第20話(前編) 黒影狐、夜を裂く
──夜のガラン村。
数日前から家畜の被害が急増し、村のあちこちで「黒い影を見た」という噂が広がっていた。
「あの森の奥には、昔から瘴気が溜まりやすい――。
何年かに一度、瘴気に呑まれた魔獣が“黒影”に変わることがある」
と、鍛冶屋ドロックが解説する。
村の井戸や小屋周辺の異変、最近の討伐依頼で魔獣が荒らされたこと――
それらが積み重なり、瘴気が村の周囲に濃くなったため、“黒影狐”が現れたとギルドで分析された。
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ギルド支部には、村人たちが不安げな顔で詰めかける。
カティアは必死に依頼や情報をまとめる。
「村の防衛隊だけじゃ足りません! 本格的な討伐隊を組みましょう!」
カティアの呼びかけに、ギルド員や冒険者たちが次々と立ち上がる。
ベルトン(元Cランク・現Dランク冒険者)は「俺がいなきゃ始まらねえだろ」と強引に前に出る。
その隣で、見栄えのいい装備をつけたライバル冒険者数人も肩をそびやかす。
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ライナやレイルも現場へ急ぐ。
レイル(Fランク・テイマー)は、
「……今回こそ絶対に、逃がさない」
ミル、モモンと目を合わせた。
エマは宿屋から温かいスープと甘い干し果実の包みを用意し、
「寒いから、これで少しでも元気を出してね」とそっとレイルに渡す。
「エマ、ありがとう。必ず無事で帰るよ」
ドロックは鍛冶場から手斧や防具を貸し出し、
村人たちは焚き火を囲んで、夜通し警戒を続けた。
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討伐隊はギルド内で作戦会議を開く。
「森の西端に足跡が集中してる。仲魔たちと索敵して、挟み撃ちにしよう」
レイルが地図に印をつける。
カティアも情報整理と伝達で討伐隊の要となって動く。
エマは現場には行けないが、
「レイルさんなら大丈夫」と胸の内で祈っていた。
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夜の森は冷たい霧が立ち込め、足元さえ見えない。
ミルが気配を察知し、「ここ、強い匂い!」と知らせる。
モモンも「ぷしゅー」と地を這う。
「来るぞ――!」
木々の間に、真っ黒な影――黒影狐が滑るように現れる。
「ミル、右から回り込め! モモン、足を止めろ!」
討伐隊は一斉に動き出すが、
狐は素早く闇の中を駆け抜け、ピンチに陥る仲間も現れる。
ベルトン(元Cランク・現Dランク)が手柄を狙って前に出て、他の冒険者たちと小競り合いを始める。
村の緊張、討伐隊の混乱――
そして、闇の中でレイル(Fランク)たちが“本物の脅威”と向き合う一夜が始まった。
(つづく)
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◆レイルの財布事情(20話前編終了時点)
・前回所持金:2599ルム
・支出:討伐隊装備レンタル費、保存食購入(−27ルム)
・報酬:なし(成功時に加算予定)
・現在所持金:2572ルム




