第63話 花火やろうぜ2
王宮がてんやわんやの大騒ぎになっているころ。
まさかそんな事態になっているとは夢にも思わない私たちは、いつも通りの変わらない生活を続けていた。
ドラゴンたちの広間の扉がバンッと勢いよく開かれた。
「新しい花火を開発した」
広間に駆けこんできたゼクスさんがドヤ顔で言った。
その手には細い棒状のものが何本か握られている。ついに完成したらしい。
ドラゴンのブラッシングの途中に押しかけられたケインさんは、心底面倒くさそうな顔をしていた。
「発案は私です」
私もゼクスさんにつられてドヤ顔になってしまう。
「俺はまだ仕事中なんだが——」
「これは手で持つ花火だ! この棒の先に火をつけると花火が出るんだぜ!! すげーだろ!!」
呆れ顔のケインさんの言葉を遮って、ゼクスさんが説明をつづけた。
そう。私たちが開発したのは手持ち花火だ。
ゼクスさんが花火を上げたときに話して分かったことだが、この世界には打ち上げ花火はあるが、手持ち花火はなかった。
そこでゼクスさんに手持ち花火を教えたところ、案の定興味を持ったゼクスさんが開発に乗り出した。
私が手持ち花火について言葉で伝えるのに手間取ったこともあり、それらしいものができるのに一週間近くかかってしまった。でもその分、完成度は高くなったと思う。
元の世界の手持ち花火そっくりのものができあがった。それにゼクスさんの魔法も追加して、さらに面白いものがたくさん作れた。
それでもまだ納得がいかなかったらしいゼクスさんが「最終調整をする」といってしばらく部屋に引きこもっていたが、やっと本当に完成したらしい。
「私の元の世界にあった花火をゼクスさんが作ってくれたんですよ~」
「花火を持つなんておもしれーこと考えるよな!!」
黙々とドラゴンのブラッシングを続けるケインさん。
それを無視して、となりで好き勝手にしゃべり続ける私たち。
「ゼクスさんの魔法のおかげで、元の世界では作れないような花火もたくさんできて面白いことになりました。これなんて、星形の火が出るんですよ。すごいですよねー」
「俺が作ったんだからすげーのは当然だろ!」
「国家転覆はどうした」
根負けしたケインさんが呆れた声で言った。
「はー? 花火なんて、俺の計画の片手間でやってるに決まってんだろ!」
「計画、進んでるんです?」
「すすすすすんでる!!! 進んでる!!! 当然だろ!!!」
ゼクスさんがあからさまに挙動不審になって焦りだした。
ゼクスさんは焦ると声が明らかに大きくなるのでわかりやすい。そして面白い。
これは全く進んでないな。まあ、いいけどね。
「そんなことより! せっかく作ったんだからこの花火やろーぜ!!」
ゼクスさんが花火を持った手をケインさんに突き出した。
ケインさんは目をぱちくりしている。私も、まさかそうくるとは思っていなかった。
「え、今からですか? まだ昼ですよ?」
「俺はまだ仕事が残っている」
私とケインさんの言葉も、ゼクスさんには効かない。
「今日くらいいーだろ! 今すぐやろーぜ!」
全く引く気がないらしいゼクスさん。こうなったらもう聞かないんだよね。
ケインさんも何を言っても無駄だとわかったのか、ため息を一つついた。
「……どこでやるんだ」
「! 表の庭でやる! さっさと行こうぜ!!」
ゼクスさんはそう言うが早いか、さっさと走って行ってしまった。
行動が早い。
さて、ゼクスさんは花火だけを持って行ってしまったから、私は準備をした方がいいかな。
「花火をやるなら、水を入れたバケツを持っていかないとですね。私、用意してきます」
「いいですよ。俺が手を洗いに洗い場に行くので、ついでに持っていきます」
「そうですか? ありがとうございます」
じゃあ私が準備することはないかな。火はゼクスさんが魔法で出してくれるだろうし。
明るい時間の花火って初めてだ。楽しみだな。
ちょっと見づらいかもしれないけど、彼らとならそれもきっと楽しめる。なんなら、夜にもう一回やってもいいしね。
私は足取り軽く廊下を進み、玄関の扉を押し開けた。




