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電脳戦場の白血病魔  作者: 仙葉康大
第四章 戦場にて二人
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第三十七話 「両手」

「どうして?」


 初菜と俺がそろって疑問を口にする。


「どうしてって、ひどいニャあ。初姉と鉄兄のピンチに私が駆けつけニャいわけにはいかニャいのだ」

「でも、あなたはレガルのチームに所属しているはずでしょ」

「そうだぜ。おっさんが助っ人を頼んだけど、レガルは断ったんだ」


 キスシアが何度も頷く。


「でも、私は初姉を、ついでに鉄兄を助けたかった。だから、レガルのチームを脱退して、一個人として助っ人に来たのだ。分かるかニャ」

「分からねえよ。馬鹿」

「攻撃、来ます」


 流架の声。目の前のキスシアに気を取られていて、気づかなかった。すでに再生した銃が銃声を轟かせた。キスシアが振り返り、消えたと思ったら、また銃は全て破壊されていた。発射された弾丸も一つ残らず叩き落されている。


「てニャわけで、さっさとあいつを倒すんだニャ。そしたら、次は鉄兄の病魔。で、皆、ハッピーだニャ」

「そんな単純な」


 俺は言葉を切る。一秒、考える。


「話かもな。よし、それでいこう」


 初菜が首をアホみたいに振っている。


「バカバカ。バカしかいない。今は時間がないから流すけど、キスシア、あとでじっくり話を聞かせてもらうから。覚悟しときなさい」

「初姉、怒ってる?」


 唇に人差し指を当てたまま、上目遣いでキスシアが初音を見上げる。


「別に怒ってはないわよ。むしろ、その、ありがとう」

「初姉、だーいすきっ」


 初菜の首にキスシアがしがみつく。


「だから、攻撃ですってば」

「おい、キスシア、次だ、次」


 俺と流架、男二人がわめく。


「はいはーい」


 慣れた様子でキスシアが銃を全滅させた。


「行くわよ」


 俺と初菜は傷を負った体で走り出す。敵の銃はまだ回復中だ。今なら容易に近づける。アメーバ本体にたどり着いた時、アメーバはもう核以外、残っていない状態だった。キスシアのナイフが万を超える攻撃を与え、敵を削り取っていたのだ。


「この核、硬すぎて、私の攻撃が効かニャい」

「数珠丸恒次」


 初菜が左手に数珠丸を握る。数秒、呼吸を整え、振り下ろした。

 勝負は決まったと思った。数珠丸で斬りさえすれば、核は回復できない。

 初菜が顔を歪めている。刀は核と接しているだけだ。斬れていない。


「おい、大丈夫か」


 返事はない。

 剣が弾かれ、地面に突き刺さった。


 キスシアが再生した銃を破壊するため一瞬、場を離れる。すぐ戻って来て、核の周りに集まり始めた液体をナイフで削いでいく。


「片手じゃ無理」


 初菜は数珠丸を取ろうとしなかった。だから、俺が取った。初菜にも握らせる。


「なら両手でいこう」


 唇を真一文字に結んだ顔で、初菜が深くうなずいた。俺は浅く頷き返す。タイミングを合わせて、数珠丸を振り下ろす。


 核が真っ二つに割れた。拍子抜けするほど、簡単だった。俺は一と二の違いを実感しながら、核が粉々に砕けていくのを見守った。


 やったな、と言おうとしたら、視界が揺れた。口が動かない。数珠丸の副作用? 違う。アバターだけでなく、現実の俺の体もおかしい。揺さぶられる感覚と強い吐き気。血が喉を這い登って来る感覚。意識が飛ぶ。


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