ビストラ市防衛 報酬交渉
ブックマーク100件到達!
昨日のPVが再び1000を大きく突破しました!
500,000字も突破して、色々とメモリアルな日になりました!
ここまで読んで下さった方々に感謝で一杯です。
ありがとうございます!
ビストラ市南 簡易陣地
「広坪様、改めてご挨拶に参りました」
俺達が出迎えると、ガレストさんが挨拶をしてきた。
今回来た一団は、朝と同程度の数だが、明らかに身形の良い人間が多い。
そして、気になる人物が一人。
「お初にお目にかかる。私はこの街を治めるタージル・フォン・ビエランテ準男爵が娘、アクエル・フォン・ビエランテ。父が倒れて指揮ができないので、私が指揮を執っております。今朝は忙しい時に呼び出すような真似をしてしまい、申し訳ありません。改めて謝罪いたします」
当主は倒れてしまっていたのか。
そう言って、頭を下げてきたのは、ガレストさんが連れてきた一団で、俺が気になった人だ。
鎧を着ているが、妙齢の女性で、美人だ。
美人だから気になったと言う訳では無い。
男が多い中で、専属と思われる女性の護衛を四人連れて、一番豪華な鎧を装着していれば、嫌でも目立つ。
ただ、飾りの鎧というわけでは無く、明らかに実戦で使用されたと思われる傷も多少あり、雰囲気もカティ程では無いが、武人の雰囲気があった。
明らかに戦う女性だ。
「頭をお上げください。朝の事は俺に非がありました。俺は広坪 土倉、自分は人との会話が苦手でして、特に貴族の様な方々との話は駄目でしょう。貴族の方々とは、あまり良いことが無かったので、反射的に無礼な態度をとってしまいました。こちらこそ謝罪させていただきます。申し訳ありませんでした」
「そう言えば、前子爵と争いがありましたね……」
「はい。ですので、これからの事は、こちらのオシホに全てを任せますので、オシホと防衛に関して話し合って下さい。メイドの格好をしてますが、最も信頼できる部下で、全ての決定権を渡してあるります。俺は、これ以上の失言な無いように黙ります」
俺が下がり、オシホ様が前に出る。
オシホ様をオシホと呼び捨てにしたが、これは事前に指示された行動なので、なんの問題も無い。
「ワシがオシホじゃ。全権を委任されておる。簡易陣地の中に案内したいが、菜かではゴーレムの修理をしておるので、ここで、我々の先制攻撃攻撃の話をしたいが構わぬか?」
多少の困惑の色が見えたが、了承はされた。
「まず、オーク50,000、これの偵察を行った。我々の印象としては、数が増えただけで、通常のオークの編成じゃったが、一つ気になる点があったのじゃ」
「一つよろしいだろうか?」
オシホ様が説明をしていると、ガレストさん達と共に来ていた兵士の一人が質問してきた。
格好から隊長クラスと分かる。
「なんじゃ?」
「通常の編成とは、どの様な意味でしょうか?」
「ん?どうもこうも、10,000程の前衛が三つに、20,000の本隊といった編成となり、連携をとってくるという意味じゃ。これは聖堂院を攻めていたオークに見られた編成と同じじゃな。これくらいは、聖堂院から撤退した聖堂教国の者達から報告が来ておろう。聖堂院の時は更に別動隊5,000が居ったから、こちらは数による力押しが想定されるな。オークの数の割りに、オークジェネラルの数が少なそうじゃったし、まず間違いなく数で押してくるじゃろう」
「その様な報告はありませんでした。オークの群れに襲われただけだと聞いています」
答えたのはアクエルさんだった。
俺達の側としては、オーク襲撃の情報と共に、敵の動きを伝えていたと判断したのだが、下手をすると、王国の侵攻軍は、オークに組織的な統率があることを知らなかった可能性さえあるのか。
「そうか。こちらからも情報を送るべきじゃった。すまぬ」
「俺からも謝罪します。申し訳ありません」
黙っているとは言ったものの、オシホ様だけに謝罪させる訳にはいかないので、俺も謝る。
可能性を考慮しなかったのは、俺も同じであるのだから。
「いえ、救援に来て頂けただけでも有り難いです。どうぞ話を続けて下さい」
「承知した。オークの群れについて、我々が気になった点じゃが、……ハイオークは知っておるか?」
「はい。オークの上位個体と聞いています」
「うむ。その通りじゃ。オークに比べ、二回りほど大きく、肌が黒くなっており、力もオークジェネラル並に強い。だが、知性はオークより少しマシな程度じゃな。そして、気になったのは、そのハイオークのみの部隊があった事じゃ。ハイオークは、オークジェネラルの護衛の様に配置されているだけだったのが、それが5,000の部隊として、敵本隊に配置されておった」
「それは……」
事態の悪さに、アクエルさんが、思わずといった感じで言葉を漏らす。
「そうじゃ。我々も驚異と判断し、先程の襲撃で優先的に狙ったのじゃ。結果としては、ハイオークに限って言えば半数以上を倒せたハズじゃ」
「そんなに倒せたのですか」
「まだ2,000以上は残っている以上、油断はできぬぞ?それに、他のオークだけでも、この街には驚異じゃ。あの防壁では永くは持つまい」
「……確かにその通りです。ですので、市街地戦を想定した闘いの準備を終えたいます。なので、皆様も中での戦いを――」
「待つのじゃ。我々は、オークを街にいれる津守は無い」
アクエルさんの言葉をオシホ様が遮る。
アクエルさんの言葉は、驚きだった。
避難民で街が一杯なのに、市街地戦をしたら被害はかなりのものになる。
人的な損害は勿論、建物や物資的にも被害は大きくなる。
だが、そうせざるを得ないという事なのか。
「我々は、先程の攻撃でハイオーク3,000近に、オークを10,000以上とオークジェネラル1を倒したのじゃ。こちらには秘策もある。市街地戦をする必要は無いのじゃ」
「そんなに……倒されていたのですか?」
アクエルさんが、俺達が倒してきた数を知って驚く。
「そうじゃ。こちらの計算では、そちらが協力してさえくれれば、そちらに被害は出ずに、今日中にオークを殲滅てきるのじゃ。どうする?」
「……そんな夢みたいな事が可能なのでしょうか?」
「我々の計算上はできるハズじゃ。じゃが、心配なら、我々のみでも行動は可能じゃ。失敗しても、そちらは被害無くオークを減らせるのじゃ。悪くはあるまい」
「ですが……」
「こちらで全て倒しても、魔石の半分は渡そう。これでどうじゃ?」
「いえ、そうでは無く、貴方方にばかり負担を強いてはこちらの立つ瀬がありません。我々からも兵士を出します」
「悪いが、遠慮願おう。外は我々だけで対応する」
「アクエル様が善意で申し出たのものを!」
「待ちなさい!理由を尋ねてもいいですか?」
アクエルさんの申し出をオシホ様が断ると、兵士の一人が激昂し、それをアクエルさんが抑えて、理由を尋ねて来た。
「無論じゃ。我々は、切り札、あまり外部の者には知られたくない物を使うのじゃ。外部の者は近寄らせたくは無い。今は協力関係じゃが、いずれ敵対する可能性もあるのじゃし、手札は見られたくは無いな。それに、我々は人間との連携に慣れては居らぬ。兵を出されても、連携が出来ぬでは意味が無い。これで良いか?」
「……そうですね。王国の命令があれば、敵対の可能性はあります。前子爵の時も兵士の提供をしましたし、懸念は尤もです。こうして救援に来ていただいて、敵を排除してくださると言うなら、それに従いましょう」
「ですが、お嬢様……」
「分かっています。……報酬ですが、街は避難民の受け入れやオーク対策で余裕がありません。私で済ませて頂く事はできませんか?私は成人して三年経ちますが、生娘です。精一杯尽くしますし、どの様な扱いを受けても構いません」
俺は、アクエルさんの言葉に驚く。
そうか、報酬の事を気にして協力しようとしてたのか。
俺達だけで倒せば、それなりの報酬を出さなければならなくなる。
お金は避難民の受け入れやにも使っただろうし、復興にもかなりの額が必要だろう。
だから、自分を対価にしたいと申し出たのか。
……いや、不作の対処にもお金を使っており、更に余裕が無いのかも知れない。
ガレストさんは、俺達から食糧を買う前から、食糧を村に売っていた。
この食糧はどこから来たのか。
街の備蓄を放出したか、どこかから無理をして買ったか、なのだろう。
確認はとれないが、彼女を対価に受け取る訳にはいかない。
「申し訳無いが、貴女を対価に受けとる事はできません」
オシホ様が俺に顔を向けたので、俺が答える。
「貴女は、貴族の関係者です。なので受け取れません」
「しかし、貴方はアストラーデの一家を囲っているのでしょう?私は家族と縁を切って、奴隷としてでも貴方に仕えても良いのです。対価を私だけにしていただけませんか?」
アクエルさんの口から、ルティとマリーの家名が出た。
「……何故アストラーデの事を?」
「私はマリーディアとは親しかったのです。貴族の令嬢で武を嗜む者はあまり多くはありませんから、パーティー等で自然と仲良くなったのです。管轄が違い、マリーも私にはあまり家の事を話してはくれませんでしたので、苦境は後から知りましたが、居なくなったという話を聞いて、行方を探しました。今は広坪様の元に居ますよね?」
「そうでしたか。確かにマリーは俺の元に居ます。今は第三婦人として、俺の子を身籠っているので、拠点で静かに暮らしています」
「……それは、おめでたい、ことなのでしょうか?」
「少なくとも、マリーは望んで俺の子を孕みました」
「そうですか。でしたら、私が第四婦人になっても構いませんよね?」
「いえ、第四婦人は先日出来ました。それに、アクエルさんを妻には娶れません。貴族の方は遠慮していますので」
「マリーも騎士爵とは言え、貴族ですよ?」
「マリー達は、追われる形で俺の元に来ていますし、信用し愛したので妻になってもらいました。ですが、貴女の場合は、他からの干渉も多くなりそうですし、信用するには時間が無さすぎます」
「……ですが、そうなると払える報酬がありません。私を貰って下さい」
「オークの魔石半分で構いません。後は、ガレストさんを始め、俺達を相手にする商人の妨害をできるだけしないで頂く事、これだけで良いです」
「オークの魔石は広坪様達が倒しは分は、広坪様達の物です。なので、対価にはできません。ガレスト達の活動は私達の大きな利益になっているので、妨害をするつもりは無いので、報酬にはなり得ません。やはり私を報酬にしていただけませんか?」
「協同で撃破した事にしたいので、魔石は半分だけ貰いますし、ガレストさん達、商人の妨害をしないと正式な文章にしていただければ、こちらは安心できるので、それで報酬には十分です。足りないなら、家畜の購入を手伝って下さい。詳細はガレストさんが知っています。代価はお金を貰うお金をそれの代金にしても構いません。相場の二倍~十倍でもかまいません」
「……分かりました。今はそれで納得します。一度マリーと会いたいのですが、それは、聖堂院に行けば会うことは可能ですか?」
「来月末ぐらいなら安定期に入ると思うので、それ以降なら可能ではありますが、マリーの意思を確認しなければ返答しかねます」
「それで構わないので、是非お願いします」
「承知しました。ですが、場合によっては、こちらの指示に従って、何処か分からない場所に来てもらう事もあり得ます。追跡を避けるために、検査などもあるかも知れませんので、予め覚悟はしておいて下さい」
この言葉で、俺達の拠点が聖堂院以外にあることが分かってしまうが、今更な気もするので、構わない事にする。
「……承知いましました」
「では、作戦の話に入りましょう」
この後は、作戦の詳細について話した。
無論隠したい事は隠し、作戦の経過や成功や失敗の判断基準などを話し、最低限の情報共有はした。
ゴーレムの修理も終わり、ドライからオーク接近の知らせもあったので、俺達はオークとビストラ市の間の街道に展開した。




