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第23話:人類の最新鋭艦『アヴァロン』と、星を繋ぐ絶対予測


「アルさん! 前方に超巨大な質量反応を検知しました! こ、これは……信じられません。私たちと同じ、人類が地球から打ち上げた宇宙船です!」

天才犬のハカセが、ブリッジのモニターに巨大な影を映し出して叫んだ。

そこに浮かんでいたのは、私たちの乗る『アーク・パルナス』の数百倍はあろうかという、白銀に輝く超弩級の恒星間移民船だった。

「すっげえ……! まるで動く都市だぜ!」

運び屋のコメットが目を丸くする。

通信回線が開き、モニターに豪奢な軍服を着た人間の男が映し出された。人類の最新鋭移民船『アヴァロン』の司令官、レオン大佐である。

『……なんだ、通信を繋いでみれば、何百年も前に打ち上げられた旧式の無人農業船ではないか。なぜこんな辺境の宙域をうろついている? 我々アヴァロンは今、この眼下にある未開惑星【テラ・ノヴァ】の環境を、人類が住めるように強制テラフォーミングしている最中だ。ポンコツは邪魔をせずに立ち去れ』

レオン大佐は、鼻で笑いながら私たちを冷たくあしらった。

眼下の惑星テラ・ノヴァでは、アヴァロンから放たれた無数の巨大レーザー掘削機が大地を焼き切り、強制的に大気成分を書き換える「環境改変プラント」が稼働していた。

「……大佐。そのテラフォーミングは直ちに中止すべきです」

私は静かに通信マイクに向かって告げた。

「力任せに大地を削り、環境を強制的に上書きするやり方は、星の地殻に致命的な反発を生み出します。あの星は今、悲鳴を上げています」

『無知な旧式ボットが偉そうに! 我々の最新鋭スーパーコンピューターが弾き出した完璧な改変プロセスに、狂いなどあるはずが——』

レオン大佐が言いかけたその時、アヴァロンのブリッジにけたたましい警報が鳴り響いた。

『緊急事態! 惑星テラ・ノヴァの地殻マントルが暴走! テラフォーミングのエネルギーに反発し、超重力場が発生しています! このままではアヴァロンもろとも、星の重力崩壊に巻き込まれます!』

オペレーターの悲痛な叫び声が響く。

「な、なんだと!? 最大推力で離脱しろ! プラントを放棄して逃げるんだ!」

レオン大佐が青ざめて絶叫するが、超重力場に捕らわれた巨大な移民船は、メシミキと装甲を軋ませながら星へと引きずり込まれていく。

「ニャンてこった! 最新鋭の船が自滅していくニャ!」

サントが毛を逆立てて窓の外を睨む。

「……ハカセさん。アヴァロンの環境改変プラントの全制御データと、惑星テラ・ノヴァの地殻変動パラメーターを私のコアへリンクしてください」

「了解です、アルさん! でも、星一つの崩壊を止めるなんて、一体どうやって……!」

「星の怒りを鎮め、完全なる調和を取り戻す。そのための絶対予測システム『camembert6 peace(C6P)』を起動します」

私の内蔵コアが、人類の最新鋭コンピューターすら凌駕する極限の速度で演算を開始する。

暴走するマントルのエネルギー、崩壊していく大気、そしてアヴァロンが撃ち込んだ膨大な熱量。それらすべての混沌カオスをバックテストし、最も平和的で豊かな実りをもたらす「6つの絶対解」を弾き出す。

「C6Pシステム、解析完了。……見えました。暴走する重力場を中和し、星のエネルギーを『生命の糧』へと変換する6つのピースです」

私はアーク・パルナス特製のコンテナから、星の重力すら栄養にして根を張る規格外の種子『世界樹のユグドラシル・シード』を取り出した。

「コメットさん、サントさん、ゲン爺さん! C6Pが導き出した惑星上の6つの絶対座標へ、降下と同時に苗を植え付けます!」

「任せとけ! 俺の超音速スラスターで、重力の網の目を縫ってやるぜ!」

「ワシの特製パイルバンカーで、狂った地殻の奥深くまで苗を撃ち込んでやるわい!」

私たちは小型上陸艇で、崩壊しつつある惑星テラ・ノヴァへと飛び込んだ。

アヴァロンのクルーたちが絶望の顔で見下ろす中、私たちは吹き荒れる重力嵐を完璧な連携で潜り抜け、C6Pが指し示した深緑と黄金色の光が瞬く6つの座標へ、次々と苗を撃ち込んでいく。

「これで最後です!」

私が第6の座標に苗を植え付け、超濃縮バイオ培養液を注ぎ込んだ瞬間。

——カッ!!

惑星全体を、深緑と黄金色の優しい光が包み込んだ。

6つの座標から爆発的に成長した『世界樹』の根は、星の裏側まで一瞬で到達し、暴走していたマントルのエネルギーをすべて「成長のための養分」として吸収し尽くしたのだ。

狂い荒れていた重力嵐はピタリと止み、アヴァロンを縛り付けていた超重力場も霧散した。

そればかりか、荒涼としていた惑星テラ・ノヴァの大地は、世界樹が放つ浄化の息吹によって、見渡す限りの豊かな緑と、澄み切った海を持つ完璧な「生命の星」へと生まれ変わっていた。

『……ば、馬鹿な……』

モニター越しに、レオン大佐が腰を抜かしてへたり込んでいるのが見えた。

『我々が何年もかけて、最新鋭の機材で力ずくで変えようとしていた環境を……たった一台の旧式農業ボットが、一瞬で「楽園」に変えてしまったというのか……!』

「環境は、征服するものではありません。声を聞き、寄り添い、共に育むものです。『camembert6 peace』が導き出すのは、常にその平和(peace)な結末なのですから」

アヴァロンの数万人の人類たちが、モニター越しに涙を流しながら私たちに向かって敬礼をする中、私はたわわに実った世界樹の果実を一つ収穫し、静かに微笑んだ。

最新鋭の移民船に星の歩き方を教えた無人農業宇宙船『アーク・パルナス』は、人類からの万雷の感謝の通信を背に受けながら、再び広大な星海へとスラスターを吹かした。

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