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三谷志  作者: 海星
12/19

性癖

 どこまで作り話で、どこまで本当の話かわからない。

 創作の話と本当の話が入り雑じっている。

 トロイの遺跡が見つかるまで、『トロイ』は『トロイの木馬』を始めとしたお伽噺だと思われていたし、大昔の王『ギルガメッシュ』もギルガメッシュが足蹴にした、という他国の王の石碑が見つかるまで、フィクションだと思われていた。

 だから、新事実が見つかって今までお伽噺だとされていた話が、『実話だったんじゃないか?』と言われるケースは実は少なくない。


 これからの話もどこまでがファンタジーで、どこまでが実話なのか定かではない。


 神に決まった形などない。

 神に決まった性別などない。

 半神のロキは雌馬に変身し、魔法の雄馬を誘惑する。

 それでロキは六本足の馬、スレイプニールを産む。

 ロキはヨルムンガンドなどの男親でもあるが、スレイプニールの母親だ。

 地上に現れた神など、多くの場合が気分次第のハチャメチャで、何を考えているのかわからない。


 太古の大陸の生物を率いていたのは三頭の神獣だった。

 一頭はスレイプニール、六本足の馬だ。

 一頭はフェンリル、銀色の毛並みの狼だ。

 一頭はユニコーン、一角獣だ。

 三頭は仲が良かった。

 しかし譲れない意見が対立した事で三頭は決裂する。


 ユニコーン『やっぱり純愛だ。結局純愛が一番興奮する!』

 スレイプニール『そんな考えはもう古い!寝取られが一番興奮する!』

 フェンリル『女体化だ!一番興奮するのはTSFだ!』


 ユニコーンとフェンリルが苛烈にぶつかり合う。

 フェンリルの眉間にユニコーンの角がめり込む。

 フェンリルの眉間から鮮血が吹き上がり、遠くへ跳ばされていく。


 ユニコーンも突撃の勢いでフェンリルとは違う明後日の方角に跳んでいった。


 そこにはスレイプニールだけが残された。

 「寝取られこそ至高であり究極・・・」

 スレイプニールの主張を聞く者などそこには誰もいなかった。

 スレイプニールは癇癪を起こして、地団駄を踏んだ。

 スレイプニールが地団駄を踏んだ事で、大陸に大きな割れ目が出来た。

 割れ目は大陸のほぼ中央に出来、割れ目は大陸を三つに分けた。

 割れ目の底は断崖絶壁の谷になっていて底がどうなっているかはわからない。

 途中まで海水が流れ込んでいるのは間違いない。

 何故なら、大陸の割れ目は『大陸の端』、海岸まで達していたからだ。

 そこから海水が流れ込んでいるのは海岸線を見ればわかるが、どの海岸線の割れ目にも近付けない。

 『時化っていて近付けない』『レベルの高い海洋モンスターの巣になっている』などの理由だ。

 だから断崖絶壁の底を見た者はいない。

 長年大陸には小国が増えたり減ったりして『群雄割拠』という言葉が当てはまっていた。

 だが近年、小国が三つにまとめられつつある。

 その三つの国は断崖絶壁の谷を国境にしている。


 谷を越えての小競り合いはしょっちゅうある。

 それで『領土を増やした、減らした』という話も日常茶飯事だ。

 だから断崖絶壁が常に国境とは限らない。

 だが断崖絶壁の存在はあまりにも大きく、三つの国は谷を越えて大きく領土を伸ばす事が出来ない。

 結局、断崖絶壁付近で領土争いを繰り返しているのだ。

 そんな小競り合いが常に起こっているような状態で『ほぼ非戦区域』がある。

 非戦条約が結ばれている訳じゃない。

 『三竦み状態』なのだ。

 神話の時代にスレイプニールが地団駄を踏み大陸を三つに割ったという地点、『大陸の中央』だ。

 大陸は北東の『王国』、北西の『魔法国』、南の『教国』に別れているが、そのちょうど真ん中の地点が『非戦区域』なのだ。

 何故そこが非戦区域なのか?

 『間に断崖絶壁がある』という事は『守るに堅く、攻めるに脆い』という事なのだ。

 どういう事か?

 断崖絶壁の谷には吊り橋もないので、渡るには長い梯子やロープで軽装で渡る意外にはない。

 兵糧も武装もほとんどない状態で、敵陣に突っ込んで勝てるだろうか?

 それだけじゃない。

 一大作戦で、一つの国に攻め入った。

 自分達の砦はほぼ無人だ。

 例えば『王国』が『魔法国』に大軍を送り込んだ。

 今、『王国』の砦は無人だとする。

 普通に考えれば『教国』が無人の砦を占領するだろう。

 『三竦み』とはこういう事だ。

 動けないのだ。

 動いた者が負けるのだ。

 だから三国か睨みあっている大陸の中央部分は『非戦区域』なのだ。


 ベガスはランドに「どうしてもハッサン様が戦場に行きたいなら中央で三国が睨み合っている『非戦区域』に行くのはどうだろう?」と提案する。

 「『非戦区域』ですか。

 それでハッサン様が満足されるでしょうか?」とランド。

 「でも他に『危険のない戦場』なんて思い付かないよ。

 王子に危険を負わせる訳にはいかんでしょ?」とベガス。

 「それは確かに・・・」

 ランドが少し悩み、決断する。

 「わかりました!ではハッサン様の初陣は大陸中央部『ミッドガルド』ですね!」

 ミッドガルドとは『ヨルムンガンド』の別明であり、スレイプニールと同じロキの子供の名前だ。

 神話の逸話がゴチャゴチャになって、『スレイプニール』所縁の地に何故か『ミッドガルド』の名前がついている。

 だが、逸話として全く無関係という訳じゃなく、断崖絶壁の底には大蛇がいる、というお伽噺がある。

 『ミッドガルド』とは大蛇の格好をしているらしい。

 因みにフェンリルもロキの子供だ。

 ランドは「さすがにハッサン様とは言え『非戦区域』で戦いたがらないだろう。

 そこまでのアホじゃないだろう」と思った。

 だが『総大将』としてハッサンの『大将』としての逸話を聞いていたベガスの見立ては違っていた。

 「ハッサンは初陣できっとはしゃぐ。

 そして戦いたがる。

 そこまでの『アホ』だ!」とベガスは確信していた。


 


 


 

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