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桜咲く国の姫君~神様の気まぐれで異世界に召された少女は王子と騎士見習いに溺愛される~  作者: 咲来青
第7章 愛情の板挟み

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第4話 王子はキス魔?

「リア……君の心は、正直で、純粋で……時に、ハッとしてしまうほどにまっすぐだ。そんな君が、私には誰よりまぶしい。……どうか君は、そのままの君でいてくれ」


「――え? 王子……?」


 王子の口調が、急に重く沈んだのが気になって、顔だけ後ろに向けようとした。

 でも、私の視線を避けるように、王子は顔を斜め下に沈め、


「ひゃっ!?」


 私の耳たぶに、そっと唇を押し当てた。


「ちょっ! な、何して――っ?」



 ――もうダメ!

 いい加減耐えられないっ!



 私は王子の腕から逃れようと、手足を思い切りバタバタさせた。

 なのに……悲しいくらいにびくともしない。


「ちょっとっ、王子ってば!……離してっ! 離しなさいっ、この――っ、バカ王子ぃいいいーーーーーッ!!」


 いくら抗議の声を上げても、王子は一言も返さない。それどころか、ますます抱き締める力を強くして……頭に、頬に、首筋に、何度も唇を押し当てて来る。

 まるで、唇が届く範囲ならどこでもいいとでも言うように、襲い来るキスの嵐。



 なんなの!?

 ほんっと、なんなのこの人っ!?



 ……ハッ!


 もしかして、あれ!?

 たまにいるって聞く……『キス魔』ってヤツなの!?



 ……ああ、もう……。ほんっと、ワケがわからない。

 わからな過ぎて、頭がくらくらする……。



 抵抗するのも疲れて、ぐったりと体を預けてたら、やっと王子も、少しだけ腕の力を緩めてくれた。


「リア……? もしかして、怒ってる……?」

「……いえ……。怒ってはいません、けど……」


「けど?」

「……王子って、キス魔だったりします……?」


「キスマ?」

「誰彼構わず、キスして来る人のこと……です。たぶん……」



 ……私もよく知らないんだよね、実際のところは。



「誰彼構わず?……酷いな。君は私のことを、そんな風に思っていたのか……」

「……そりゃ、信じたくはないですけど……」



 ここに来てからの、王子にされたキスの数を考えたら……そんな気もして来ちゃうよ。



「私がキスしたい相手は、いつだって君だけだよ。君以外には、挨拶のキスだってしたくないくらいだ。……本音を言えばね」



 ……う……。

 そ、そー……なんだ……?



「これでも、我慢している方なんだが……。わかってはもらえないか」


 小さくこぼしてから、ため息をつく。



 ……が、我慢んんーーーーーっ!?



 その言葉を耳にしたとたん、私は王子の腕からすり抜け、数歩離れたところで振り返って、大声で訴えていた。


「我慢って、どこがですかっ!? いっつも突然、人目も気にせず――、きっ、きき――っ、キスしたり抱き締めたりするクセにッ!!」



 あれで『我慢してる』ってことになるなら、世の中の男の人達はみぃーーーんな、我慢強い人ってことになっちゃうよっ?



「人目って……それは一応、気にしているつもりだが――」


「嘘っ! セバスチャンやアンナさん達がいる前でおでこにキスしたり、カイルさんがいる前で頬にキスしたり……さっきだって、指先とかっ、み、耳たぶとかっ、く、く――っ、首すじっ……とか、とにかく色んなとこに、キスしてたじゃないですかっ! こんな城の真ん前でっ! どこで誰が見てるかもわかんな――」



 ――ハッ!

 そーよっ!


 さっきのだって、お城の中から……いや、もしかしたら城の外でだって、誰かがどこかから、見てたかもしれないじゃないっ!



 ……う、わ~~~~~っ!


 そう考えたら、今更ながら……めっちゃ恥ずかしくなって来たぁああーーーーーッ!!


 バカバカっ! 王子のバカぁッ!!



「セバスの前って……あれはおやすみのキス――挨拶のキスだろう? カイルの前というのは……ああ、二人だけで話したいと言われた時か。あれだって、しばしのお別れという意味の、挨拶のようなものだから……どちらとも、ただの挨拶だよ。恥ずかしがるほどのことではないだろう?」


「王子は恥ずかしくなくても、私は充分恥ずかしいんですっ!――だいたい、あっちの世界の私がいた国では、おやすみの時だろうといつだろうと、挨拶のキスなんて、相手が家族であっても、普通はしないんですからねっ?」


「え?……そうなのかい?」

「そうですよっ!!」


「……そうか。では、もしかして……君にキスしたのは、私が初めて?」

「当たり前でしょっ!! どーしてくれるんですかっ、私のファーストキ――っ、……す……?」



 ……え……、え~……っと……。


 どーしてそこで、謎の笑顔になるの……かな?

 ……私、一応……怒ってるんだけど……?



 何故か、王子は満足げな笑みを浮かべながら……じりじりと、こちらに近付いて来た。


「……な、なん……っ、……なんですか?……どーして笑って……こっち、来るんです……?」


「嫌だな。特に意味などないよ。……フフッ。そんなに逃げることないじゃないか」



 ……逃げてるワケじゃない。


 逃げてるワケじゃない……けど、私は少しずつ後ずさりして、王子との距離を縮めぬよう、注意を払っていた。



 ……どうしてかはわからない。

 ただ、私の中の何かが……王子の謎の頬笑みを見た瞬間から、


『気をつけろ。絶対何かあるはずだ』


 と、しきりに注意を促していた。

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