういえば皆さん――
最近ずっと同じメンバーで依頼を受けてますよね?
この街のギルド規定に沿って、“パーティー登録”をされては?」
カティアも「パーティー名があると依頼や報酬も有利ですし、
ギルド内での信頼も上がります」と背中を押す。
レイルは仲間たちと顔を見合わせる。
「目立つのはちょっと……」
「静かなのがいい」
「ぷるっ」(モモン)
何案か出し合い、最終的にレイルが呟いた。
「……草影の歩み、かな。俺たちらしいし」
全員がほっとしたようにうなずく。
「“草影の歩み”ですね。いい名前です」
サリナがパーティー名を登録する。
ギルドの札に控えめにその名が刻まれた。
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◆鍛冶屋で“銀糸の通い衣”
ギルドを出て、街外れの鍛冶屋に立ち寄る。
煌びやかな甲冑や重装備の奥――
地味な一角に、どこか柔らかな光を帯びた防具が掛けられていた。
鍛冶屋が説明する。
「これかい。“銀糸の通い衣”――古い工房の作りでな。
派手さはないが、鉄線に銀糸を織り込んである。
軽いし、魔法の加護や癒しがすっと通るって評判で……
魔術師やテイマーが、黙って選んでいくことが多いね」
レイルはその手触りを確かめる。
「……派手じゃないけど、質がいい。こういうのが一番安心できるな」
リシェル「魔法が流れる感じがする。森でも目立たないし、動きやすそう」
カレン「陶器のタイルパッドも付いてるんだ。打撃にも強いんだって」
モモン「ぷしゅ~!(さらさらしてて、落ち着く!)」
値札には【3,000ルム】。
財布を確認すれば【2,700ルム】。
「……あともう少し、か」
買いたいが、今は我慢。
仲間たちも「いつか絶対手に入れよう」と励ましてくれる。
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◆森の入り口――住民の声
森の手前で地元の男が声をかける。
「お前さんたち、気をつけな。森の奥はこのところずっと変だ。
家畜だけじゃない、夜になると人影も消えるって噂が……」
カレンは「大丈夫、私たちがちゃんと調べてくるから」と微笑む。
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◆森の中、不穏な前兆
木々の隙間から霧が流れ、鳥や小動物もいない。
湿った地面には引き裂かれた荷袋や巨大な爪痕。
リシェルが木肌を見つめてつぶやく。「これ、人でもひとたまりもない……」
空気が重く、湿った瘴気がまとわりつく。
ミルが耳を倒して「お兄、変だよ。あいつ……目を合わせたくない」
カレンも「なんだろう、背中がぞわぞわする。魔物っていうより、もっと“何か”……」と小声。
モモンも「ぷるぷるっ」と普段と違う震え方で、レイルの腕にしがみつく。
――その時、森の奥の茂みで、一瞬、黒い影が音もなく横切る。
レイルの背筋が凍るような寒気に包まれる。
(……何だ、あの気配。普通の魔物と違う。本能が“危険”だと叫んでいる――)
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◆臨戦と静寂、そして決意
「来る……!」
レイルはスリングを握り、ミルとモモンも臨戦態勢。
リシェルとカレンも後ろで身構える。
だが影は森のさらに奥へと消えていった。
しばし誰もが無言で呼吸を整える。
「今の……ただの魔物じゃない」
リシェルが眉をひそめる。
「でも、行くしかないよね」
カレンが小さく息を吐き、
レイルは仲間たちに頷いてみせた。
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◆レイルの懐事情(第34話終了時点)
•前回所持金:2,750ルム
•今回の消耗品・食費・保存食・消毒薬など購入:−50ルム
•現在所持金:2,700ルム
•目標装備:「銀糸の通い衣」3,000ルム(次の報酬までお預け)
パーティー制度・登録の利点・世界設定
•ギルドでは一定の実績や信頼を持つ冒険者は「パーティー」として公式登録できる。
•パーティー登録の利点:
・信頼度がアップし、より難度や報酬の高い依頼を選べる
・専用依頼や特別ボーナスが発生することも
・ギルド内での情報共有、保険や生活支援制度も受けやすくなる
・メンバーの昇級査定や表彰などで有利に
•登録の際はパーティー名が必要で、名声や評判もじわじわ広まっていく
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•「銀糸の通い衣」はテイマーや補助職に人気の古工房製。
・軽量で動きやすく、魔法の加護・癒しを通しやすい独特な編み方。
・地味だが堅牢、草木色で隠密性が高く、パッドなど工夫も随所に。




