第7話 内通者の影
何かを計算している目だった。
カイルは、セリアの疑問に、視線を水晶柱へ向けた。白い光がまだぼんやりと残っている。
「無属性のままなのは、お前自身の器がまだ方向を決めていないからだ。魔力の総量が増えても、それを流す水路がなければ溢れるだけだろう」
言葉を切り、少し考え込むように目を細めた。
「逆に言えば、今のお前はどの属性にも染まれる。固定されていない器というのは、弱みであると同時に可能性でもある」
セリアはその言葉を噛み締めるように、しばらく黙っていた。落ちこぼれの烙印しか押されてこなかった無属性に、初めて別の解釈が与えられた。唇がわずかに震え、何かを言いかけた。
ガレスは、空気を読まずに割り込んだ。
「よし、じゃあ再検査も終わったことだしよ! カイル、約束通りやろうぜ! 演習場空いてるはずだ!」
「え、もうですか!?」
ガレスは返事を待たずに立ち上がっていた。マグマポッドが足元でぐつぐつと煮え滾り、主人の昂揚をそのまま体現している。周囲の生徒たちが一歩引いたが、ガレスの目にはカイルしか映っていない。
検査室を出る三人の背後で、シオンが壁から背を離した。足音を殺して、同じ方向へ歩き出す。その翡翠の瞳には先ほどの計算する色がまだ残っていたが、そこに新しい感情が一つ加わっていた。
興味だ。純粋な、しかし油断ならない興味。
演習場への廊下を歩く間、ガレスが一方的に戦術論をまくし立て、セリアが困った顔でカイルと歩調を合わせている。昼下がりの光が窓から差し込み、三つの影を長く伸ばしていた。
演習場の扉が見えた。昨日、結界が砕けた場所。修復されたばかりの結界紋が真新しい光を放っている。
ガレスは、扉に手をかけ、振り返った。その顔に浮かぶのは獰猛な笑み。
「ルールはシンプルでいい。どっちかが動けなくなるか、降参するかだ」
マグマポッドが主人の肩に這い上がり、溶岩のような体表が赤く脈動した。
「来いよ、竜種」
「良いだろう」
カイルは地面を蹴り、ガレスとの距離を詰めた。右手を握り、拳を繰り出す。
ガレスは、目を見開いた。魔法ではなく拳。その選択が一瞬の判断を遅らせた。だが体は動いていた。
炎属性の魔法使いらしく、反射は悪くない。
「素手かよッ!」
咄嗟に左腕を上げて顔面を庇う。カイルの拳が腕を打ち、ガレスの足が石畳の上を滑った。
腕を伝わった衝撃に顔が歪む。封印状態でこれか、と目が語っていた。
マグマポッドが主人の危機に反応し、ガレスの足元から溶岩の壁が噴き上がった。灼熱の飛沫が散り、カイルとの間に一瞬の距離が生まれる。
ガレスは、その隙に後方へ跳び、右手を突き出した。掌に凝縮された炎が渦を巻く。
「喰らえッ! 烈火砲!」
拳大の火球が三連射でカイルに向かって飛んだ。速い。だが軌道は真っ直ぐで、読みやすい。この男は小細工を知らない。知っていても使わないのかもしれない。
セリアは、演習場の端で、拳を胸の前で握りしめていた。昨日ここで起きたことが脳裏をよぎるが、今は違う。カイルは指輪を嵌めたまま、ガレスは本気で、そして誰も倒れていない。まだ。
演習場の観覧席に、いつの間にか人影が増えていた。再検査を終えた生徒たちが噂を聞きつけて集まり始めている。その中に、翡翠色の瞳がひっそりと混じっていた。シオンは最上段の隅に腰を下ろし、顎に手を当て、一挙一動を見逃すまいとしている。
火球がカイルとの距離を詰める。溶岩の残滓がまだ空気を焦がしており、演習場の温度が肌で感じられるほど上昇していた。
「ふん」
カイルが右手を振るうと、魔力の障壁が現れた。
三発の火球が障壁に着弾した。轟音と共に炎が四方に散り、演習場の空気が一瞬で乾ききった。だが障壁は揺らぎもしない。無詠唱で、しかも片手を振るうだけで展開された魔力障壁。
観覧席のざわめきが大きくなる。
無属性の純粋な力場だった。属性を持たないがゆえに、炎の相性補正を受けない。理論上は知られている技術だが、無詠唱でこの精度は教官クラスでも容易ではない。
ガレスは、歯を食いしばった。だが目は死んでいない。むしろ燃えている。
「効かねえか、なら!」
両手を地面に叩きつけた。マグマポッドが床に溶け込むように沈み、次の瞬間、カイルの足元から溶岩の間欠泉が噴き上がった。上からの攻撃が駄目なら下から。単純だが、判断は速い。
セリアは、思わず立ち上がっていた。足元からの奇襲は障壁の死角を突く正しい選択だ。授業ではろくに発言しないガレスが、実戦ではちゃんと頭を使っている。
溶岩が噴き上がる熱風の中、観覧席最上段でシオンの目が細まった。指先が無意識に膝を叩いている。ガレスの成長を測っているのか、カイルの対応を見定めているのか。おそらく両方だった。
足元から迫る灼熱の柱。回避か、防御か、それとも別の手か。溶岩の赤光がカイルの顔を下から照らし、灰黒色の瞳に炎が映り込んでいた。
「ならば」
カイルが再び距離を詰めた。
溶岩の間欠泉を踏み越えるように、カイルが地面を蹴った。噴き上がる灼熱の柱を紙一重でかわし、その熱が黒いシャツの裾を焦がす。だが足は止まらない。
速い。封印状態とは思えない加速だった。身体強化に魔力を回しているのだろうが、それにしても動きに無駄がない。何百年という戦闘経験が染みついた体捌きは、十代の学生が対処できる領域を超えている。
「くそっ、近づかせるか!」
マグマポッドに叫ぶ。溶岩の壁が再び二人の間に立ち上がったが、カイルは壁を迂回せず、障壁を纏った拳でそのまま突き破った。溶岩が飛び散り、赤い粒が宙を舞う。
目の前にカイルの顔があった。息がかかるほどの距離。反応が間に合わない。咄嗟に右拳に炎を纏わせて振り抜いたが、カイルの左手に手首を掴まれ、そのまま体を捻られた。
「がッ……!」
背中から石畳に叩きつけられる。肺の空気が全部抜けた。マグマポッドが悲鳴じみた音を発し、主人を助けようと溶岩を噴くが、カイルの足がガレスの胸を軽く踏み、動きを封じていた。
軽く。だがそれだけで、ガレスは指一本動かせなかった。
セリアは、両手で口を覆っていた。圧倒的だった。指輪で封じられた状態で、Aランクの召喚獣持ちを素手で制圧した。魔法すらほとんど使っていない。
演習場が静まり返った。観覧席の生徒たちは呼吸すら忘れている。シオンだけが、最上段で微かに息を吐いた。落胆か感嘆か、その吐息の意味を読み取れる者はいない。
ガレスは、石畳の上で天井を見つめ、荒い呼吸を繰り返している。悔しさで歯を食いしばるかと思いきや、その口元には笑みが浮かんでいた。
「……は、ははっ。まるで話になんねえ」
ガレスは、足に踏まれたまま、掠れた声で笑った。目が潤んでいるのは痛みのせいか、別の何かか。
「最高だ、お前」
足の力を抜き、ガレスから離れた。無防備に寝転がる男を見下ろす視線に、侮蔑の色はなかった。
手を差し伸べるでもなく、ただ事実を告げる。
「魔法使いは近距離に弱い。それは仕方の無いことだ。お前は距離が詰まった後の対処が甘い」
ガレスは、ゆっくりと上体を起こした。まだ全身が痛むのか、顔をしかめている。だがその目は少しも腐っていない。
「……違えねえ。わかってはいたんだがな」
立ち上がり、埃を払う。マグマポッドが心配そうに足元にすり寄ってきた。その頭を乱暴に撫でてやる。
「だが、これで一つ課題ができた。礼を言うぜ、カイル」
セリアは、安堵の息をつき、カイルのそばに駆け寄った。彼の袖を掴み、焦げ跡を指さす。
「怪我は、ないですか? 服が……」
演習場の静寂は、拍手の音によって破られた。
観覧席の最上段、シオンが一人、ゆっくりと手を叩いていた。その表情はいつものように読めないが、翡翠の瞳はカイルを真っ直ぐに見ていた。
拍手をやめ、立ち上がる。声は静かだが、演習場全体によく響いた。
「見事なものだね。まさかガレスが手も足も出ないとは。君の実力、少し見誤っていたようだ」
階段を降りながら、言葉を続ける。
「セリア、君も良い召喚獣を引いたものだ。もっとも、その力を君自身が扱いきれるかは別問題だけどね」
セリアは、シオンの言葉にびくりと体を強張らせた。カイルの袖を掴む手に力がこもる。
シオンは、二人の前に立ち、カイルを見た。昨日までの侮蔑でも、今日の値踏みでもない。対等の相手、あるいはそれ以上を見定める目だった。
「君、カイルだったね。一つ取引をしないかい?」
カイルは、シオンを見据えた。翡翠色の瞳の奥、腹の底で渦巻く計算高い光を、カイルは見逃さない。
「取引だと?」
声は平坦だったが、灰黒色の瞳は探るようにシオンを射抜いている。
「俺に何の用だ、二年生最強殿」
その呼び名に、口元が微かに笑みの形を作った。挑発と受け取ったのか、あるいは事実の確認と取ったのか。
「最強、か。そう呼ばれるのは嫌いじゃない。だが、その座はいつ脅かされるかわからないからね。君のような存在が現れると、特に」
シオンは一歩近づき、カイルにだけ届く声で囁いた。少し離れて待つセリアとガレスには、内容までは聞こえない。
「君、その力を正しく使えていないだろう。セリアは君を御せていないし、君もこの学園での立ち回り方をわかっていない」
シオンの視線が、観覧席でまだこちらを窺っている生徒たちに向けられた。
「君とセリアは孤立している。今は恐怖で誰も手を出さないが、それも時間の問題だ。上の連中や、外の人間が君をどう見るか……考えたことはあるかい?」
再びカイルに視線を戻す。その目は、獲物を前にした狩人のそれだった。
「僕と組まないか」
言葉は静かだが、その内容は傲慢だった。
「僕の派閥に入れば、学園内での面倒は僕が処理しよう。君たちの立場も保証する。セリアをいじめるような馬鹿もいなくなる。悪い話じゃないはずだ。その代わり、君の力は僕のために使ってもらう」
ガレスは、遠くから、何かを察したのか訝しげな顔で二人を見ていた。
セリアは少し離れた場所から、密談する二人を不安そうに見つめていた。
「派閥か……我の言った通りになったぞオルディス」
演習場の大扉が軋みながら開いた。全員の視線がそちらへ向かう。
オルディス・レイ・セレスタが、飴玉を転がしながら悠然と歩いてきた。旅装の上に学園長の外套を無造作に羽織っただけの格好で、威厳もへったくれもない。だがその足が石畳を踏むたび、演習場の空気が目に見えて引き締まっていく。観覧席に残っていた生徒たちが反射的に背筋を正した。
口の中の飴玉をカリ、と噛み砕いた。カイルの言葉が聞こえていたのか、苦い顔を隠しもしない。
「やれやれ、予言者にでもなったつもりかね、竜種。わしが来たのは演習場の結界修復の確認だ。別にお前の心配をしに来たわけでは……」
言葉が途中で止まった。老魔法使いの目が、カイルとシオンの距離を捉えている。密談の間合い。そしてシオンの表情に浮かぶ、取り繕いきれなかった計算の残滓。
シオンは、一歩、滑らかに後退した。表情は完璧な優等生のそれに戻っている。学園長に向けて丁寧に一礼。
「学園長。ガレスとカイルの模擬戦を見学していただけですよ。素晴らしい試合でした」
オルディスは、シオンを一瞥した。長い沈黙。飴玉の瓶をポケットから出し、もう一粒取り出す間、翡翠色の瞳を見据えていた。
「レグナート。お前は頭の良い子だ。頭の良い子ほど、自分に見えていないことには気づけんものだがな」
それだけ言って、シオンから興味を失ったように視線を外した。カイルの方を向く。
「で? 派閥がどうしたと?」
その声は軽かったが、目は笑っていなかった。演習場の石畳に残るガレスとの戦闘痕、焦げ跡、溶岩の残滓。それらを一瞥し、カイルの左手の指輪を確認して、ようやく肩の力を抜いた。
ガレスは、学園長の登場で直立不動になっていたが、居心地悪そうに頭を掻いている。マグマポッドが足元で小さくなっていた。
セリアはカイルの傍らへ戻り、学園長とシオンのやり取りを見つめた。申し出の全貌は聞こえていなかったが、何か良くないことが起きかけていたのは分かった。
「僕の派閥に入れば、学園内での面倒は僕が処理しよう。君たちの立場も保証する。セリアをいじめるような馬鹿もいなくなる。悪い話じゃないはずだ。その代わり、君の力は僕のために使ってもらう」
カイルは、先ほどシオンが口にした言葉を、声色まで似せて繰り返した。
「――だそうだ、学園長」
演習場の空気が凍りついた。カイルの口から紡がれたシオンの言葉が、一言一句違わず、声色まで忠実に再現されて響き渡る。観覧席の生徒たちが息を呑んだ。密談のつもりだった内容が、学園長の目の前で白日の下に晒された。
完璧に整えられていた表情が、ほんの一瞬だけ崩れた。翡翠の瞳が鋭く細まり、カイルを射抜く。だがすぐに唇の端を持ち上げ、余裕の笑みを取り繕った。その笑みの下で奥歯を噛んでいることに気づけたのは、おそらくこの場にいる数人だけだろう。
飴玉を舌の上で転がしながら、しばらく何も言わなかった。その沈黙が、シオンの背中に汗を滲ませる。
「ほう」
たった一音。だがその重さに、演習場の温度が下がった気がした。老魔法使いの目がシオンに向く。
「レグナート。他者の召喚獣を自分の駒にしようとするのは、契約法の精神に反するとわしの授業で教えたはずだがな。まだ二年目で忘れたか?」
シオンは、一礼したまま、顔を上げない。声だけは平静を保っている。
「ご忠告、肝に銘じます。失礼しました」
背を向け、歩き出した。足取りは乱れていない。だがその背中が演習場の出口に消える直前、一度だけ首を巡らせた。カイルを見る目に浮かんでいたのは、もう計算ではなかった。
敵意だ。薄く、冷たく、しかし確かな。
ガレスは、シオンの背中を見送り、低く口笛を吹いた。
「あいつの化けの皮が剥がれるとこ初めて見たわ」
オルディスは、ポケットに手を突っ込み、カイルに向き直った。その顔は疲れた老人そのもので、威厳の欠片もない。
「お前なあ。敵を増やす天才か」
ため息が演習場に落ちた。
「敵? 元よりだろう。あの手の人間は最初から味方のふりをした敵だ。早いうちに本性を晒させた方が楽だろう」
肩をすくめ、焦げたシャツの袖を見下ろした。
カイルの言い分に反論はしなかった。ただ飴玉をもう一つ口に放り込み、盛大に噛み砕く。
「正論ではあるが、正論が正解とは限らん。レグナートは二年生の頂点だ。あの小僧を敵に回すということは、あの小僧にぶら下がっている連中すべてを敵に回すということだぞ」
ちらりとセリアを見た。
「お前一人なら好きにすればいい。だがお前の主人は、お前が去った後もこの学園で生きていかねばならん」
その言葉が胸に刺さったのか、カイルの袖を掴む手が一瞬強張り、そっと離れた。俯いて唇を噛んでいる。
ガレスは、気まずい空気に耐えかねて、後頭部をがしがしと掻いた。
「あー……つか俺、シオンの派閥とか関係ねえからな。あいつは勝手にライバルだ、派閥じゃねえ。だからまあ、その……」
言葉が見つからず、カイルとセリアを交互に見る。不器用な沈黙の後、ぼそりと呟いた。
「俺は別に、お前らの敵じゃねえよ」
オルディスは、ガレスの発言に眉を上げ、それからふっと笑った。飴玉の瓶をガレスに差し出す。
「フォルク、お前は馬鹿だが嫌いじゃないよ」
「褒めてんのか貶してんのかどっちだよ爺さん!」
オルディスは、ガレスを無視して、カイルに向き直った。声から軽さが消える。
「それともう一つ。再検査の報告が上がってきた。セリアの魔力量の異常値、あれは今後問題になる。外部の目に触れれば、お前だけでなくあの娘にも手が伸びるだろう」
老魔法使いの視線が、演習場の出口に向けられた。シオンが消えた方向だ。
「学園の中だけが敵ではない。それだけは覚えておけ」
午後の光が傾き始めていた。演習場に残された四人の影が長く伸びる中、オルディスはポケットから一枚の封書を取り出した。封蝋には学園の紋章ではなく、見慣れない意匠が刻まれている。尖った耳と三日月を組み合わせた紋様。
それをカイルに見えるように掲げ、老魔法使いは静かに言った。
「今朝方、学園宛てに届いたものだ。差出人はダークエルフの外交筋。内容は一行」
封書を開き、読み上げた。
「召喚の儀にて顕現せし竜種の身柄について、協議を要請する」
封書を畳み、カイルを見据えた。
「もう嗅ぎつけられている。昨日の今日でだ」
「ん? オルディスよ、ここの生徒は何年でここを出るのだ?」
飴玉を噛む音が止まった。カイルの問いの意図を測るように、しわだらけの目を細める。
「基本は六年だ。二年で基礎、二年で専門、二年で実践。もっとも、優秀な者は飛び級で四年で出る」
カイルの顔を覗き込んだ。
「なぜそんなことを聞く」
セリアは、カイルを見上げた。同じ疑問が顔に浮かんでいる。
ガレスは、飴玉を一つもらい、口に放り込みながら首を傾げていた。
午後の風が演習場を吹き抜け、焦げた石畳の匂いを運んだ。封書がオルディスの手の中で微かに揺れている。ダークエルフの紋章が、傾いた陽光を受けて鈍く光った。
オルディスの問いかけの奥には警戒があった。竜種が学園の在籍年数を気にする理由。それは滞在期間の見積もりか、あるいはもっと別の何かか。老魔法使いの指が、無意識に封書の角を折り曲げていた。
「我はセリアから離れるつもりはないぞ」
その言葉を聞いて、老魔法使いの表情が変わった。警戒でも安堵でもない。何か遠いものを見るような、複雑な目だった。封書を外套の内ポケットにしまい、空いた手で顎髭を撫でる。
「卒業まではまだ何年もある。お前にとっては、瞬きほどの時間だろうが」
独り言のように呟いてから、咳払いをした。
「まあいい。離れるつもりがないなら尚更だ。このダークエルフの書状、放置すれば次は使者が直接来る。連中は丁寧な顔をして厄介なことを押し付けてくる天才だからな」
カイルの言葉が数秒遅れで染み込んだのか、頬がうっすら赤くなっていた。だがすぐに封書の話題に意識を引き戻す。
「ダークエルフが、なんでカイルのことを……? 昨日の今日ですよ? 情報が速すぎませんか?」
「速すぎる。つまり学園の中に耳がいるということだ」




