第26話 獄中にて
薄暗く、埃っぽい牢の中。
窓はなくて、外は全く見えない。どこからも日が差さず、一日中小さな明かりが魔法で灯っているだけだから、今が何時なのかもわからない。
王宮に用意されていた煌びやかな部屋とは雲泥の差だ。とはいえ、別にそっちに戻りたいとは思わないけど。
私はここに連れてこられる途中にも、牢に入れられてからも、「スキルなんてない」「何かの間違いだ」と繰り返し伝えたけれど、誰も話を聞いてはくれなかった。
それでも他にできることはないので、何度でも檻にかじりつくようにして牢番の騎士に同じことを言い続けた。
「だから! 私は本当に何の能力もないんです!」
「はいはい。ロックスを洗脳したんだろ? あと数日もすれば王都の広場で公開処刑だから、もうちょっと待ってろって」
あくびをしながら返された。
一体、ロックスさんは何を言ったんだ。こんな冤罪を吹っ掛けられるほどの恨みを買った覚えはないんだけど。
「そんなことしてないです! ロックスさんとなんて、ほとんどまともに話したこともないのに——」
「わかったわかった。俺まで洗脳されたくないから、もうそれ以上しゃべんなって」
そう言って、それ以降は何を言っても全て無視されるようになってしまった。
*
それから何時間か経ったころ、コンコンと扉をノックする音がした。このフロアの外側に通じる扉からだ。
それを聞いて、うとうとしていた牢番がゆるりと立ち上がる。
牢番の交代かな、と思っていると、牢番はなんとルークさんを伴って私の牢まで戻ってきた。
「ようやく正体を現したみたいだな。ロックスを洗脳したんだって?」
「してません」
私はルークさんの目をまっすぐに見て答えた。
その瞬間、彼は鉄格子の隙間から腕を入れ、私の襟を掴んで勢いよく引き寄せた。
頭がガンッと鉄格子にぶつかる。痛い。
「俺の仲間も、この国も、絶対にお前らの思い通りになんてさせない。この国がお前ら転移者どもの思い通りになることはもう二度とない。ざまぁみろ」
言いたいことだけを吐き捨てて、ルークさんは帰って行った。
ルークさんが扉の外に消えて、ようやく力が抜ける。
私は壁に寄りかかったまま、ずるずると座り込んだ。
まずい。本当にまずい。
牢番の人も、あと数日もすれば処刑って言ってた。このままじゃ本当に殺されてしまう。
突然知らない騎士が剣を振りかぶってきた、あの時の光景が、あの時の恐怖が脳裏に浮かんで、また身体がガタガタと震える。私は膝を抱えてうずくまった。
死にたくない死にたくない死にたくない!!
あんなに怖い思いはもう二度としたくない!
絶対に、何とかして逃げるんだ!
……処刑は広場だって言ってた。
それならこの牢から移動させられるときに、死に物狂いで暴れて逃げよう。もうそれしかないだろう。
そんなことをしたらどんな目に合うかわからないけど、どっちにしろ大人しくしてたって処刑されて殺されるんだ。
……やるしかない。
私はうずくまった体勢のまま、静かに拳を握り締めた。




