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第25話 ロックスの混乱

 どうしてこんなことになってしまったんだ。


 騎士団宿舎の端にある懲罰室で、俺は頭を抱えた。


 懲罰用の部屋に入れられてはいるが、別に罰を与えられているわけではない。転移者に洗脳された状態では何をしでかすかわからないからと、隔離と拘束を兼ねて、内側からは開けられない部屋に入れられているだけだ。


 その期間は今週末まで——転移者の処刑が完了するまで。


 転移者による洗脳は、転移者が死ねば解ける。そのことは二番目の転移者が洗脳のスキルの使い手だったことから分かっている。


 でも、今回は違う。あの転移者は何もしていない。全部誤解なんだ……!


 このままでは、あの転移者は何もしていないのに殺されてしまう。

 何もしていない、無実の人間が勘違いで処刑されるなど、そんなことが一国の対応として許されるわけがない。


 だが今の俺が何も言っても、『転移者に洗脳されておかしくなっている』としか受け取ってもらえないだろう。

 俺が懲罰用の部屋にいるというのが広まったのか、何人かの騎士が部屋の前まで話しに来てくれた。その全員に、「今回の転移者は何もしていない」と伝えたが、誰もが「転移者の処刑が終われば、全部わかるようになるからな」と諭すような声色で言うだけだった。


 ルークも来てくれた。

 ルークは転移者のことをずいぶんと嫌っているようだったから、難しいだろうとは思いつつ伝えたが、結果は言わずもがなだった。全く取り合ってくれない。

 ルークは別に冷たいやつじゃない。俺の体調を気遣ってくれて、心配してくれてもいるのだ。でも転移者については何を言っても信じてくれない。それがどうしようもなく歯がゆかった。


「くそっ、どうしたらいいんだ……」


 頭をかきむしったとき、コンコンと軽く扉を叩く音がした。


「おーいロックス~。元気か~?」


 この緊迫している状況に似合わない、気の抜けた声が聞こえた。ケインだ。

 俺は勢いよく立ち上がり、椅子が倒れるのも気にせず扉に詰め寄った。


「ケイン! 一体どうなっているんだ!? どうして俺が転移者に洗脳されていることになっている!? 俺は——」

「洗脳以外に何があるんだよ。お前はこの国の敵に同情してするようなやつじゃないだろ」

「だから違うんだ! お前も見ていただろう! 今回の転移者は何もしていない!」

「こうしておまえがおかしくなってるのが、転移者が何かやってる証拠だろ」


 ……だめだ。ケインでさえ全く話が通じない。


 こんなことになるとわかっていれば、誰にも話さなかったのに……後悔しても時間は戻らない。

 このままでは他でもない俺のせいで、あの転移者は殺されてしまう。無実の少女を見殺しにして、俺はこの先も騎士を名乗れるのか。

 しかしこの部屋での謹慎は騎士団長からの命令でもある。もし鍵を壊すことができたとしても、勝手に出たりしたら抗命になってしまう。


 何としてでも、処刑までに彼らを説得しなければ。

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