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VERTEX 4  作者: 銀乃矢
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21/23

最終話「栄冠」

永野の猛追も抑えた松下。


レースはファイナルラップに突入する。



サーキットの興奮はF2のレースとは思えないほど高まっていた。


観客たちの目の前ではF1さながらの激闘が繰り広げられ続けている。


お互いタイヤの性能的にはすでに限界を迎えているはずだった。


「監督、永野は、DRS使える?」

『えっと…永野は1.4秒後方だ。DRS作動範囲外だ。ただ、この差だと、もう1個のロングストレートで使われる可能性はある。』


ここヤス・マリーナ・サーキットはDRS使用可能ゾーンが連続して配置されている。


「なら、最後の連続コーナーまで耐えれれば…この勝負、勝つ!」


2位を走行する真っ黒なF2マシンを操る永野も、最後まで松下を追い抜くために頭をフル回転させていた。

「タイヤの寿命からするにもう1回勝負を仕掛けるくらいは使える。ただ、使い所を間違えれば2位も失うかもしれない。」


2個目のロングストレートに差し掛かる。

永野のステアリングのインジケーターの一部が緑色に光る。

DRS使用可能の合図だ。

「よし!来たぁ!」

永野はDRSのボタンを押す。


リアウイングの一部が開き、ジリジリと松下との差も詰まっていく。


松下もミラーを見ながら永野の挙動をうかがっていた。

しかし、永野がミラーのどこにもいない。


緩やかな左コーナーに差し掛かる。

その時、かすかにエンジン音がどこかから聞こえてきた。

「まさか…永野、そこにいるのか…!?」


松下の真横に位置する永野。

「ここだぁ!」


いつの日か、富士スピードウェイの1コーナーで松下が永野に見せたオーバーテイクを今度は永野がして見せる。


しかし、永野は気づかなかった。

リアタイヤが滑る。

「ぐっ…滑るっ…」


その一瞬で松下が再び首位に躍り出る。

そう、永野のタイヤはすでに限界まで使い切ってしまっていたのだ。



「勝負あり…だな」ピットでその様子を見ていたモントーヤも呟く。


そして、チェッカーフラッグが振られる。


1番に駆け抜けたのは松下大輝だった。

そして、後を追うように永野が滑り込む。


『松下!よくやった!チャンピオンだ!F2チャンピオンだ!』

「あぁぁぁ!やったぁぁぁぁ!」


『頑張った松下にご褒美だ!ドーナツターンしていいぞ!』

「まじすか監督!あれ憧れだったんスよ!」


ランオフエリアに入る。

そしてマシンを止め、一気にアクセルを踏み込む。


マシンが白煙を上げながら回り始める。

すると、もう1台が混ざってきた。


それは永野のマシン。

2台がドーナツターンでワールドチャンピオンをお祝いしていた。


「うぇっ…回りすぎた。」

『松下、吐くなよ?』

「大丈夫っす…多分…」

『多分って…心配になるなぁ…』



観客、マーシャルたちに手を振りながら残りのコースを走り切る。



「1」のボードの前に26号車が止まる。


マシンから降りた松下は最高の笑顔をチームのスタッフたちに見せた。


それを見たスタッフたちは手荒に祝福してくる。


すると、2位の永野が肩を叩く。

「ヒロくんやっぱ一枚上手だったね。おめでとう。表彰台でまたお祝いしてあげる。」

「あぁ。駿のオーバーテイクもすごかったぞ。最初どこ行ったか見失ったもん。」

「見失うほど?やっぱヒロくん視野狭くなるんじゃない?」

「そうかもしんねぇ。」




10分後、3人のレーサーが表彰台に集合した。


3位から順にトロフィーが手渡されていく。


そして、松下にチャンピオンのトロフィーが渡される。

それを受け取り、高く掲げる。

その瞬間歓声が湧く。


「最高だ…」



シャンパンファイトを楽しみ、チームのメンバーたちと集合写真を撮影する。



「おめでとう、松下。」

「やるじゃん、松下センパイ。」


「ジャクソンもそういうこと言えるようになったんだな。」

「う、うるせ!」


恥ずかしがるジャクソンを見てみんなが笑顔になる。



今日という日を俺は一生忘れないだろう。




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