第9話
「なぁ、現実と空想の違いってなんだと思う?!」
「は?なんスか先輩、急にキモいすね?」
緊急走行の制限速度をぶっち切りながら、交差点の歩行者を接触寸前でかわす。懸賞金とアルコールでハイになった先輩は、尊法遵守の精神を交番に置き忘れていた。
「ゆーたらよ、ガンダムだって今の技術じゃ造れねぇだろ?!」
「そっすね、その話長そうですか?」
TURU-TAN見るの忙しいんすけどと叫ぶ後輩を無視して、先輩は話し続ける。
「だったらそいつに掛けられた賞金額だって、現実的じゃないって意味で一緒だろが!俺の生涯収入の何回分だよ!」
「はぁ?さっきからなに言って…あっ。
バッカオメー?!ナンツメタイノクッテンオラー!?」
鼻の下を白い粉まみれにしながら、歩道に乗り上げても速度を落とさない先輩から、あわててハンドルを奪うと、ちょうどそのとき配信中の映像では、半グレたちがビルからでて、トラックに詰め込まれる最中だった。そして配信が終了した。
「だからこれはゆめなんだ、げんじつじゃねえ!あと100キロはだせるね!ところでおまえだれけ?」
「だからパトの座席に冷たいの隠すなっつたろがオラー!!!」
どうにか目的地のビルが見えてくると、ちょうど大型バンとトラックが出発したところだった。
決してアクセルを緩めようとしない先輩に後輩は怒鳴りながら、トラックに向けて射撃準備をする。
「トラックと並走しろよ!ちょっとでもぶつけたらオメースッゾメェー!」
「わかった、こうだろ」
更に加速してトラックの進路先へ踊り出ると、先輩は急に素面の声で号令をかけた。
「目標後方のトラック前輪、距離10メートル、連射指命、撃てぇ!」
「急にコエーわ、なんなんオメー…」
強烈なマズルフラッシュと轟音が、市街地を戦場に塗り替える。戦後最大級の不祥事がひとつ生まれた瞬間だった。




