オリュンポス山脱出と千年勇者
俺の交渉を聞いたはずのスキルテイカーは、こーほー、と慎重に息を吐くと、あっさりと言い放った。
「ふん、貴様のスキルなど欲しくもないわ……!」
あれーッ? ちょっと失敗したか?
交渉は上手くいかなかったようだったが、スキルテイカーの行動は早かった。
彼は大きく息を吸い込むと、体からめらっと真っ赤な炎を発した。
どうやら火魔法系の特殊スキルだ。
周囲のメタンガスに引火したのか、その炎は一瞬にして爆発のレベルにまで膨らんだ。
黒煙と共に壁が破壊され、スキルテイカーは映画のスタントマンのように転がり出てきた。
「ちょ……あぶねぇ! 俺がぶっ飛ぶ!」
俺は無意識の危機回避が働いたのか、ブラックホールの真上を飛んで反対側の床にしがみつき、難を逃れていた。相変わらず俺の無意識の行動力はパネェ。
ブラックホールの超重力が働いているおかげで、こちらまで延焼することはなかった。気流が穴を中心に下に向かっている。気圧が高くなると燃焼反応が起きにくいんだ。
爆発のど真ん中にいたスキルテイカーは、さすがはタフなだけが売りの男だ。もうもうと黒煙をまとったまま、俺のところまで駆け寄ってくる。
「ぐっ……スキルテイカーッ! 助けてくれッ!」
建材がめきっと音を立てて傾き、俺がぶら下がっている床が大きく揺れた。
超重力のせいで体がうまく動いてくれない。どんどん地面にむかって落ちてゆく。どうやら空間ごとブラックホールに吸い込まれているのか、すぐ下の階層が微妙に歪み始めていた。
スキルテイカーは俺に見向きもせず、大きく跳躍すると、8階分塔を駆け登り、冥王星の風を吹き込んでくる邪悪な召喚魔法陣に手を触れた。
ばんっ! という音がして、召喚魔法陣が消えた。
代わりに、BANNED! という文字が空に浮かび上がった。
消えた。
なんだこの技。初めて見る。
いや……どこかで見たような?
上空に躍り上がったスキルテイカーは、そのまま天井を蹴って、俺の真横を通過し、真下のブラックホールへと垂直落下していった。
「お前が何者かは知らんし、その中二臭い名前のスキルなんぞ欲しくもないが……『未来を予見する』そのスキルの方には興味がある!」
あ、やっぱスキル欲しかったんだ。
けどごめん、これ俺のスキルじゃねぇ。
スキルテイカーが漆黒の点に飲み込まれていった瞬間。
ばんっ! という音がして、ぴたり、と超重力も消えた。
空間の異常なゆがみが元通りになり、曲がりくねっていた壁や柱がぴしっと直角になった。一部、捻力が加わってねじ曲がってしまった鉄骨があちこちで傾いでいたが、ほぼ元通りの状態になった。
俺の身体も急に軽くなり、逆に浮かび上がっていくような気分さえした。危ないところだった。
俺は火花が出ないように慎重にツクヨミをつかって体を手繰り寄せ、自力で26階の床へと躍り出た。
まだ痕跡は残っているものの、冥王星の風もブラックホールも消えた。
さすがスキルテイカー、こんな奥の手を持っていたのか。
俺が無意識に倒していたから「奴は四天王のうち最弱」という展開かと思ったが、どうやらそうではなかったらしい。
ひょっとしてスキル持ち相手には最強なんじゃないか。
「スキルテイカー! お前、実はすごかったんだな!」
「ふっ……こーほー、ちょっと一服させてくれ」
1階の大広間には、大量の瓦礫が降り積もっていた。スキルテイカーはそれに埋もれたまま、ポケットからごそごそとタバコとライターを取り出すと、素早く点火した。
「あっ!」
「こーほー、はっ!」
スキルテイカーがライターに点火した瞬間、空気中に残っていたメタンガスが引火した。
召喚師の塔の1階部分にたまっていたガスが一気に爆発し、爆炎が猛然と26階の俺まで迫ってきた。
まともに見ているだけで目が焼けそうな熱さだ。
俺はちょうど侵入してきたときと同じように、ガラス窓を突き破って外に出た。その瞬間、召喚師の塔は凄まじい爆発によって内側から火を吹き、木っ端みじんになった。
ガラガラガラ……。
26階部分から芝生に降り立つと、鎧のアシストによって衝撃が緩和された。
もはや召喚師の塔は瓦礫の塊へと化してしまった。
スキルテイカーが入ったまま崩れ去る塔を、俺はただ見ていることしかできなかった。
「スキルテイカー……! スキルテイカ―――!」
そのとき、塔の外にいたもう1人の四天王が現れた。
ぞっとするような長身。おぞましいほどの美形。
どうやら少々騒がしくしすぎたらしい。騒がしいというかガス爆発はさすがにやりすぎたか。
竜王ミュシャが立っている。……《《立っている。》》
眉間に一本、綺麗なしわを寄せていた。
ドラゴンじみた煙をふー、口の横から吹いて、俺を見下ろしていた。
「吾輩は読書中である」
静かにしろって言いたいんですね。はい分かります。
ひょっと脇の方を見ると、暗黒メイド騎士がガタガタ震えてかしこまっている。
「ミュシャ……さま……どうか……ご慈悲を……」
あ、本気でビビってる。
あのドMの子が本気でビビってる。
やべぇ、これは。
どうやら絶対触れてはならない『竜の逆鱗』に触れてしまった感じか。
そのとき。
召喚師の塔の1階正面に積もっていた瓦礫が、ぼこおっと凄まじい音を立てて吹き飛ばされた。
もうもうと巻き起こる砂埃の中、何者かが倒れた鉄柱を片手で持ち上げているのが見える。
「ふー……あぶないあぶない、マスク外さないと吸えないのすっかり忘れてたぜ。こーほー」
スキルテイカー! こいつ……なんてタフなんだ!
あの爆発の中で一服してきやがった!
ガスマスクを被り直し、何事もなかったかのように外に出てくるスキルテイカー。
竜王ミュシャが不吉なものを見るように彼を見た。
「貴様か……《反魔法の王》」
「こーほー、今の俺はスキルテイカーだ、それ以上でもそれ以下でもない」
「ふん、貴様のような下賤の者が吾輩と同列とはな……鼻持ちならん話だ」
ミュシャは顔をしかめていた。たしかに、ヴェートラーナは魔導師の警視総監だし、マイコフも政治家だし、竜王も王様だけど、スキルテイカーはどうみても庶民派っぽいな。とくにタンクトップを着ているあたりが普通のおっさんっぽいな。
「こーほー、うぬぼれるな、異世界の広さを知れ。お前の実力はおれと同等ということだ、素直に認めるんだな」
「口が過ぎる……王の御前なるぞ」
ビー玉が転がるようにころころ変わっていた竜王ミュシャの瞳の色が、一瞬身もすくむような光を放った
ごうっと凄まじい風が吹いたかと思うと、ミュシャのくわえていた葉巻が根元まで真っ白い灰になり、空に昇っていった。
「口を利くものよ、動物になるか、物質になるか、好きな方を選べ」
全身の筋肉が引き絞られてゆくような肉体構造の変化。美しい顔は爬虫類のような形にめきめきと骨格から歪み、ぞわっと無数の毛が生え、それらは針の強度を持った。
増殖する体毛がより合わさって分厚い鉄板のような鱗を生じ、背中に翼を生む。
恐ろしい双眸だけが、闇夜の凄惨な事件を見下ろす満月のように、ゆるがずじっと相手をにらみ続けている。
もはや体躯は2倍にも3倍にも膨れ上がり、スキルテイカーを見下ろすほどになった。
「ほほぅ、こいつが《竜変化》……いいスキルおぼぉッ!」
尻尾による凄まじい一撃が地面を抉った。
スキルテイカーは一瞬にして塔まで弾き飛ばされ、真っ赤な血をまき散らした。
やばい、放送事故レベルだ。スキルテイカーの血なんてはじめて見た。ていうかあいつ血出るんだ。
ミュシャはその一撃を放った直後、ドラゴンの姿から徐々に人間の姿に戻っていった。
あっけない一撃。もう終わってしまったのか、と思ったが、どうやらまだ戦闘は継続しているらしい。忌々しげに塔の方をにらみつけている。
「……吸い取りおった」
「……くっくっく、吸い取ったぜ」
スキルテイカーのいた辺りから、ドラゴンが現れた。
瓦礫の山を吹き飛ばす鋼の鱗、針の体毛。翼をはためかせてミュシャに吠え掛かっている。
「いいスキルもらったぜ!! ひゃっはぁーッ!」
「ふん……道化の物まねでは越えられぬ王の壁というものを見せてやろう」
対するミュシャも、再びドラゴンに変身した。
肩同士がぶつかり、トラックの衝突事故みたいな衝撃波が発生した。
どちらも同じ力。違いがまるで見分けられない。ドラゴンの最高種ブラックドラゴン。もはやドラゴン同士の頂上決戦だ。
「うおお、か、かっこいい……!」
「小癪……」
片方のドラゴンの鱗が形状変化し、翼のあたりから煙突のような物をにょっきり空に突き出させた。
その煙突は角度を変え、ドラゴンの肩に担がれるような格好になり、スキルテイカーの至近距離から火を吹いた。
あれは37センチ砲塔……ッ! せ、戦艦かこいつ!
翼をはためかせて砲撃を回避したドラゴンは、不気味に笑っていた。
「……ぐふっふっふ、己の肉体を進化させる魔術師がたどり着いた最高魔術《竜変化》、最強の爪、最強の翼、最強の鱗。最強のパーツを組み合わせて生まれた古典的な怪物ドラゴン。そこに近代兵器まで取り入れてくるとは……!」
「ふん、珍しいものを見つけたから拾ってやっただけだ」
「さすが三代目、若いねぇ……言っとくが、先代の『竜』の方がカッコよかったぜ……ッ!」
スキルテイカーの体がぐわっと膨らみ、ぼこぼこに膨らんだ醜い竜へと変化した。
そいつは生物というより、一種の地形かなにかだった。
背中からクリスタルが飛び出し、凄まじい魔力を放出している。鱗の間を常にざわざわと『滝』が流れ、苔むしていた。
自然とまだ完全に分離していないドラゴン……ッ! 古代竜……ッ!
「貴様……いったいいつ先代の竜を……ッ!」
「ふははは、そいつは企業秘密だ……ッ! 道化にできんのは世の中のつらい事を一時忘れさせることだけだぜ、さあ、俺と楽しもう、王様ッ!」
「……不敬罪だ、末代まで呪ってくれるッ!」
山臭いホワイトドラゴンが大自然の代弁みたいな咆哮をあげて、鉄臭いブラックドラゴンが砲塔を数本増やしながら飛び下がった。
……なんてハイレベルな戦いだ。
「奴は四天王の中で最弱」どころじゃない。というか、こんなの俺無意識に倒したのか……。
あまりの強さに固唾をのんで戦いを見守るところだったが、そんなことをしている場合じゃない。俺は隙を見てその場から遠ざかり、森に逃げいった。
暗黒メイド騎士が俺を追うか一瞬迷ったみたいだったが、結局ミュシャの側につくことにしたようだった。
「ミュシャさまー! がんばれー!」
くっそかわいい俺もメイドさん欲しい。
分け入っても分け入っても木ばかりが生えている急峻な山道を駆け下りていくと、耳に小さなささやき声が聞こえた。
「ディップ」
「シレンシズ……ッ!」
見上げると、俺の頭上を枝から枝へとしなやかに飛び回るエルフの姿が見えた。
エルフの女王シレンシズは、触るとふっと消えてしまいそうなか細い人差し指を立てて、言った。
「向こうに仲間がいる、いったん合流しましょう」
さすがシレンシズだ。彼女と森の中にいる限り、そこは安全地帯と化す。
俺は彼女の導きに従い、一直線に道なき道を進んでいった。
やがて山の中腹辺りまで差し掛かると、モンスターたちに葛籠を運ばせているアイスキャットとばったり出くわした。
「あっ! 変態男!」
「あ、アイスキャット」
彼女は俺を見るや、思いっきり悲鳴をあげた。
「ぎゃーっ! 何をやっておるのじゃぁ!」
ふと気が付くと、モンスターたちが俺の足元に散らばっていた。額にアイスキャットの描いた記号があって、みんな彼女のしもべなのが分かった。
ボコボコにやられているじゃないか……いったい誰が! と思ったが、たぶん俺が無意識に反撃して殴ったんだ。すまんすまん。
俺は倒れたモンスターたちを一匹一匹助け起こしながら言った。
「つーかお前、仲間たちと一緒にヴェートラーナ倒しにいかなかったっけ? なんでこっちに来たの」
「な、何を言っておるのじゃ? 下僕どもがだいぶ疲弊しておったし、なにか異常事態が起こっているのに、そのまま突っ込んでいけぬわ!」
ああ、なるほど、何事もなかったら彼女は新しいモンスターを現地調達してゆくことができるのだが、異常事態ならそんな余裕はない。大事を取って様子見をしていても無理ないか。
猫又の尻尾をふりながら、アイスキャットはぷんぷんと頬を膨らませていた。
「ふん、この惑星のモンスターたちが弱すぎるのじゃ! じゃから勇者の誰かを配下にしたかったのに~!」
「抱っこしてほしいならちゃんとお願いしろよ。俺ならいつでもOKだぜ?」
「抱っこではないのじゃ! あとお主はなんか手つきがいやらしいから嫌なのじゃ!」
「ディップキター!」
俺が両手をにぎにぎさせながらアイスキャットに迫っていると、空から大きな声が聞こえた。そちらを見ると、シンギスベリエの鎧が見えた。鎧だけだ。鎧しかみえなかった。俺の顔面は真正面から飛んできた彼女にがっちりホールドされていた。首がべきばきぼきっと嫌な音を立てた。
「シン……ギス……ベリエ!」
「あー、やっぱお前の焼きそばのにおい最高だな、お前抱いてるとお腹すいてきたぞ!」
「俺で食欲を催すなッ!」
顔面をホールドされているところを、「いまじゃー!」と足元からちまちまアイスキャットとしもべたちに叩かれ、俺は比喩でなく天国に連れてゆかれそうになった。
シレンシズの白羽の矢が地面にずどっと突き立って、ようやくみんなが俺から離れた。
精霊を従える女王シレンシズの体が、夜にしか現れないような邪悪な精霊たちをまとっていた。あんまり凶悪すぎてアイスキャットがぶるぶる震えて葛籠の陰に隠れてしまった。
「遊んでいる場合じゃないわ。全員状況報告。それから今後の行動方針を可及的速やかに取りまとめましょう、ディップ、リーダーをお願い」
「えっ、俺が?」
「この場ではあなたしかいないでしょう」
シンギスベリエは俺とシレンシズが一緒に現れたのをみて、不満そうに眼を眇めていた。
「むー、やっぱりディップ、シレンシズといちゃいちゃしてたんだ……」
ちなみに、彼女は俺とシレンシズが2人して山に向かっていったのを見て、気になって後からついてきたらしい。
一周目の時はたしか、シレンシズも仲間たちと一緒にヴェートラーナ戦に向かっていったからな。ちょっとずつ未来が変わってきてるんだ。
こうして、俺と3人の勇者が残った。よく考えると俺以外全員女の子だったが、勇者にはよくあることなのであまり深い事は気にしない。
タブレットで周辺のデータを確認する。俺たち以外の勇者たちの情報を見ると、まったくと言っていいほど反応がなくなっている。
ネームタグの所在ごと惑星アヴァロンから消えている者。ネームタグの反応はあるが生命反応がない者。生命反応が徐々に薄れていく者。
ほぼ壊滅状態……それがオリュンポス山の全体的な現状だった。
「俺が確認してきたところ、召喚師の塔に召喚師は1人もいなかった……」
俺の報告を、3人はじっと聞いていた。
「代わりに四天王の1人、悪の召喚師マイコフがいた……」
「マイコフ……やはり敵の陽動作戦だったのね」
「ああ、奴はすべての異世界のあらゆる惑星に住居を持っている……俺たちの召喚師はそのいずれかに連れ去られたはずだ……」
召喚師を異世界に連れ去られてしまえば、俺たち勇者にはまったく手の出しようがない。
この戦争で生き残った勇者たちも魔王の降伏条件をのむしかなかったはずだ。
だが、手がかりがまるでないわけではない。
マイコフは「この惑星から召喚師連盟を追放することが成功すれば、ここに国を作る」と言っていた。
もし奴の気が変わらなければ、1000年後の世界にはマイコフの作った国か、もしくはその痕跡があるはずだ。
それさえ知ることができれば、奴の尻尾がつかめる。あるいは召喚師たちの行方も分かるかもしれない。
アイスキャットが不安げにぺたん、と耳を垂れ下げていた。
「いったいどうすればいいのじゃ……?」
「いま四天王の勢力がこの山に集中している、ということは、まだ地方に散らばっている召喚師の都市は無事かもしれない……」
俺はタブレットを操作し、世界マップを表示させた。ガラハッド大河を渡った先、マーリン大森林の向こう、モルドレッド台地を指さした。
「第二の都市モルドレッド……ここへ一旦退避しよう」
シレンシズは、神妙な顔つきで俺の顔をじっとのぞいていた。
「どうするの、この山は完全に魔王軍によって包囲されているわ」
「えっ、シレンシズ歩いて山抜ける気なんだ。転移ゲートとか行機があるんじゃん?」
「おそらく無理だろう。マイコフがそんな移動手段を残す手抜かりをするとは思えない……」
俺なら塔の召喚師を連れ去る場合、先にそういった逃げ道は封じておくだろう。
あの塔にはスキルテイカーもいた。あいつはそういった役割を担っていたのかもしれない。
だが、山を囲む敵はいったい何体いるのかさえわからない。ひょっとすると150億の勇者よりも多いんじゃなかろうか。
魔物の群れに包囲されている山の姿を見て、俺は意を決した。
「大魔導ヴェートラーナを討つ……正面突破だ」
衛星の映像から、いまなお神輿に乗るヴェートラーナの姿はとらえられていた。
俺はマップを見て、その決断にさらに確信を得た。
「いまの魔王軍の指令塔は、おそらく彼女だ。マイコフは消えたし、竜王ミュシャは最後の1人と戦っている。いまなら彼女を討てば、魔王軍の命令系統は崩せる。……そのまま包囲網を突破することもできるはずだ」
顔を上げると、彼女たちは俺の言葉に耳を傾けていた。
三者三様の顔が俺の次の言葉を待っていた。
「俺に力を貸してくれ」
俺は手を差し出した。
うん、とシレンシズはうなずいて、迷いなく俺の手に手を置いた。
「行きましょう、ディップ。地獄まで一緒よ」
なんだか嫌な響きだな。
シンギスベリエもそこに手を置いた。
「私も地獄までついてくわよ」
それは嫌すぎるな。地獄でも修羅場とかやめてほしい。
アイスキャットは耳をぴこぴこ動かして周りの様子をうかがいながら、手を置いた。
「地獄ってなんじゃ?」
なんだか良く分からないのについてくるなよ、アイスキャット。
俺は心の中で小さくうなずいた。
そうだ……2周目は負けない。
負けるものか。




