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そろそろ成長期を呼び起こそう

 


「憂?」


「――んぅ?」


「えっと……ね」


「――うん」


「先に……」


 目の前に座る憂に言ってから、ベッドに目線を。


「うん――」


 ……伝わった。ゆっくりで話が進まないのにスムーズな意思の伝達。ある意味、不思議なコミュニケーションなんだろうね。


「おさき――」


 ごそごそ。

 私のベッドにごろりん。掛け布団を掛けてあげたら「わ――」って、くぐもった声。口にまで掛けちゃったから。

 だから布団を下げてあげて修正。


「いいにおい――」


「………………」


 何度言われてもビミョーなひと言。なんて言うんだろうね。そう言われても嬉しいワケじゃないって言うか……。

 言った本人は、ほんのちょっと赤くなってて、やっぱり褒めてくれてるんだろうな……って思うケド。


 それに……。


「半分は……憂の……」


 香りだよ? 2日に1度は一緒に寝てるんだから。

 憂の部屋でだったり、私の部屋でだったり。


 ……あれ? 4分の1かな?


「――――」


 伝わってるし。不満そうな仏頂面。作りがいいからキレイに見えるんだけどさ。

 そんな顔した憂の横に腰掛ける。枕の横。憂の顔の向きが私のお尻に。


「――――」


「…………」


 そのまま憂を見てたら目が合った。目が合うと慌てて逸らした。一切、進展なし。もう、これは奇跡と言っても良いんじゃないでしょうか?

 なーんにもないよ? 2人とも18歳なのになーんにもない。憂は相変わらずで私に触れたくても触れられない。受け身ばっかりの憂ちゃん。


 ……慣れたけど。


 悲しいことですけどね!


 だからスマホを開いて、操作開始。ここでエッチな動画でも見せてあげればどんな反応するんだろうね? しないケド。


「あ――」


 うん。憂も見たよね? 私もご一緒させて貰った……っていうか、私が行きたいって最初に言い出したんだけどね。


「可愛いよね?」


 憂は、じぃぃ……って、私のスマホに見入って……。頬がほころんだ。


「うん――。かわいい――」


 この前、お邪魔した幼稚舎での園児のお遊戯の動画。

 憂はこの蓼の花自治区の象徴だから、訪問してみたら大歓迎。半年くらい前から何度も何度もお邪魔して、ちっちゃくて可愛い子どもたちに癒やされています。


 高校生の世界は駆け引き激しいから。

 まだ大人の人から見ると子どもなのに、忖度とか。私たちに気に入られたらそれだけでこれから先、出世コースに乗れるかもー……みたいな?


 忖度の使い方、あってるよね?


 いいや。日記読んだらその辺りのことも出てくるよね。


 その点、千晶なんてすっごく偉い。いっぱいあったお誘いをぜーんぶお断り。遂に新設された大学の医学部に一発合格。その試験の直前とかピリピリしてて怖いくらいだったなー。


「――千穂?」


「ん?」


 あ。動画再生終わってた。

 じゃあ、始めるよ?


「入籍……したら……ね?」


「――うん」


 入籍って単語は、意外とあっさり通ったんだよね。

 これは憂も結婚のことを考えてくれてた証拠だったりするから、嬉しかったり……。それでも同性婚OKなのは20歳からだから、もうちょっと時間あるんだけどね。


「子ども」


「――――――うん」


 赤くなった。

 私のベッドで布団被って顔だけ出てる、そのちっちゃい顔。


「やっぱり……」


「――――」


 あ。目、逸らしちゃった。相変わらず、こっちのほうの話は苦手だね。

 でも、やめてあげない。

 待つ時間は終わったんだよ? 今度は私の番。ずっと温めてたアイディアを実行開始。


「たくさん……欲しいよね?」


 その為には、憂が子どもが欲しいって思ってくれないと……ね? 私じゃ正直、厳しいんだ。きっと帝王切開になるから。その帝王切開も人によっては何度でも可能なんだけど、私の場合は2回が限度だろうって蔵迫先生のお達し。悪ければ1回だけ。

 研究の進んでる二母性胚だとか、精子の提供を受けるか……とか、まだだけどね。私たちが選べるように、法整備もどんどん進めてくれてるんだけど、その前に。


「――うん」


 憂が女性として成長してくれないと。

 いつまでも二次成長期中の少女のままなのは、憂本人がややこしい気持ちのままだってこと。

 憂の中で『自分が子どもを産む』って選択肢は順位が低いんだと思う。


 ……仕方ないと思うんだけどね。その辺は元男子の苦しみ。


 だから行動を起こしてくれない憂に刷り込みを開始。子ども可愛い! 産みたい! 千穂が難しいならそのぶん、自分が! ……って思ってくれたら。


 きっと、自分で止めちゃってる成長が進み始めるんだよ。


「私……」


「――うぅ」


 言いたいことは解ってくれてるんだよね。最近、よくこの話してるし。蓼園総合病院医師軍団もみんな勧めてくれたしね。憂さんの成長が止まったままってのは、やっぱり良くないって。


「夢。捨ててないよ?」


 お父さんに刷り込まれてたって言っても、やっぱりお母さんの願いだって叶えてあげたいし、私にとっても夢なんだから。


「――――」


 出たな。くちびる。にゅーって。押してあげないよ?


「想像して?」


 口唇を突き出したまま、ちょっと俯いて上目遣いに。


 ……私には通用しません。

 成長しようよ。このままだと最悪、私だけ成長……って言うか、老化していくかもしんないんだよ?


「憂と……私の……子ども……」


 もぞもぞ。手が出てきた。布団の上のほうを掴んで……。その手を握ってストップ。隠れたら嫌。


「絶対、可愛いよ?」


 はい。間違いないです。世界で1番可愛い子ども。親だからとかじゃなくて、間違いなく。


「欲しくない?」


「――ほしい」


「ほら。そんな……可愛い子……たくさん……」


 憂って子ども好きだからね。囲まれたいよね? 夢を共有して欲しいんだよ?

 身長はどうやってもこのままみたいだから、憂も帝王切開になっちゃうんだろうけど……。それでも女の子から女性になっておかないと……ね?


 この辺の説明、難しいなー。

 代理出産とかの選択肢もあるんだけど……。


 先生たちに任せないといけない部分もあるよね。それは卒業してからって約束なんだけど……。


 あ。

 目がトロンとしてきた。頑張って聞いてくれたね。ありがと。


 私が願望押し付けてるみたいだけど、憂も眠いのこらえてしっかり聞いてくれてるってことは、真剣だってこと。

 これから先、絶対に外せない問題だし。


 ……ごめんね。


 実際のところは、憂に生理が来てからの話。止まった成長を再始動させて、それから考えようね。私としては子どもに囲まれた生活がいいんだけど……。


 まぶた、下がってきた……。


 落ちた。

 可愛い寝顔の出来上がり。ながーい睫毛。老化の前に成長してないんだから、子どもの寝顔そのもの。

 このまま20年とか30年とか経った時、老化してるのかどうかは不明。マウスでの実験だと老化のペースは極めて遅いって……。

 でも、憂の場合はユウアルファを一次生産してる唯一の生命体だから不老かもしれない。もしもね? 不老だったとしたら子どもたちが追い抜いていっちゃうんだよ? 渡辺先生が言ってる100年以上あとの脳再生の完了。そこがきっとアルファの生産終了のタイミングだって。その時、私も子どもも死んじゃってるんだよ? 憂はそれでいいの? 寂しくならない?


 ……子どもがユウアルファ持って生まれるかもしれないんだけどさ。

 そこは置いといて。


 憂は私がずっと一緒に居られるとか思ってる。研究次第ではそうなるかもしれないけど……。

 でも、それってリスクだよ?

 将来……って言うより、未来だね。しっかり未来のこと考えよ?


 今の憂は、私が居ればいいと思ってる。だから子どもには、ちょっと消極的。私の希望は叶えたいって思ってくれてるみたいだけど。


 ……そこに付け込んでの作戦。憂が本気で願ってくれた時、何かが変わるんだから。


 だから……ね?


 私もずっと一緒に居てあげたいし、一緒に居たいけど、無理の可能性のほうが高いんだからさ。

 だから、やめてあげない。憂がこの話を嫌がってても……ね。



 ……さて……っと。憂も寝ちゃったし。


 日記。読み返してみようね。書くばっかりで読んでないから。

 憂と何したかとか色々思い出して、私もいつまでも憂を想っていないと……ね?










 さて。

 これでようやく過去語りを進められる準備が整いました。

 まもなくハロウィンですね。


 昨年、めっちゃ書きたくて断念した部分ですw


 書きたい時に書きたい話を書けるって素晴らしい!

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