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第三話 傭兵達との出会い

「まあ、食えよ」


ショーンは男に担がれ、王国の兵が駐屯する陣地に連れて行かれた。

苦い薬湯を飲まされ、粥を差し出されている。


「まだ一日かそこらなのに、オレを忘れたのか」

粥に手を付けず、困惑しながらも目の前の男を睨み付ける。

「忘れるわけないだろうが。悪態つく暇あるならとっとと喰え」

笑ったままだが、男の気迫に押され粥を手に取る。

軽く塩が振られたそれは、舌を経て喉を通り染み渡る。

身体に熱と活力が満ちるようだった。


「感づいてるだろうが、言っておく」

木箱に腰掛けた男が、そう言葉を紡ぎ始める。

「俺もお前と同じ、転生者だ」

予想通りの言葉に、粥を食べ終えたショーンは男と向かい合う。

「それはもう、いい…何でオレを助けたんだ。オレは帝国兵だぞ」

「くはははっ!脱走兵がぬかしやがる」

憮然とした様子で話すショーンが余程面白かったのか、男に笑い飛ばされてしまう。

俯くショーンを見据え、男が更に口を開く。


「まあ、あんな事になったがな。同郷かもしれんし、気紛れだよ、ボウズ」

そう言う男の顔は、どこか懐かしむような表情だった。


◇◇◇◆◆◆◇◇◇


少し落ち着いたショーンは、警戒しながらも男と情報交換を行った。

男の名はアルベルト。ショーンの元居た世界と同じ世界に生きていたようだった。

理由は隠されたが、ショーンと同じく人生を終えた後に神によって転生させられたという。

王国と帝国とは別の国で産まれ、今は王国を拠点とする傭兵団に籍を置いているそうだ。


「なんでわかったんだ」

「ん?転生者ってか?」

革袋に入った葡萄酒を煽り、アルベルトは意地の悪そうな笑みを見せる。

「その年であの動きだったからな。剣術はまあ、あれだが…俺の若い頃にそっくりだった」

「若い頃に?」

「無理無茶無鉄砲の馬鹿だったから、かまかけした。ビンゴだったな」

特殊な力や魔法ではなく、戦士としての経験と勘。

ショーンにはないものだった。


「それで、どうすんだ?このまま旅してまた行き倒れるか?」

「それは…」


口をつぐみ、今の状況を鑑みる。

まず、帝国には戻れない。片腕を失い、軍を脱走している。

よしんばそれが許されたとしても、あの貴族達に陥れられるのは明白だし、対抗手段もない。


かといって流浪の旅に出たとしても、隻腕ではアルベルトが言うように野垂れ死ぬか、魔獣や野盗にやられるだろう。


そんな堂々回りの状態に、声がかけられた。

「お前がいいなら、団にくるか?」

驚き顔を上げたショーンの目に、これまた憎らしい意地の悪そうな笑顔が写っていた。


◇◇◇◆◆◆◇◇◇


「こいつが今日から入団するショーンだ。俺が面倒見るから皆、宜しく頼む」

次の日の早朝、アルベルトはショーンを団員達に紹介していた。

何故こんな事になったのか、ショーンは頭を抱えたくなっていた。

昨夜、天幕の中でアルベルトに言いくるめられたのだ。

だが、今にして考えてみても最善手はこれしかなかった。

「よろしく、お願いします」

ショーンは決して頭が悪いわけではなく、ただ人生経験に乏しいだけだ。

だが、それこそがアルベルトとショーンを隔てる大きな壁だった。


「おう、よろしくな!」

「アルベルトさんが言うなら仕方ねえなぁ」

「気軽にいこうや、若造」

次々と声をかけられ、背や肩を叩かれる。

団員の感じを見るに、アルベルトはかなり信頼されているようだ。

困惑と照れくささ、そして自分の腕を斬り飛ばしたアルベルトへの複雑な感情を感じていると、団員の一人が声をあげる。

「お、団長。」


目を奪われた。

凜とした切れ長の瞳。

堅革鎧(ハードレザーアーマー)の上からでもわかる、整った長身の体付き。

後頭部でポニーテール状に纏められた、ロングの黒髪。


「何だ、またアルベルトが拾ってきたのか?」

団長と呼ばれた女性に、アルベルトが応える。

「ジェシカ。いい加減、俺の目を信用しろよ」

苦笑するアルベルトに対し溜息をつく女団長。

呆気にとられたショーンは、思わずこの傭兵団の禁句(タブー)を口にしてしまう。


「女が団長なのか!?」


「女が、傭兵団の団長やって、悪いか!!?」


団員の制止も間に合わず。

女団長の鉄拳がショーンの顔にめり込み、吹っ飛ぶ。


「イイのが入った!くはははっ!」

アルベルトの笑い声を聞きながら、ショーンは気を失った。


◇◇◇◆◆◆◇◇◇

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