タコとイカ夫婦の子供達
平穏な生活が半年続いていた。
ぼんやりとクッションで寝転んでまどろむほど、暇で平和。
もちろん会話も習っているが、難しい。
毎日共通用語を1時間、タコ女が教えてくれる。
「そういえば、タコ女って、いくつなんだろう」
高級っぽいマンションに住み、ペットもいて、なんだか羨ましいくらいの生活。
「さあ」
ラーティも知らないらしい。
そういえば、イカとタコだとどんな子供が生まれるのだろう?
と、想像していたら。
「ヤヤコ、ラーティ(会話が出来るようになったので、呼び名を改めた)」
と、タコ女がペット部屋へやってきた。
「どうしたの?ハーバスさん」
「今日、うちの子達が遊びに来るから。それでね、何でもあの子達、地球人を連れてくるって」
タコ女の言葉に、私とラーティは驚いた。
「子供達?」
「え、ハーバスさん子供いたの?」
来るという言葉よりも「ソコ」だった。
「あら。私は夫と結婚生活20年よ。子供達はそれぞれ巣立って、あちこちに行ってるのよ」
イカ男も現れて
「そうそう。結婚してるのもいるぞ」
二重の驚きだ。
「何人?(この場合、何匹になるのかな?)」
「10人。私達のどちらかに似てるのよ」
その言葉に思わず「へえ~」
2人で顔を見合わせた。
「凄い、10人」
「きっとイカとタコだから、1度に生まれるのじゃないかな」
ついつい地球のタコとイカの産卵。
大量に産む光景を思い出していた。
「あれは海中で産卵だったような」
「そうだね。何万匹だったよね」
彼ら夫婦の言葉を理解し、納得したのは、縦長のタコとかイカ、横幅の大きなイカとタコとかの
若い男女が夕方から現れてからだ。
何でも、地球でいうところの、家族が集まる行事が存在していて、
今月がそのイベント週間になるとか。
(お正月みたいな)
「ただいま~」
10人のイカとタコに奥さんやご主人に子供を連れてきているので、
(独身もいるらしいが)
26人が広いと思っていた大きなリビングでわいわいと騒ぐ。
「凄いね。3Mとか5Mの巨体がこんなに集まったら、踏みつけられたら怖いわ」
「ああ。そうだね」
ラーティは、慣れているのかペットの部屋から出ないつもりだ。
「安全第一だからね」
前に蹴飛ばされて、しばらく動けなかったことがあるとのことなので
恐ろしい。
一緒にペット部屋で2人で寛いでいると、ドタドタ外で騒ぐ音と声がしたかと思うと
タコ女と3人の少し小柄なタコ女とかイカ男が来た。子供達なんだろう。
2人で、彼らの様子を見ていると
「ヤヤコ、ラーティ」
タコ女に名を呼ばれた。
タコ女に呼ばれて振り返ると、移動用のカゴを持っていた小柄なタコ女がその扉を開けた。
じーっと、成り行きを見ていると、そのカゴから地球人の男性が1人出てきた。
辺りを見回しながら出てきたかと思うと、こちらを見た。
パッと顔の表情を変えて、こちらへ走ってくる。
「おい、君ら地球人か?」
彼は、日本語を話した。
私もラーティも頷くと、彼は「うわ~、やっと仲間に会えた」と喜んだ。
彼は会話が出来るツールを持っていないので、その喜びの言葉は
私とラーティにしか通じなかった。
「貴方も地球からさらわれてきたの?」
私が尋ねると、彼は頷いた。
「そう。せっかく有休使って、仲間と海に遊びに来てさ。海で泳いでいたらさ。
気が付いたら、変な生物がいっぱいで。どうしようと思っているうちに
あのタコみたいなのに捕まった」
私もラーティも「ああ」と、自分達と同じような感じなので、うんうん頷いた。
「君らも?」
「そう」
「あ、君は外人?でも、言葉が理解出来るなんて」
驚いている男性に、まずはこちらの情報を伝えてみる。
そうして、彼は落ち着いたのか今までの自分に起こった経緯を理解したようだ。
彼は日本人で、会社員。
海水浴場で浚われたらしい。
タコ娘には、「ヨーシ」と呼ばれているが
本名 中道 芳 (なかみち よし) 27歳 黒髪 黒目 175センチ
SEでありいろいろ物作りが好きな会社員。
それからどうやら私達の様子を伺っていたタコ女に視線を向けて
腕の会話ツールで説明を始めると、タコ女も頷いた。
隣りで話を聞いていた子供達は、会話が出来るなんていいなあと騒いでいた。
「彼を飼っているのは、この子なの」
と、タコ女は隣りの小柄なタコ女を示す。
「それで?」
「この子は、ヤヤコと子供が出来たらいいなって、ヨーシを連れて来たの」
ラーティが憤慨し、私は蒼白になった。
「いやいや、どうしてそうなるの?」
タコ女にくいつくと、彼女は娘は自分が地球人のペットを飼っていることを
知っていて、自分も飼ってみようと希少な地球人の販売ルートを探して
なんとか買ったものの男性しかいなかった。
地球人女性は販売していなかったので、その男性の相手が欲しいと思ったらしい。
さらに、地球人を勝手にさらっている事実が宇宙観察軍にバレて
浚っていた闇ルート組織が一掃されて、
今後地球人は手に入らないそうだ。
タコ女が利用していたペットショップも摘発。
タコ女も事情聴取を受けたそうだ。
そんなことは全く知らず。
ただ、宇宙へ連れて来てしまい、こちらの情報が地球人たちに洩れてしまう可能性を考え
全世界に地球人保護の規則が出来て、現在飼われている地球人については現状維持
という法律が先日出来たそうだ。
「で、希少価値のある地球人女性が私?」
「そう」
「で、増やしたいと」
「そう」
隣りで聞いていたラーティが、「一妻多夫?」とタコ女に聞くと
タコ女が頷いた。
「いえ、私は無理」
ヤヤコは宣言するとひとりその場から、自分達の個室へ逃げた。
慌てたラーティが扉を開けようとする前に施錠。
話しが分かっていないヨーシに、ラーティが今の会話の説明をすると
「そんな宇宙人と会話が出来るツールがあるのはいいな」
から
「え?彼女を伴侶にさせるつもりで連れて来られたの?俺」
と
「え?で、俺は彼女に逃げられたの?」
と、最期まで話を聞いて、落ち込んでしゃがみこんだ。
タコ女の娘が彼らは何を言っているのと、母親に尋ねたので、母親であるタコ女は
娘の連れてきた地球人男性がヤヤコに振られたことを告げると
ショックを受けていた。
それでも何とかしようと、8本ある内の1本がヨーシを掴み上げ
「うわあ、な、なんだ~」
母親にヤヤコが逃げた部屋の扉を開けるよう要求。
母親は困った顔をさせながら、ラーティへ視線を向けた。
「あの男の子が、ヤヤコの彼なのよ」
なんとか諦めさせようと、タコ女がラーティを吸盤で掴み、娘の前に出す。
「否」
自分のペットの彼女にしたいと文句を言い、ヤヤコをしばらく貸してと言い出す始末。
母娘喧嘩まで発展し、父親であるイカ男が他の子供達に呼ばれ、
リビングから慌てて止めに来た。
「やめなさい」
「だって、私はヨーシにヤヤコがいるの~」
と、喚いて泣き出す。
イカ男は、げんなりしながら
「ハーバス。貸すのはダメなのか?」
と、娘の肩を持つ。
タコ女は、黙って掴んでいたラーティをイカ男の前に出す。
「ラーティ、はっきりと私の夫に言わないと、ヤヤコを娘に取られるわよ」
と、告げるので、ラーティは慌てて会話ツールを向けて
「あ、ええと。ヤヤコは僕の奥さんなんです」
と、イカ男に力強く伝えた。
イカ男は、地球人男性本人の言葉に
「あ、そうだった。ラーティの為に奥さん連れてきたんだ。
諦めなさい」
娘を何度も宥めて事なきを得た。
ラーティが事の顛末を扉前からヤヤコに伝えると、ようやく部屋から出てきて
友人関係ならいいよと、タコ娘にツールで話をすると、
彼女も頷いてくれた。
ペット同士で話をしてもいいよ と、ヨーシはその場に降ろされた。
タコ女夫婦の家には、子供達は1週間滞在するので
その間は、ヨーシは自由を約束された。
ヨーシは、自分が犬扱いにショックを受けたが、自分の運命を受け入れるしかないのかと
かなりショックを受けていた。
まあまあと、ヤヤコが慰めると
「女性が少ないのなら、一妻多夫じゃないのか」
と、強く主張しだして、結局1週間の滞在期間は、ヤヤコは友人関係を主張して
3人で揉めたのだった。
「ラーティもヨーシも。よく聞いて。私はまだ16歳だから」
と、言ったものの。
あの例の試写会をした内容のものを
タコとイカ家族で夕食の後に試写会をしてくれたので
(この家に来てから撮影がされているので、ヤヤコの半年分の記録がある)
参加して一緒に見ていたヨーシとラーティからは
体型は成人してるよ と感想を言われた。
もちろん、ヤヤコはお風呂場のシーンで2人が見ないよう妨害したが
「騒いで煩い」と、タコ女に持ち上げられてしまい無念の思い。
ヨーシが、「まるで、AV映画を観ているようだったなあ」と呟いて
ヤヤコは身の危険を感じた。
その後。
ヨーシも会話ツールをタコ女から受け取り、飼い主とペットで
なんとかヤヤコを手に入れようと、何度も訪問開始されていた。
タコ女とイカ男にとって、ヤヤコは地球でいうところの犬扱いなので
「子供、産んであげたら?」
と、後で軽く言われてしまい
また部屋に閉じこもる。
ラーティが苦労したことは
言うまでもない。




