第五十七章 樹海
青木ヶ原樹海には一回言ったことあるよ。
近くにあった事務所でエリスとダイアナとケイシー、富永と炭田は動きやすく目ただない服装に着替える。
全員、深い緑色のリックサックを背負うと青木ヶ原樹海へ。
取引現場は既に掴んでいる。
着ているスーツのステルス機能をONして、エリスたちは他人に姿を見えないようして樹海の中を進む。
伸び放題の枝や根が行く手を塞ぐが、訓練を重ねているエリスたちの歩行の邪魔にはならない。
「そう言えば青木ヶ原樹海って、心霊スポットたって噂があるよね」
何気なくエリスの言った話にケイシーがピクっと反応したことに誰も気か付かず。
「ああ、そう言えば稲川淳二の話にもありました。よくご存じで」
先頭を歩く炭田が答える。前世で稲川淳二の話を聞いたことがあるとは言えないのでエリスは黙っておく。
「ははっ、幽霊なんているはずがないじゃないか~」
「もしかして、怖いの」
ケイシーの声が上ずっているのをダイアナは見逃さなかった。
「そんなわけあるはずないじゃないか、俺たちはエイリアンと戦っているんだぜ」
前へ進んでいるが膝が笑っている。
確かにエイリアンた対する怖さと幽霊に対する怖さは種類が違う。
エリスたちは歩行を止めた。少し開けた場所に人間に擬態したエイリアン三人と犯罪組織の地球人三人がいた。双方ともに観光客を装っている。
もう、ケイシーの膝は笑っていない。顔は戦士の表情になっている。
スーツのステルス機能をONにしているとはいえ、相手はエイリアンなので油断は禁物、慎重に成り行きを観察。
耳に着けている指向性の収音機を人間に擬態したエイリアン三体と犯罪組織の地球人三人に向ける。
擬態したエイリアンの一体がアタッシュケースを開くと、中には赤い粉の入った袋が詰まっていた。見るからに怪しい粉。
地球人の一人が袋を一つ出し、折り畳み式ナイフで破って中の粉を人差し指に着けて嘗めて確認。
手で合図すると、背後に控えていた一人が手していたアタッシュケースを開けて見せた。中身は札束。
お互いニヤリと笑い、代表者同士が握手。取引が成立した様子。
闇取引の確認が取れた、富永がステルス機能をOFFにしたのを合図に全員がステルス機能をOFFにして飛び込む。
あの程度の相手なら、姿を見せても問題なし。
背負っていた深い緑色のリックサックの偽装カバーを剥がし、中にあった折り畳み式のライフルを展開。
「MIBかっ」
犯罪組織の地球人三人は相手の正体に気が付いた途端、富永と炭田に麻酔弾を撃たれて抵抗する前に昏倒。
人間に擬態したエイリアン三体は擬態を解き、蜘蛛を連想させる姿になって襲い掛かってきた。
こいつらが毒を持つエイリアンであることをケイシーは学校の授業で教わって知っている。こいつらの毒を注入されたら、タンパク質を分解されてしまう。
だからこそ、間合いに入られる前にライフルの引き金を引く。
続いてエリスとダイアナがライフルを撃つ。
カップラーメンが食べられるようになるよりも早く、蜘蛛型エイリアン三体を仕留めたエリスとダイアナとケイシー。
犯罪組織三人は意識を取り戻す前に拘束、これは富永と炭田の仕事。
地球人に擬態したエイリアンが持ってきていたアタッシュケース中にあった赤い粉の入った袋。
富永と炭田はプロである、調べるまでもない、赤い粉が何なのか見ただけで解った。
「宇宙芥子だ」
宇宙芥子、昔の特撮番組で出ていたような気がしたが、エリスは詳しくは知らない。
「ブイャチダ星で採れる花から作られる麻薬で、その効果は地球産のものとは比べ物になりません。中毒性も高く、多用すれば自我意識を失って凶暴化する危険な品物です」
「闇市場では高額で取引されるので、それを目当てに密輸したんでしょう」
富永と炭田が説明。
「宇宙芥子はまとめて焼却します」
こんな物はあってはならない、いくら高額で取引されるかと言っても炭田の言う焼却処分するのが一番。
「あの人たちはどうなるんですか」
未だに意識の戻らない犯罪組織三人。前世では地球人だったこともあり、気になる。
「背後関係を調べた後、罪を償わせます。償わせると言っても命までは奪いませんよ」
淡々と語る口調から、富永が犯罪組織三人に嫌悪感を持っていることが窺い知れる。無理もない、地球に住んでいる彼らにとって宇宙芥子を持ち込まれるなんて許せないこと。
こうして、青木ヶ原樹海の任務はあっさりと終了した。
稲川淳二さんの樹海の話は怖い。
樹海では何も無かったけど、日本坂トンネルと富士山スカイラインで奇妙なことがありました。




