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不明の旅路  作者: 緩衝材
第一章【春よ、帰路を求む。】
10/17

盟友の守護関係(完結)

いつも書いている一話分よりも長くなっています。

ルーローズ・ラン編のエピソードに誤字があったため訂正しました。ストーリーの時系列に関わる物なので、前書きを確認していただけると幸いです。

二人はお互いに見つめ合う。

ランは距離を測りながら話しかけた。

「ねぇ、君は誰?この霧を作ったのは君?」

(幼い子供だからといって油断は出来ない、化けている可能性だって、大人が命令している可能性もある。)

「僕?僕はソロ!霧は作ってないよ。作ったことだってないよ。」

ソロがランに近づきながら話した。

「そっか、そうだよね。僕はラン。なんで一人でいるの?」

「僕ねぇ、今兄さんと妹でかくれんぼしてた!ランもする?」

「ううん、大丈夫。僕今迷子なんだ、お母さんを探さなきゃいけない…ソロさん?」

ソロが急に後ろを向いて話を聞いていない。


「あっネモ!」

「にーさぁ〜ん!み〜つけたっ!!」

そう言って元気な女の子が突っ込んできた。

「あっはは。みつかっちゃった。ネモ、この子はラン。僕の友達だよ。」

まだ会ってすぐの人を友達と呼ぶソロにランは驚いた。

「友達のラインガバガバだな…まぁ、よろしくお願いします。ランです。」

「うん!ネモはネモ!よろしくねー!ねぇソロ、もう帰ろ?」ネモは自己紹介しつつソロをもう帰ろうと催促した。

「うん、そうだね。帰ろうか。ランは?」

「あ、えっと…僕、今迷子だから…」

ランが気まずそうに言った。

(さっき言ったのに…やっぱり話聞いてなかったか)


「あ、うちに遠話(えんわ)の授攻を持った人が居るから一回うちに来なよ!」

とソロがいい、

「遠話の授攻ってどれだけ遠くても名前が分かれば会話が何の問題もなくできるやつだよね?いいの?」

と返した。するとネモが

「うん!いっしょにあそぼー!!!」

と言った。

ソロとネモにそう言われ少し悩んだ。

「う〜ん…じゃあ、いい?」

「「いーよー!」」二人が声を揃えて答えた。

兄妹って感じがする。


─────────────────────────


三人は暫く歩いているが、霧が引く気は無いようにみえる。

さらにこの霧にはちょっとした魔法もかけてあるらしく、方向感覚を鈍らせ迷いやすくなっていた。

(うわー…ほんとにこの霧がだるいな…。)

霧について思っているとネモが喋り始めた。

「霧って雲なのかなぁ。」

するとソロが面倒をみるようにすぐに返事をした。

「雲?」

「うん。霧と雲って似てない?」

それを聞いたランが喋った。

「まぁ、似たようなものではあるね。そもそも霧も雲も水だしね。」

「そーなの?!ランは物知りだね!」

とネモが言った。

「ありがとう。そうそう、水だから…」

ランが立ち止まった。

「水…水!!そうだ!水だ!!だったらこの邪魔な霧を取り除ける…!」

ラン以外の二人は何も分かっていないようだった。

そしてランが再び喋り始めた。

「誰か、水の魂いない?!」

「ぼ、僕が水の魂だよ?」

「キターーーー!!!よっしゃ、じゃあソロさんに頼みたいことがある!」


ランが一通り説明して、ソロにお願いした。

「…つまり、ここら辺にある水を全部吸い取るってこと?」

「そゆことそゆこと!いける?」

「うん!だって、僕。水魔法得意だからね!」

ソロがそう言うと目を瞑り両手を前に突き出した。

するとみるみる霧が晴れてゆき、辺りは見覚えのある景色へと変化した。

「ありがとう、ソロさん!」

(やった!これで迷わずにいける!)

そう言おうとしたその時、

「あっ!おうちだー!」

「あ、本当に?どこにあ…えっ!!!」

霧が晴れてランが振り返るとそこには大きな豪邸が一つだけあった。

ランが思わず口を開けたままにしているとソロが

「いらっしゃ〜い、ここがうちだよ〜!」

と手招きした。

(ネモちゃんとソロさん…お嬢様とお坊ちゃんだったんか!)


すると急にソロが後ろを向いた。

あの時みたいにまた黙っている。

「シゾラ兄さんっ!」ソロがそう呼びかけると木陰から顔が出てきて瞬時にこちらに来た。

「ソロ!怪我とかしてないか?ごめんな、俺がしっかり見てなかったばっかりに…。」

「ううん、大丈夫!友達のランが助けてくれたんだぁ!」

そう言うとシゾラはランの方に身体を向けて、膝をつき頭を下げた。

「うちのソロを助けてくれて本当にありがとうございます。私はシゾラと申します。以後お見知り置きを。」

ランは急にとても丁寧な態度に驚き、

「えっ、あ、どうも…ランと言います。よろしくお願いします。」と反射で返した。


そんな事務的な会話をしているとどこからかネモが母親を連れて来た。

ここにつくなり母親はすぐに喋り始めた。

「こんにちは、初めまして。この子達の母親、ポタンです。そしてうちのソロが本当にすみません…。ソロ、あまり奥に行き過ぎてはいけません。それと天気が悪くなってきたらすぐに帰ること。わかった?」

「うぅ…はい、ごめんなさい…。」

「分かってくれたのならよろしい。」

そんな親子の会話を聞いていた。

「それと、ランって言うの?迷子って聞いたのだけれど…」

「あっ、はい。僕いまお母さんと霧ではぐれちゃって、だからそちらの遠話の授攻を持った人の力を借りたいと思っていまして…」

「あら、それは大変。すぐに連れてきますね。それまではうちでお菓子でも食べながらゆっくりしていて。」

そう言うとポタンはソロ似で微笑んだ。

そしてそこにいた全員が大きな庭をまたいで屋敷へ向かった。


─────────────────────────


客室に連れてこられるとそこはとても豪華な部屋になっており、ランの見た事がない物も沢山あった。

その部屋を見てまたランは開いた口が塞がらなかった。

そしてソファに座ってすぐ、遠話の人が来てランの母親、メルと連絡を取ることが出来た。

その時のメルの声は鼻声で既に泣いたあとだと推測できる。


そして遠話が終わると遠話の人は出ていき、ランはポタンに話しかけられた。

「そうしたら、あなたのお母様が来るまではここでゆっくりしていなさい。それと…あなた青薔薇でしょう?大変だったわね、ここでは安心して過ごしてね。」

そう微笑みながら言った。この時ランは、本当に品の高い人は心の品も高いのだと再認識した。


ソロ達と遊んでいるとメルとラカンが部屋に入ってきた。すると一目散にランに向かい、二人はランを抱きしめた。

「本当に…本当に良かった…もう二度と会えないのかと思った…」

メルがそう言うとランを強く抱き締めてからランを離した。メルの顔は涙でぐちゃぐちゃでランは申し訳ないと思った。

そこにソロが話しかけた。

「初めまして、ランのお母さんとお父さんですか?僕はソロです。ランに助けてもらいました!ラン、ありがとう。」

「いーよ、困った時はお互い様だし。」


ある程度落ち着くと「さぁ、帰ろう。お世話になりました。」とメルが言った。

ポタンが止めた。

「すみません、お母様お父様、少しお話よろしいでしょうか?」

するとポタンとメルとラカンは別の部屋に行った。

そして何も気にしない子供達はまたあそび始めた。

しかしすぐに大人達は戻ってきてメルとラカンは少し困惑した表情をしており、ポタンは微笑み続けている。そのままポタンが喋り始めた。

「ソロ、実戦練習をしましょう。」

その言葉にソロはすぐに反応し「はいっ!!」と表情を明るくした。するとソロはすぐに部屋を出てランもそれについて行った。


ラン達は広いコロシアムのような円形の広場に出た。

ソロは準備体操をしており、向こうの扉から20代後半に見える男性が出てきた。

その二人の様子からどうやらこれから戦うらしい。

しかも本物の剣で。

二人の年齢差は最低でも17年。0歳の赤ん坊が現代でいう高校生になってしまう。

(えっ、戦うの?!でも戦うってことはソロにもそれなりの実力があるっていうことか…?)

そう思っているとシグモが手を挙げて声を上げた。

「只今より、ファリソン・ソロとプレイグ王国、第二騎士団、団長、オードナリー・ネーシ・ネスによる実戦を開始する!それでは…始め!!!」


ネスは剣に風を纏わせ、剣を振った。

剣からは無数の三日月型の風の刃が飛び交い、ソロに向かった。さらに、相手は音魔法を使いここら辺一帯の音を無くした。ラン達も何も聞こえなくなっている。どうやら相手は容赦していないようだ。

しかしそれはソロも同じであり、小さい手でありながら剣を振るって氷を生み出し風の刃を全て防ぎきった。その間にも相手は容赦なくソロの方に走って来ていた。


そしてさっきまで真面目な顔をしていたソロが強気の見た事がない笑顔になり、水を大量に出してはそれをネスを中心とした巨大なリングが上空に出来上がり、ソロは到底8歳とは思えない速さで円を描く様に走って、相手の動きを伺っている。

そこにネスは先程と同じ風の刃を生み出し水のリングを細かく切り刻んだ。

切り刻まれたそれはすぐに氷に凝固し針のような氷柱になった。その氷柱は一斉にネスへと向かった。しかし相手も先程のソロと同じように氷柱を全て防いだ。

その時だった。上に夢中になっている間にネスの目の前には人魂のように浮かんだ火がありネスは思わず後ろへ下がった。するとネスは首が濡れた。

そう、ソロがネスの背後をとり水を纏った剣で首を濡らしたのだ。

つまり、ソロの勝利である。


するとネスが喋り始めた。

「はぁ…また負けてしまいました。まだまだ未熟です。ソロ様の成長スピードは相変わらず凄まじいですね。」

「ありがとうございます、また剣を交えましょう!」

そう言ってこの勝負は幕を閉じた。


「どうでしたか?メル様の悩みにピッタリだと思います。うちのソロの為も思って考えてくれると幸いです。」

「す、すごいですね…授攻のおかげとは言えど、とても素晴らしかったです…。」

お互いの母親が話していた。何の話かは分からない。


─────────────────────────


先程の客室に戻るやいなやソロはさっきまでの戦闘が無かったかのように落ち着いた呼吸でランに話しかけた。

「ねぇ、ランっ!僕どうだった?すっごい強かったでしょう?」

「うんっ、なんかっもうっ…すっっっごい強かった!!いつも鍛練頑張ってるんだね、ソロ。」

ランの精神年齢は転生前の15歳のまま。それとは関係なくほぼ年相応の反応を見せ、感動で言葉を少し詰まらせた。

そして今まで話してきた中で見えなかった一面が見えたソロは息を吸い肩を上げて幼い顔で微笑んだ。

「えへへっ、ありがとう!」


そうしてこの日は終わりランは自分の家に帰った。

帰り際にランは言った。

「ソロ、またね。また遊ぼう。」

そう言われるとソロは嬉しくなった。


─────────────────────────


あの日から2年後。ルーローズ家一同はファリソン家のお屋敷に呼ばれた。

そこにはファリソン家の親族だけでなく、プレイグ王国の第一騎士団、団長などの所謂お偉いさんも見られる。

しかし、主役はランとソロである。

互いに成長しランは7歳、ソロは10歳となった。

ランは青薔薇が刺繍されているスーツを着て、きっちりしている。

ソロはファリソン家に代々伝わる騎士が着るロングコートに軍服や貴族服の装飾が施されたランの服とは比べ物にならないくらい豪華で上品な服であった。

しかし、ソロのその服にもまた青薔薇がある。


「こういう式は初めてじゃないから大丈夫だと思ってたけど自分事の式は緊張するなぁ…ランは緊張してる?」

「めっちゃしてる、手とか震えてるうえに指先が氷並みに冷たい。多分ちゃんと式が始まったらきっと喉渇くよ。」


そんな会話をしていたからか直後にソロの父親であるマルブルが喋り始めた。

「皆様、この度はファリソン家、三男のソロの臣従儀礼にお集まり頂き誠にありがとうございます。

ソロが今日(こんにち)から仕える相手は、青薔薇を持つルーローズ・ランです。」

マルブルに名前が読まれるとランは少し身体を震わせながら階段を二段上に上がって台に立った。

その頃にはもうすでにランの喉は乾いていたが、緊張した表情は見せなかった。

(うわー予想通りすぎて笑えてくる)


「では、ファリソン・ソロ。前へ。」

呼ばれるとソロは真剣ながらも少し微笑みながら台へ進み、ランの前で片膝をついた。さらに右手を左胸に添えた。

そして、その様子を見たランが淡々と喋り始めた。

「ファリソン・ソロ。ルーローズ・ランに仕えるか。」

「はい。」

「ファリソン・ソロ。ルーローズ・ランに生命(いのち)を捧げるか。」

「はい。」

「最後に問う。ファリソン・ソロ。この道は神に見捨てられようとも、悪魔に魂を喰らわれても、外れることの出来ない道である。光ある限り、護る術ある限り、その剣を我の為に振るえるか。」

「はい。ファリソン・ソロは貴方様の為に生命(いのち)を捧げることを、誓います。」

ソロはそう誓うとランの右手を取り、その右手を額に当てた。

「では、其方に新たな名を授ける。名は…ブルー。

よってファリソン・ソロはファリソン・ブルー・ソロとなる。」

「その名、真摯に受け取りました。」

そしてソロは顔を上げてランの琥珀色の右目を見つめた。その顔はいつもと変わらない微笑みであり、ランも微笑んでいた。

そしてマルブルが仕切った。

「ファリソン・ソロはファリソン・ブルー・ソロとなった。この誓いに皆様拍手を!」

その場に居た全員が拍手をした。

そしてこの式は幕を閉じた。


─────────────────────────


「ソロ。」

満天の星空を眺めているソロを呼んだのは主人であるランだった。

「あ、ご主人様?どうしました?」

ソロは揶揄うように歯を出して笑った。

「それが仕える相手に向ける態度かよ。」

そう言い笑った。そして、話を続けた。

「ソロ、僕の方が立場上、上になってるけど全然気にしなくていいからな。というよりかは気にしないで欲しい…かな。あくまで友達だし。」

「そうだね、たしかに、全然気にしてなかった!」

「ちょっ、一応いいとこの騎士ではあるんだから少しは気にしろよ!…まぁそれぐらいがいいんだけども。」

二人は見つめあって声を出して笑った。

その時見つめあったのは初めて会った頃とは程遠い信頼しきった目である。




そうだ、僕らルーローズ・ランとファリソン・ブルー・ソロは


あくまで親友で


年齢も立場も関係なしの



盟友の守護関係だ。

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