序章10話
冒険者ギルドは、クエストの斡旋や冒険者登録等の事務手続きをする受付と酒や軽食を出す酒場と分かれている。昔は同じ建物でやってたんだが、ラオルスクに迷宮が出現し冒険者達が多く集まるようになるとクエストの掲示スペースが足りなくなり、酒場も人数を収容できなくなって業務に支障をきたしてきたので酒場を分けて、作業の効率化を図る様になった。
このお陰で、受付の担当者は緊急事態に対応する為の番所以外を午後4時の鐘で受付を締める事が出来て、酒場の方も飯時から営業出来る様になってから、今のスタイル落ち着いていた。
コッコケ……コケコッコーーー!!!
朝を告げる鶏の鳴き声が静まり返った街に鳴り響く。
「「「クォォォコケコッコーーー!!!」」」
すると、一番鳥の鳴き声に触発された他の鶏達も一斉に鳴き出す。名物とは言え相変わらず騒々しい。もっともこれが無いとラオルスクの住人にとって一日が始まらない。……だがしかし、夜番していた俺は5時の営業開始になったら、ようやく一日が終るんだがな!!はっはっはぁぁぁ!!徹夜明けで俺のテンションが有頂天だぜ。
ポツポツと早出の連中が出勤し、5時の鐘が鳴り出した。さて、出勤した奴にし引き継ぎすませた。これで、俺の行く手を遮るものは居ない。いざ、帰ろう。そして、俺は家で爆眠するんだ。
「おはよー!!おっさん!!居るぅぅぅ!?」
ギルドの受付に響く声、この声はメリンダか……おおぉぉ、神よ。あいつが俺を指名するときは大抵厄介ごとなんです。どうか御身のご慈悲を与えてくれぇぇぇ……たぶん、無理だと思うが。
「あっ、いたいた!!あれ?黄昏ちゃってどうしたの?」
「いや、なんでもない」
「実はさ、相談に乗って欲しいんだよね」
「……なんぞ良いクエストを紹介しろってか?」
「もちろん!!それも有るんだけど、この子の事で相談が有るんだ」
シャノンの後ろの隠れる様に居る……子供、ここに居るってことは、もしかして冒険者登録希望で尚且つソロであり、俺に話を持ってくるって事は厄介な案件に他ならないだろうな……。
さらば、いざ、さらば俺の睡眠。
「……メリンダとシャノンは雑務クエストの依頼表でも見てろよ」
「は~い、じゃっセラちゃん。ちょっと見てくるから」
「このおじさんに任せればたぶん?何とかなるからね」
「えっ、はっはい」
「たぶんってなんで疑問系なんだよ……。ほれ、そんな所で突っ立てないでこっち来い」
……ふむ、背丈は160ちょっと超えたぐらいか?多分、今年で10歳に成るにしては色白で小柄だな、ほう、ヴァールベルン帝国では珍しい黒髪でストレートロングか、目元まで前髪が垂れてるせいで表情が良くわからん。人見知りするタイプかもしれん。服装は……まあ、田舎の村娘が着てる服って感じだな。所々色あせてはいるが不潔ではないか。
「まずは始めましてだ。俺はゴルノフって言う。まあ、よろしくな」
「セラです。よっよろしくなのです」
「おう、まあ、早速だが事情を説明してもらっても良いか?」
「はい、その、実は……」
………
……
…
さっ最悪だ。多分、間違いねぇ。昨日受付終了間際に駆け込んできたあいつ等の紹介状にあった7人目で間違いないだろう。やっぱり、あの小娘適当な事言ってやがったか!!何が宿屋で荷物を見てるから居ないだ!!疲れて寝てる間に仲間をほっぽって自分達だけで登録しやがったんじゃねぇか。……はぁ、ギルド長が奴の叔父だからなぁ。ぜってぇ、姪のミスを認めねぇだろうな。
「話はわかった。一つ確認するが、お前さんの身の上を何か証明できそうな物、もしくはこの街で証明できそうな人物は居ないか?」
「すみません、ありません……」
おおぉぉぉ……神よ……。くそ、身元の保証が無い場合で登録するしかねぇな。そうすると、登録料の銀貨1枚を納めてもらった後は、この子の出身地の村に問い合わせて問題が無ければお金を返却って事でいいか。ってか、それしか方法がねぇ。
「そうか、身元を保証する人物が居ないと正規の手続きでギルドへ登録してもらい、身元がはっきりと分かったら返却になる。それでも、お前は冒険者登録したいか?」
「はい」
「そうか……ギルドへの正規の登録料は銀貨1枚だ、君の場合は事情が特殊なのでオクル村に連絡入れて、君に対する身元の保証が再度確認取れたら返却するって事になる。くどいが、それでも登録するか?」
「銀貨はあります。登録をお願いします」
「解った。では、クラスについて説明する。クラスって言うのは君もおとぎ話で聞いた事もあると思うが、古の昔に世界に初めて魔と呼ばれる者達が溢れて、我々のご先祖様達が滅ぼされる危険に晒された事があった。この時に神々がクラス・スキルシステムって言う『恩寵』を作り、魔と戦える者達を短期間で育成する為に我々に与えたと言われている。システムって何か良くわからん単語だから今では単に『恩寵』って呼ばれているがな。
話を戻す。『恩寵』と言うのは、所謂その人物の可能性をある一定方向へ無理やり矯正して、強引に成長を……促す?いや、加速させる物だ。そしてそれは、成長の果てには最終的に神格を得て神々の一柱へと至る可能性が有ると言う事だ。まあ、普通はそこまで成長する事無く寿命で死んじゃうけどな。
なので、この『恩寵』を得た者は必然的に世界の守護者であり、人々を守る為の醜の御盾となる宿命を持つことに成る。また、魔の者達も『恩寵』を得た者亡き者にしようとしたり、時には取り込もうとする事になる。そう言う危険を踏まえてくれ。そして、それでも君は『恩寵』を得たいか?」
「はい。得たいです」
「そうか、じゃあ、まずこの宝珠を使って適正検査を行う。そこの宝珠にさわって見てくれ」
用意してあったって言うか、昨日奴が使った物がそのまんま置いてあったので早速使わせてもらおうか、おそるおそるセラが宝珠に手を触れると、宝珠が起動しする。たったこれだけで相手のクラス適正を示す大変便利な道具である。
「四属性魔術師、スカウト、後は……ぶっ!!」
ちょっとまて?何で、アコライトの適正が出てるんだ!?
いや、基礎クラスは戦士、スカウト、二大四属性の魔術師、後はアコライトだから出てもおかしくは無い。だが……。
「君、実家が修道士補佐役だったんだって?よく神殿でお祈りとかしてたのか?」
「はい。神殿のお掃除とかした後、修道士様から教えてもらったお勤めしてましたよ?」
神殿の関係者が聞いたら、オクル村に派遣されてた奴の首が飛びそうだな。この子がアコライトになったら確実に飛ぶな。下手したら物理的に……。
「えと、あの、どうしたんですか?四属性魔術師と、スカウトともう一つあるようなんですが」
おっと、いかん。余りの衝撃に口から半分魂が抜け出そうになった。
「ああ、すまん。最後の一つはアコライトだったわ」
「はぅ……そうですか……。流石に二大属性の魔術師は無理でしたか……」
「は?二大属性の魔術師に成りたかったのか?」
「はい、光系の魔術師になれば怪我しても自分で回復できるし、冒険者として引退した後で村に帰ったとしても光系統の魔術を使えればお父さんの手伝いも出来ると思いますし……うちの村に来る修道士様がそう仰ってました」
はい、物理的に首、飛ぶこと確定したな。
わざわざ辺境の村まで修道士派遣して祭祀やってるのって、一番の目的には神聖魔術を取得出来そうな子供を見つけて囲うためだろうに……。まあ、いい。どうせ、辺境に派遣される修道士だからな。『本物』は行きたいって言っても行かせてくれんだろう。その事には感謝しておこう。お陰でこの子に付いては冒険者ギルド側に優先権が与えられるからなー。
「何か勘違いしてるようだが、アコライトも回復や支援が得意なクラスだぞ。詳細を説明するが……」
アコライトって言うのは、聖職者系クラスの基礎クラスに属し始めてクラスを取得した者が神聖魔術を唯一『恩寵』で取得できるクラスなのだ。二大属性の光系と同じく回復や支援魔法が得意なクラスなのだが、昔は兎も角として、今は魔術師が使用する各属性に対応した魔術式が豊富に有り魔力を魔術式に注ぎ込めば簡単に発動できるので、回復、支援職と言えば光属性魔術師と言われる様になってしまった。対して神聖魔術と言うのは、一言で言うと『祈る』事で、世界に漂う神々の力に干渉し、魔力と結合させて発動させるので、その手法に長けてないと取得が難しい。ある意味『恩寵』の恩恵で取得するのが一番手軽なんだが、その前提条件が意外とハードル高い。その所為で安易な魔術の方に人は流れ神聖魔術を使える人間が激減しラオルスクの街ですら三桁には届いていない。
因みに、クラスを転職できるまで経験を積んで魔術師系統から、聖職者系クラスに転職して、大抵の奴等は神聖魔術を取得出来なかったりする。なまじ魔術式に魔力を流す事に慣れすぎているので、別の系統での魔力の操作を覚える事が非常に困難になってしまっている。こういった連中の魔術は多少のクラス補正が働いて退魔能力が上がるがあくまで魔術式を用いて魔術であり、神聖魔術じゃ無い。なお、初めから聖職者系クラスの場合は上位クラスに転職し、属性魔術を使える様になっても魔術式に単に魔力を注げば良いだけなので非常に簡単ではある。しかも、自身の魔力を神々の力と結合させて魔術を行使する影響か、ありきたりな攻撃魔法ですら高い退魔能力が付与される場合があるって聞く。
以上の事から、個人的な所感では技量が満ちれば自動で呪文を取得できるし、神聖魔術の方が呪文一つの汎用性と融通が利くので回復、支援職では一番お薦めしたいクラスではある。それに、アコライトは魔術師と違って、体力の問題さえなければ金属鎧も装備できるので、戦闘で生き残れる可能性が多少ましに成る。
「……と言うわけで、君が神々を信仰する事に特に違和感が無いのならアコライトはかなりお薦めできるぞ」
「そっそうなんですか?……確かに、何時も普通にお勤めしてたから、特に違和感ないです」
まあ、光系魔術師とアコライトの混同はルミナス聖王国で過去に行われた勇者召喚の儀式で召喚された勇者と一緒に召喚された幼馴染が光系魔術師であり、本来ならば女性聖職者系クラスの最高位と言われている聖女の称号をルミナス大神殿が与えた所為で混同されてしまった経緯がある。もっとも、知り合いの『本物』の聖職者は言うが、本来の『聖女』がヘタレな勇者とその一行の所為で自分の命を捧げなくてはいけなくなり、『聖女』が空席となってしまい勇者の幼馴染に称号として与えたと言う事らしい。本来神聖魔術を習得している女性聖職者の最高位である『聖女』のクラスを穢したルミナス聖王国と大神殿に災いあれ!!ってどす黒いオーラを出して俺に力説しやがったが……。
「そうか、ただ、最終的な決定権は君にある。三つのクラスの内、どれにするか決めてくれ」
「えーと、では、アコライトでお願いします」
「……良いんだな?まあ、あそこまであからさまに説明して誘導しちまったかなって思ってたりもするから、本当に自分の成りたいものを選んでくれよ?」
「大丈夫です。その、ゴルノフさんは少なくとも私の希望に対してちゃんと良かれと、アドバイスしてくれてるのがわかりますから」
「……わかった。ではクラスはアコライトでステータスカードを作る…………ほれ、出来たぞ」
「はい?もう、出来たんですか?」
「ステータスカードって念じてみろ。お前の手元に「出てくる」はずだ」
「おおぉぉ……本当に出てきた……」
「ほれ、そのカードを俺に貸してくれや」
受け取ったカードを見ると
名前:セラ
体力:C 知力:B- 知恵:A+ 素早さ:C 生命力:C+ 運:B
クラス:アコライト
クラフトクラス:なし
スキル:神聖魔術:Lv1 祭祀作法:Lv0 初級植物知識:Lv0 初級薬師:Lv0 初級調理:Lv0 初級解体:Lv0 初級帝国公用語:Lv0 初級算術:Lv0
なんだ、これは。これ10歳になろうって子供のステータスじゃねぇぞ。
「なぁ、君は村でどんな生活してたんだ?」
「え?えーと。お母さんの手伝いで料理作ったり、村の猟師のおじさんの所でお手伝いしたり薬草を使った煎じ薬を作れるおばあちゃんの代わりに薬草とったりして薬作るの手伝ったり、お父さんの代わりにご神像や礼拝所の掃除したりお勤めしたり、お父さんや村長さんの所で計算とかの手伝いしてました。ああ、後は村でやる雑用とかも出来る限り手伝ってました」
因みに、レベル0ってのは見習いクラスにつくレベル標記である。これ、お手伝ってレベルで取得できるもんじゃないぞ……。
「色々、言いたい事はあるが、まあ、置いて置こう。どうする?ここに記載されてるスキルも満遍なく育てたいか?」
「はい。折角なので学べるものは学びたいです」
……その素直さがたぶん、スキルの取得に現れたんだろうな。
「わかった。君の生活面を支えつつ実地で学べる環境を整えてやる。戦闘系のスキルの取得は生活に余裕が出来てからでも遅くは無かろう。1年いや2年ぐらいはみっちりとスキルを成長させてるよ。かなりキツイから覚悟はしてくれ」
「はい!!よろしくお願いします」
こいつ、社畜の才能あるんでないかな……。
前回、今回で序章は完結するかもって書いた所、大幅に字数をオーバーしてしまい。尚且つ眠くてたまらん状況でキーボード操作してたら、わけわからん文章を書いてた今日この頃……少し長くなってしまいましたが、一応序章はこれにて完結します。




