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終章 森に溶ける


 歩くという行為は、すでに意志ではなくなっていた。


 集団は一息乱れず、誰も振り返らない。同じ方向を向く影のように、音もなく草原を渡っていく。


 隣を歩くピッピは時折微笑みかけるが、その顔は周囲の「ホーホー」たちと見分けがつかないほど美しく、均一だ。


 ガビは自分の中の何かが、少しずつ薄れていくのを感じていた。


 だが、ふと右手に鋭い痛みが走る。ピッピが、無意識に手を強く握りしめたのだ。


 歩みのリズムがわずかにずれる。


 誰も気づかず、集団は止まらない。ピッピも前を向いたままだ。


 もう一度振り返ると、遠くにかつてのムレが見えた。それはもう場所ではなく、二度と戻れない時間だ。


 ガビは思う。


 あの騒がしい熱が完全に消え去るとき、自分も本当に溶けるのだろう。しかし、その時までは。この痛いほどの握力だけは、決して離さない。


 風の凪いだ静寂の中、二つの影は大きな流れへと吸い込まれていった。



(完)


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