誘拐
本日は晴天。お忍び日和のはずでした。
…なのに何故、こんなことになっているのでしょうか?
こんなこと、とは。
倉庫のような場所に、知らない男性と手足を縛られて転がされていることです。
…何故こうなったのか。少し前に遡ります。
私は庶民の町でとてもとても楽しく買い物をしておりました。
両親と天使たちにはあれがいいかな、これがいいかな、と。
そんな時間を過ごしていると、外が何だか騒がしいのに気付いたのです。
このとき外に出ていなければ何か変わったかもしれませんが、私は出てしまいました。
出た瞬間、1人の男性にぶつかりました。
ぶつかった衝撃で一瞬動きが止まり、そのときに顔が見えたのですが、かなり整った顔立ちだったように思います。
それは置いておいて、謝ろうと口を開くと、言葉が出る前に手を掴まれ、引っ張られてしまったのです。
あぁ、弁解しておきますが、我が家の護衛が無能なわけではありませんよ?
不測の事態に加え、男性がとても足が早かったのです。
私も引きずられるようになっていましたから。
そして、あれやこれやと引きずられていると、いつの間にか路地裏に入り込んでいました。
そこからはお分かりですね?
そこで気絶させられ、今に至るということです。
しかし、あの顔どこかで見たような気がするんですよね…
「起きているのか?」
あら、男性も起きていたようですね。
ずりずりとこちらに近付いてきます。
やはりどこで…?
「はい、先程。」
「そうか…
巻き込んで悪かった。」
「はい、いい迷惑ですわ。
とゆうか、どうして私を引っ張ったんですの?」
「それは…
しっ!誰か来る。」
「よう、兄ちゃん達、起きたか?」
うるさい足音を鳴らしながら1人の男性が来ました。
「あぁ、さっさと家に返して欲しいんだが。」
それで帰れたら楽ですよねー
「それは出来ねぇなー。」
「誘拐、ですか?」
「まぁそういうことだなぁ。」
やっぱりか。それならまぁその内助けは来るだろう。じっとしておくことにしよう。
「まぁ嬢ちゃんに価値はないから殺しちまうかもなぁー。」
とナイフを当てられた。
頬にうっすらピリッとする痛みが走る。
もしかしたら切れてるかもね。
「やめろ、彼女は関係ない。」
あら、庇ってくれた。
「…まぁいい。おれが用があんのはお前だけだからな。薊のご子息さんよぉ。」
薊!?だから顔を見たことがあったのね。
「あぁ、俺のことは好きにすればいい。」
「そんなことっ!」
させないっ、と叫ぼうとしたとき、
ガタガタっと音ともに警察が雪崩れ込んできた。
その後は、両親と天使たちを筆頭に使用人達にも心配された。
しかし私は、薊のご子息のあの言葉が許せなかった。