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不明の旅路  作者: 緩衝材
第一章【春よ、帰路を求む。】
7/17

親の責任

「いただきますっ!」

アリアのその言葉が合図となり、朝食を食べ始めた。

この時の朝食は、よく焼けたパン、キャベツやミニトマトといったサラダ、1口サイズの肉が入ったスープ。

どれも美味しそうでいい匂いで食欲がそそられる。

ランもソロもアリアもメルも、全員食べている。

しかし春斗の左手はスプーンを持ったまま動かない。

それを見たメルは心配した。「どうしたの?ハルトくん、お腹空いてない?それか苦手な食べ物でもある?」

「ぃっ、いえっ、大丈夫です…ぃただきます…。」

春斗はスプーンでスープを少しだけすくい、口に運んだ。

食べてみると温かく、なんの味付けかは分からないがとても美味しかった。思わず少しだけ目を見開いた。


しかし、春斗にとってはそのスープが一番気になっているものであった。なぜならば、このスープの具材である肉は、氷箱の中にあったあの謎の肉片だからである。

思わず春斗はメルに聞いてしまった。

「あの…スープのこのお肉って…何、ですか…?」

聞かれたメルは口角を上げたまま喋った。

「これ?これはねぇ、草木龍の尻尾のお肉!今外出しちゃってるけどうちの夫がお客さんが来るからって昨日採ってきてくれたの〜!美味しいから食べてみて!!」

“龍の尻尾の肉”というワードを聞いた瞬間、春斗は思わず「ぇええ”っ」と驚いてしまった。

その会話にアリアが入ってきた。

「えっ!これ草木龍の尻尾のお肉だったんだ!あたし、大地龍の尻尾しか食べたことないから初めて!すっごく美味しい!」

(アリアさんも龍食べたことあるの?!?!もしかして龍の尻尾は庶民的な食べ物なのかな…。)

アリアとメルの言葉もあって恐る恐る春斗は自分の口に入れた。


すると、ササミ肉や白身魚のような淡白な味がした。しかしその淡白な味に恐らく胡椒の味付けがしてあり、とても美味しかった。

すると同士のランが、

「な?龍の尻尾の肉、美味いだろ?」と昨晩のようなニヤニヤした顔で言ってきた。

その顔にも押されて春斗は「はい…すごく、美味しいです…!」と答えた。

「うっふふ!良かった!」

メルはランとは真反対の純粋な笑顔でそう言った。

そんなこともあり、春斗はメルとランは本当に親子なのか疑ってしまった。


─────────────────────────


そうしているうちに全員朝食を食べ終わり、

「ごちそうさまでした!」というアリアの声が響いた。すると、

「はい!綺麗に食べてくれてありがとう!私すっごい嬉しい!!じゃあ、そのお礼に、あなた達好きなように遊んできなさい!でもランちゃんはやること終わらせてからね!わかった?」

と、メルはランに対して念を押してきた。

それに対して面倒くさそうに「はーい。」と返事をした。そしてその返事をしてすぐ、アリアとソロに話しかけた。

「ねぇ。2人とも、話がある。」

アリアは不思議そうに思っている顔をし、

ソロはいつもと変わらない常に微笑んでいる顔で振り返った。


4人全員がランの自室に入った。

ランが入るやいなや、真面目な顔で話し始めた。

内容はもちろん、旅についての話である。

昨日の話だが、ランと春斗の間にひとつのある暗黙の了解があり、それは“現代から来たことは言わない”こと。理由は…ランが言うには色々ややこしくなるかららしい。それに何より、信用も何も無い人にその事を話すと警戒されてしまうからだ。


「…という訳で、2人とも旅についてきて欲しいんだ。」と、ランがあらかた説明すると、アリアにひとつ疑問が浮かんだ。

「あの、旅についてはよく分かったんだけど、なんでランとハルトは旅をしたいの?」

ランはギクッと肩があがった。どうやら理由についてはあまり伝える分には考えてなかったようだ。

「あ〜…えっ、とぉ…」

ランが冷や汗をかいて必死に考えている。

そこで春斗がひとつ思いついた。必死だったので勝手に口が走った。

「記憶障害っ、で、その、だからぁ…」

「記憶喪失!!」と、ランが察して叫んだ。

その言葉に反応したソロが「つまり…記憶が無い…?!」と呟いた。

春斗とランが同時に焦りながら何度も頷いた。

「じゃあ、ハルトが神とか魂のことを知らなかったり、字が読めないのもぜーんぶ!記憶がないからってこと?!」

2人はさっきと同じように何度も頷いた。

2人の間に嘘の理由は“春斗の記憶を思い出すために旅をする。ランはその手伝い。”という形でまとまった。


その嘘を信じたアリアは「わかった、あたし、旅についてく!!」

と、元気に大きな声で返事をした。

それに続いてソロが「僕も、ついていかさせていただきます。まぁ、僕はランの護衛だからどっちにしろついていくことになるんでしょうけどね。」

ランは「ありがとう…!」と子供のような笑顔で言った。しかし、その後すぐにランは暗い表情になり眉間にしわをよせた。

そしてソロ「あ〜…」と察したような声を出した。

それが分からないアリアは「どうしたの?」と聞いた。

「この旅を始める上で一番の壁がある。それは…親の承諾!!正直これが辛い…だから説得に手伝って欲しい!と、言うわけで作戦会議!はじめますっ!!」

こうして、4人の作戦会議が始まった。


─────────────────────────


そして、その日の夕食がやってきた。作戦を実行するのは夕食を食べている途中である。

春斗からの提案で、人は食事中は警戒心が下がり判断が緩くなるので承諾が得やすくなるという。これをランチョンテクニックというらしい。

その時の夕食は川魚のソテーだった。そして、メルだけでなく、朝食の草木龍の尻尾を採ってきたランのお父さん、ラカンがいた。

ラカンは全身が白樺で出来ていた。しかし、人の形はしてあった。表情はメルと似ていて柔らかく微笑んでいた。この2人がどうして惹かれあったのかがよくわかる。


そして、アリアが緊張しながらメルに話しかけた。

「あの、ランのお母さんとお父さんに、お話があります。あたし達、旅に出たいんですっ…!だから、承諾を頂けないでしょうか!!」

元気な声をだして頭を下げた。

それに続いて全員「お願いします!」と言って頭を下げた。


「全員、顔を上げて?」メルの優しい声がして、恐る恐る顔を上げた。

メルとラカンは微笑んでおらず、ランに似た真面目な表情をしていた。春斗は血筋を感じた。


「ラン。」

メルの声は少し低くなり、ランが反射的に「はいっ」と返事をした。

異様な空気が流れている。

メルがこのトーンのまま喋り始めた。

「ラン、前にも話したでしょう。貴方はまだ14歳。今年で15歳になる。それでも保護者から離れて子供だけで旅をするのは危険すぎるって。」

メルが言っていることは少なくとも間違えてはいないだろう。正論である。

そしてランが素早く反論した。

「確かにそうだけど、お母さんもお父さんも、僕の回復魔法の強さは知ってるでしょ。それにソロだっているしっ」

「確かにランの回復魔法は同世代と比べても飛び抜けて優秀。だけど、問題はそこじゃないの。ラン、貴方になんで護衛がついているか忘れたの?」

「別に…忘れた訳じゃっ」

「良かった、忘れていなくて。我が子の安否は親の責任でもあるの。だからわかって。じゃあこの話はおしまい。みんな、ご飯食べなさい。」

そうして、大人の言葉の強さによってこの話は終わってしまった。


─────────────────────────


「ああぁぁ〜!!!くやしいぃ〜!!また論破されたぁっっ!!」

ランが自室で子供のように悔しがっている。

「あたしも勢いに押されちゃったぁ…。」

「まぁ、しかも反論したのが14歳の最年少で最年長でも17歳ですからねぇ…」

アリアに続いてソロも呟いた。


そして春斗も喋り始めた。

「えっと、あの、なんでランにはソロっていう護衛がついてるの…?」

「あっ、それあたしも気になった!なんでー?」

アリアも気になっていた。

ランとソロが声を合わせて「まぁ、話せば長くなるけど…」と言い始めた。


「お母さんとお父さん見れば分かるけど、お母さんがただの人間、お父さんが草の人(びと)で、僕はそのハーフなんだよね。んで、しかも僕は青薔薇だからそれに関する噂があって…簡単に言うと青薔薇が永遠の命を得ることができる薬になるっていう話。」

ランに続いてソロも

「だからランは小さい頃から誘拐されたり、されそうになったりすることが多かったから、僕が護衛に着くことになったんです。」と、話した。


その話を聞いたアリアは

「そら旅に行かせたくなくなるよ!」と突っ込んだ。

「でも旅に行きたいし、行かなきゃいけない!だから何度もお願いしてる。けど中々…」

ランがそう呟いた。

「あの、じゃあ、対策というか…そのために、ランとソロの馴れ初め…?的なのを知りたいかも、そしたらわかるかも…」

春斗がそう言うとアリアも「確かに!」といって賛同した。

そして、


「今から約7年前、僕は───ランが命を狙われていたから出会えたんだ。」


ソロがそう喋り始めた。

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