第10話 初仕事はメイド服で
文官さんとの話が終わると、ソフィアさんがメイド服を持ってきてくれた。
人生初のメイド服……なんて感慨を覚える間もなく、急いで着替えて庭園に向かう。話はすでに通っていたらしく、待っていてくれたメイドさんが手順の説明をしてくれた。
そのメイドさんが、説明の最後に笑顔で言った。
「転移者様が飽きてしまわれましたら、その場で終わりにしていただいて全くかまいませんので」
……これは暗に邪魔だと言われているのか、というのは私の考えすぎだろうか。
「えっと、それはどういう……」
「? そのままの意味でございます。本来転移者様がこのような仕事をされる必要はないのですから」
私、邪魔だったかなぁ……と思ったが、
「……が、がんばります」
そう返すほかになかった。
この世界に来た日に窓から見えた美しい庭園。その端っこの一部をほうきでざかざかと掃いていく。
メイドさんたちとお話でもできるかと思いきや、それぞれの担当の区画があるらしく、みんなさっさと遠くに行ってしまった。
まあ、この庭園めちゃくちゃ広いもんね。そうでもしないと終わらないか。始めた直後からいきなり一人でちょっとさみしいけど、仕事だし仕方がない。
元の世界でもバイトはやっていた。本屋だったけど。これもバイトだと思って頑張ろう。
そんな私の近くにいるのは、護衛と言ってついてきた騎士のロックスさんとケインさんの二人だけだ。近くといいつつ、二十メートルくらい離れたところにある王宮の壁際に立って、私を視界に入れている状態だ。護衛ってそれでいいのか……?
そもそも、私みたいなのに護衛が要るのか?とも思うけど、王宮の人たちはみんな私に特殊な能力があると思っているからこその対応なのかな。……何もないって判明したときにどう思われるのかが今からちょっと怖いけど、でも私はちゃんと最初から正直に言ったもんね!
あれこれと考えつつも、手は止めずにひたすらゴミや落ち葉を掃いていく。
そうして高いところにあった日が少し傾いてきたころ、言われていた区画の掃除が終わり、目の前の石畳にはまあまあな大きさのゴミの山ができていた。
まずい、ちりとりのある場所を聞くのを忘れてた。仕方ない、近くにいるだろうメイドさんに聞こう。
「……本当に全部掃除されたのですか」
一番近くにいた、最初に説明をしてくれたメイドさんを呼んできたら、私の作ったゴミの山を見て目を見開いた。
途中で放り出すと思われていたのか。ちょっと心外だ。私だって掃除くらいできるんだぞー!
「はい。それで、ちりとりはどこにありますか?」
「ただいまお持ちします」
「あ、場所を教えていただければ、自分で取りに行きます。また庭園の掃除をすることもあるかもしれないので」
「…………承知しました。ご案内します」
メイドさんは苦虫をかみつぶしたような顔をしていた。
なんで? 私そんなに変なこと言ってないよね?
世界が違うと常識も違うのだろうか。不安になってしまう。
そんなこんなで掃除が終わって部屋に戻ると、ソフィアさんが待っていた。
「転移者様。贈り物が届いておりますので、ご確認ください」
そう言って手で示された部屋の一角を、つられて目で追う。そこには大量のプレゼントの箱が、天井近くまで山のように積みあがっていた。
「……いや何で?」




