第4話妹のプチ暴走
その後、昼休みに体育の先生にこってりと叱られた(蓮真は生活指導の先生にも叱られた)俺達は5時間目と6時間目の授業は真面目に受け、放課後に再び体育の先生に叱られ……と、ヘトヘトになりつつもなんとか家に帰ってきた。
現在はリビングのソファに寝転がり、携帯ゲームをしていた。すると、ドアがガチャリと音を立てた。少し視線をドアに向けるとそこにいたのは香織だった。その表情はどこかにやけている。
「和にぃ覗き見したんだぁ〜」
「なっ!? いや、してねぇから!」
突如爆弾を放り込む妹に俺はおどろきのあまりソファから転げ落ちそうになった。
こいつ……いきなり何を言いだすんだ? ってか、なんで知ってるんだよ。
そう思っていると再びドアが開く音がした。
「……西強君が無理やりとはいってもお兄ちゃんもちょっと乗り気だったって言ってた」
そう言い、チラリと俺の方を見た。
「なっ!? あいつーー!」
あの野郎。いつの間に真美に告げ口したんだよ……明日覚えてろよと内心で毒づく。
明日あいつにどう報復してやるか考えていると香織が自分の身体を抱きしめながら言った。
「和にぃ変態……私も襲われそう……」
そして俺から距離をとる香織。いや、それはないからな? 家族だぞ俺達。
そう思っていると、いつの間にか真美が俺の側にいることに気がついた。その顔は少し赤い。
「お兄ちゃん……」
「ん? どうした……って、まてまてまてぇ!」
次の瞬間、真美はいきなり着ていた服を脱ぎ始めたのだ。艶かしい鎖骨と艶やかな肩が露わになる。
「私が着替えてるとこ見せるからもう他の女の子の着替え覗かないでぇ!」
そう言い、暴走し始めた真美の手をなんとか抑えつつ俺は手が空いている香織に声をかけた。
「わあぁ! だからストップストップ!って、香織! 笑ってないでお前も止めろ!」
「っ……いいんじゃない? ププッ、真美ちゃんがんば!」
「うぅー! お願いだから脱がせてお兄ちゃん!」
「応援してんじゃねぇ! そしてお前は落ち着けぇ!」
その後も静まるどころか、ますますヒートアップするばかりだったのだが、母さんが帰宅し、俺達の状況に気づいた母さんが真美の肩に手を置くと何故か真美の暴走は止まったのであった。
そして夕飯時、今日の俺と真美の話を聞いた母さんは笑みを浮かべながら言った。
「ふふっ……和也もそんな大胆な事をするなんてやっぱり達也さんに似てるわね」
「だから蓮真と幹弘に無理やり付き合わされたんだよ……」
なんとか弁解を試みるも母さんは勝手に納得してしまったようで、もはやどうしようもなかった。
ちなみに達也という名前は俺の父さんの名前だ。現在はアメリカに単身赴任中で現地で知り合った同僚とバリバリ働いているらしい。
「でも、乗り気だった」
そう言い、ぷくりと頰を膨らませるのは真美だ。その表情は何故か怒っている。
「だからあれは……てかなんでそんなに怒ってるんだ?」
「……別にー」
ぷいっと俺から顔を逸らす真美。うん、これは間違いなく怒っているな。
すると急に香織が俺に近づき、囁いてきた。
「和にぃ、なんで真美ちゃんが怒っているか分かってないでしょ〜」
「当たり前だ。別に俺は何もやってないからな」
「じゃあ、教えてあげよっか?」
「えっ? ほんとか?」
香織の表情は何故かニヤニヤとしていた。しかも何故か真美をチラリと見て。
「実は……真美ちゃん、和にぃのことが……」
「わあぁ! 香織ちゃんストップううぅ!」
香織がそこまで囁いた次の瞬間、真美は何かを感じとったかのように席からガタンと立ち上がり、物凄い速さで香織を俺から引き剥がした。
「うぐっ……もうすぐだったのにぃ」
何がもうすぐだったのやら。
「香織ちゃん、それは絶対言っちゃだめ」
「うぅ……だって和にぃ真美ちゃんが動いても全然気づかないじゃん……」
とまぁ、なんか言い合っている。
ふと母さんを見ると、その表情はとても笑っている。
「って、お前ら晩飯中なんだから暴れるなよ。行儀悪いぞ」
「ふふっ。元はといえば和也だと母さんは思うけどねぇ」
「なんで俺っ!?」
その後、更に一悶着あったがそれもすぐに静まり、ちゃんと食事を摂るのであった。
そしてほどなくして夜がきたのだが……
「おい。なんでまた一緒なんだよ」
俺が抗議すると、右隣に布団を敷く真美は当然とばかりの顔をしながら言った。
「だってお兄ちゃん、今日も一緒に寝てくれる? って言ったらもちろんだって言ったもん。まさか嘘じゃないよね?」
じぃぃと俺の目を見つめながら言う真美。ちょっと怖えぇ。
「和にぃ、今のうちに女の子に対して免疫つけておかないといざという時には困るよ?」
ちゃっかり左隣に布団を敷く香織は完全に面白がっている。ほんと勘弁してくれ……ってか、免疫ってなんだ免疫て。
「あっ、でも 和にぃにはもう一緒に寝ても大丈夫な将来のお嫁さんがいるから大丈夫だっけ?」
「いやそんなのいねーよ!? どこの誰だよそいつ!」
コイツ……捏造してまで俺にいたずらをしたいのか!?
すると、何故か香織は盛大にため息をついた。
「はぁ……和にぃなんにも分かってない。お休み」
「おい、分かってないって何だよ?って、まじか……」
問い返すが香織から返事はなく、思わず顔を覗くと既に眠りに落ちていた。やれやれ、あとは真美か……そう思い、真美の方を向くと……
「すぅ……すぅ……」
「真美もか……まぁいっか」
既に寝ていた真美に掛け布団をかけてやると途端、真美が何かを呟き始めた。
「っ……和也……」
「っ!?」
久しぶりに俺を名前で呼んだ真美の声は2年前のあの頃と何も変わっていなかった。そしてそれと同時に何故か俺は心の中で密かに動揺していた。
何なんだ……? なんで俺は真美に名前で呼ばれるとドキッとしたんだ?
…分からない。
そんな俺を尻目に真美は更に呟く。
「っ……ずっと一緒に……いてね」
その言葉は俺の心の中に深く染み渡るのであった。
「ちゃん……お兄ちゃん!」
「っ! ……って、もう朝か……」
俺を呼ぶ声に目を開けると、俺の視界には真美の顔が映っていた。
と、そこへ俺の言葉を繋げるかのように声をかける人物がいた。
「そうだよ和にぃ。早く食べてでないと学校遅刻するよ?」
そう言う香織は既に学校指定の制服に身を包み、鞄を肩に掛けていた。
あれ? なんでもう制服に……て、
時計を見た瞬間、俺の脳は一気にフル覚醒した。
「まじかよ!? もう8時じゃねぇか!」
「そうだよ! お兄ちゃん! ほら急いで急いで!」
そう言い俺の手を握る真美。
真美に急かされ、慌ててリビングへと向かう俺。
やれやれと呆れる香織。
その様子を微笑ましく見守る母さん。
こうして再び俺達の1日は始まるのであった。




