第1話 プロローグ:泥中に咲く意志
身体が……動かない
人類の生存をかけた人魔大戦。俺は勇者として戦いに参加し、魔王との死闘の末に地に伏していた。
身体には無数の傷を負い、一際大きく刻まれた切創から止めどなく血が流れ出し、俺の命は刻一刻と失われつつある。
視界の端には俺と共に最後まで戦った剣聖が見えるが、片手足を失った状態だ……生きているかどうかもわからない。
「……どうやら、終わりみたいね」
頭上から、感情のない平坦な声で人魔大戦の終焉が告げられる。血液を失い朧げとなった思考は、今更になって俺達人類の敗北を理解する。
「敵ながら称賛するわ。賢者と拳王を失った状態でここまで私を追い詰めたのだから」
賢者と拳王……魔王四天王との戦いの最中で命を落とした仲間達。確かに2人がこの場にいれば結果は変わっていたのかもしれない。余力は残しているだろうが、魔王も少なくない傷を負っていたのだから。
……仮定を考えても意味はないか
結局のところ、俺は犠牲なしには前に進むことができなかった。世界を救う勇者だのと言われてきたが、実際は救うどころか、助けられてばかりだった。
賢者は策を弄する四天王に翻弄された俺達の身代わりとなり
拳王には猛毒を扱う四天王の攻撃から庇われた
2人だけじゃない、ここまでの道のりで俺は多くの人達に支えられ……護る事ができなかった。
学園の恩師や友人、王女様……そして故郷の家族。
最初は成り行きだったのかもしれない。勇者と言われても正直実感なんてなかった。けど、幾つもの想いに触れ、いつしか俺の中には確かに信念とも言える覚悟があった。
その信念に従い、今この瞬間まで戦い続けてきた。
でも、結局はこのザマか。
どれだけ信念があろうが関係ない。最後まで頑張ったからって何だって言うんだ。結果を残せなかった今までの道のりは全て……
無意味だった。
「意味はあったわ」
まるで、思考でも読まれたかのようなタイミング。魔王ならそれぐらいはできるのかもしれない。
「貴方には納得できることではないでしょうね。けど、確かにここに意味は成ったわ」
「……意味がわからないな」
「まだ喋れたのね。貴方は意味なんて分からなくていい、全てはここから始まるのだから」
俺の暗澹たる想いの真逆を行く言葉。勝者故の余裕からくるものなのか、俺にはこいつの言うことが理解できそうにもない。
でも
ここから始まる?
そうだな、もし本当にまだ先があるなら……こんなふざけた結末は認めない。
俺は
"こんな結末で終われない"
瞬間、世界に不思議な音が満ちた
初めまして、真面目に不真面目、真面眼鏡と言います。
物書きは初めてになるので、ご意見ご感想を頂けると幸いです。




