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桜咲く国の姫君~神様の気まぐれで異世界に召された少女は王子と騎士見習いに溺愛される~  作者: 咲来青
第8章 相対の夜、別離の朝

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第12話 お風呂に入ろう

「お風呂っ!? ここってお風呂あるの!? ちゃんとバスタブとか、シャワーとかまであっちゃったりするっ!?」


 興奮してセバスチャンに迫ると、


「は? あの……」


 『お風呂』だの『バスタブ』だのの単語の意味がわからないのか、目を白黒させている。


「お風呂よ、お風呂!――体を洗ったり、頭を洗ったり、のんびり湯船に()かったり……ってことが、出来る場所があるのっ!?」

「は、はい。『オフロ』というものが、どのようなものであるかは存じませんが……。体を洗う場所のことをおっしゃっているのでしたら、ございます」


「あ……あるんだ……」


 確認出来た瞬間、一気にときめいた。



 やったーーーーーっ!!



 そう言えば、昨夜は、ギルにおやすみのキスなんかされちゃったせいで、動揺して、着替えもせずに眠っちゃったんだもんね。

 お風呂のことなんて、考える余裕すらなかったけど……。


 でも、よかった!

 朝から、入りたいと思ってたのよね、お風呂!


 この世界――ってか、はたしてこの国に、そんなものがあるのかどーかわからなかったし、中世のヨーロッパなんかでは、ほとんど入浴しなかったとか、体臭をごまかすために香水が発明された――なんて話も、聞いたことあったし……。


 この世界って、見た目は、中世のヨーロッパっぽい雰囲気あるじゃない?

 だからちょっと、心配してたんだよね。『お風呂、なかったりしたらどーしよー?』って。


 よかった……。

 お風呂があって、ほんっとによかったぁ~~~!



「入るっ! 入る入るっ、入りたいっ!――いえっ、是非とも入らせてくださいッ!」


 大興奮で、セバスチャンに()り寄る。


「ひっ、姫様……。そのように興奮なさらずとも、既にご用意してございますので……。どうか、お気をお静めくださいませ」

「うんっ、うんっ! ありがとうセバスチャン!――あ、アンナさんもエレンさんもっ」



 もーう、嬉しくって嬉しくって。

 呆れるほどに、はしゃいじゃってるなぁ……って自覚はあったけど、抑えられなかった。



 だって、お風呂に入れるんだもん!


 シャワーなんかは、さすがにないかもだけど……とにかく、お風呂には入れるんだもん!



「――で、どこっ? どこにあるのお風呂っ?」


 キョロキョロと見回すと、部屋の中に、もう一つ、ドアがあることに気付く。


「あっ! もしかしてあれっ? あのドアの向こう?」



 旅館やホテルみたいに、大浴場みたいなものが、あるんだったら別だけど……。

 バスタブなんかがあるとしたら、あそこが怪しいよね?


 ――ってゆーか、どーして今まで、あのドアの存在に気付かなかったんだろ?



「はい。姫様のおっしゃる通り、あちらでございます。――アンナ、エレン」

「はい、セバス様」


 セバスチャンの目配せで、二人は、素早く私の両隣りに移動し、


「では、姫様。あちらに参りましょう」


 なんて言って、私の左手をアンナさんが、右手をエレンさんが取り――ドアの方へと促す。


「……え? あ、あの……二人とも? 使い方ってゆーか、入り方さえ教えてもらえれば、あとは一人で大丈――」


「「まあ、姫様! 何をおっしゃいますか!」」


 二人同時にツッコまれ、のけぞりそうになった。

 そこにすかさず、


「姫様のお体を、綺麗にして差し上げますのも、メイドの務めでございます。姫様のお手をわずらわせるなど、とんでもないことです」


 アンナさんにキッパリと言い切られ、私は愕然(がくぜん)とした。


「ちょ――っ! ちょ、ちょっと待って、二人とも!……まさか、まさかそれって……本気で言ってるの?」

「もちろんでございます。姫様は、お着替えだけではなく、こちらのお務めさえ、私共から取り上げるおつもりなのですか?――違いますでしょう?」



 ……え……。


 えーーーっ?

 そんなっ、嘘でしょ……?



 二人に代わる代わる(かどうかはわからないけど)体を洗われるだなんて、そんな恥ずかし過ぎることを――この私に、容認しろってゆーの!?



「いやっ、だってそれは――っ! いくらなんでも、恥ずかし過ぎるよっ! 赤ちゃんじゃないんだから、手伝ってもらわなくたって、ちゃんと一人で洗えるしっ!」


「洗える洗えないの問題ではございません! こちらのお務めは、私共の誇り!――でございますと共に、日課なのでございますッ!」



 ひ――っ!


 アンナさん……。

 いつものにこやかな顔が、嘘みたいに……こ――っ、怖い……。



「……エ、エレンさ――」

「日課でございます、姫様」



 はぅあ――っ!?


 意外や意外、即答ですかっ?



 ……う、うぅ……っ。

 エレンさんなら、助けてくれると思ったのに……。



「さあ、姫様。参りましょう?」


 にっこりと微笑む二人。



 でも、なんとなく……目が、笑ってない……気がする……。



「い……、いや――っ。……ヤダ……ヤダヤダ! やだぁああ~~~っ!」


 駄々(だだ)っ子のように、ふるふると首を振る私を、


「さあ、姫様。お召し物は、あちらでお脱ぎいたしましょう」


 問答無用で、引きずって行く二人……。


「ヤダっ! ヤダってばぁっ!……セバスチャンっ! 助けてセバスチャン!! 助けてぇええええーーーーーッ!!」


 最後の(とりで)。セバスチャンに助けを求めるも――返事のないまま、無情にもドアは開き――そして、閉じたのだった。

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