第2話
界隈では、人喰い鬼とまで称された鬼島が、上下も弁えられそうにない半グレ風のチンピラに、今や廃業寸前まで追い込まれそうになっている。その原因はやはり、鬼島自身の野心にあった。
百木組の組長である百木太郎は、シャブを忌み嫌っている。かつて最愛の妻を亡くした、その原因が薬物だった。少しでもシャブを弄ろうとすれば、たとえ組内であっても、絶縁すらあった。
しかし百木は、仁侠なぞ糞喰らえというタチだった。暴力こそが全てと、若い頃は無茶苦茶をしていた。そのツケは現在の、周囲の組との敵対的な関係で現れていた。
まるでひとでなしの百木だったが、孫が出来たことで一転した。急に義理人情を説いて回る、侠客きどりとなった。いわゆるヤキが回ったのだ。
ただでさえヤクザに厳しい時代に、いつまでも引退せず、アレやコレやと稼業に口を出す百木に、あがり目の見えない若頭と中堅たちは、業を煮やしていた。
そこに鬼島は目をつけた。百木の若頭を唆して、でっち上げの証拠を県警にタレコミ、百木を逮捕させた。更に野心の強い中堅に、組長代行となった若頭へ異を唱えさせた。
なに食わぬ顔で、仲裁役にしゃしゃり出た鬼島は、中堅と七分の兄弟として盃を交わして、百木組の跡目として推した。
こうして真っ二つに割れた百木組に、さらに混乱を招いたのは、嫌疑不十分で釈放された、百木組長自身だった。
釈放の出迎えに来た若頭を、その場で殴打して、警官の静止を振り切り逃走。そのまま全国指名手配となった身で、跡目を自称する中堅を絶縁した。
鬼島も最初は、腹を抱えて嗤っていたが、数日後に、単身乗り込んできた百木に、度肝を抜かれた。
突如窓から飛び込んできた百木に、長ドスで組員を膾にされたのだ。
県警が厳重警戒するなかで、鬼島は組員には銃を持つなと徹底していたが、百木の恐さを知っていた兄弟分の中堅は、無断で銃を持っていた。長ドスを構える百木に、中堅が半狂乱で乱射した。
機動隊が突入する前に、これで正当防衛だと笑う血まみれの百木が、鬼島の目の前で、中堅まで膾にしてしまった。
1週間後に、緊急逮捕された百木が、搬送先の警察病院で脱走したとのニュースを見た時は、鬼島の恐怖心は頂点に達していた。
酒の力で寝る生活は、鬼島の正常な判断力を奪い、周囲の護衛に当たり散らす様は、組員からの人望を失っていくには十分だった。
ついには護衛を外に置いて、バーに入ると、派手な金髪と腕に蛇の刺青のある、いかにも鬼島好みのオンナを見つけた。
声をかけようとする前に、オンナの方から言い寄られると、久々に気を良くした鬼島は、しこたまに泥酔してしまった。
最後にオンナから口移しで酒を飲むと、急に眠気で意識が遠のいた。
そのまま撮影会場へと、拉致されてしまったのだった。




