第2話 真実を告げる時
「サクラ様っ? いかがなされました、サクラ様っ? 私の声が聞こえま――」
「だーいじょーぶ! ちゃんと聞こえてるってば、セバスチャン。今、どーゆー風に言えば、ちゃんと伝わるかなぁ~って、考えてただけだから」
……そう。
問題はそれ。それなのよ。
いったい、何から話せばいいのか……。
私だって、神様がしてくれた話を、まだ、完全に理解してるワケじゃないのに。
昔は、国王様も神様と同じ場所にいた、とか何とか……あの辺の話は、特にわかんないしなぁ……。
……仕方ない。
その話をみんなにするのは、国王様に確認してみてからってことにして。
とりあえずは、桜さんは私がいた世界へ飛ばされた――って話をしよう。
「えっと……あのね。やっぱり、さく――っ、……姫様は、私がいた世界へ飛ばされちゃったみたいなの。神様がそう言ってた」
「ピャ――ッ!?……ひ、ひひっ、姫様がっ!? サクラ様の世界へ、ですと――!?」
「……まさか、本当にそんなことが……」
セバスチャンも王子も、そう言ったきり絶句してしまった。
他の世界に行っちゃったんじゃー、手も足も出せないもんね。
途方に暮れて、頭真っ白になっちゃっても、無理ないか……。
……さて。
どーしよっかな……。
姫様が、実は桜さんで、私がリナリアでした……って話は、どう伝えればいい?
……すぐには、信じてもらえないかも知れない。
神様に会えたのも、話を聞けたのも、私だけなんだし。
嘘ついてるって思われたら、そこで終わりだもの。
証拠の品――桜さんが神様と話してた時の記録が、音声として残ってるとか、映像として残ってるとか、そういうものを示せるわけでもない。(携帯やスマホがないって、ホント不便よね……)
証人として、神様を、ここに連れて来られるわけでもない。
何も……ホントに何もないんだけど……。
でも……でも、大丈夫。
最後にはきっと、信じてくれる。受け入れてくれる。
だって、異世界から来ました――なんて滅茶苦茶な話を、みんなすぐに信じてくれた。『嘘をつくような人には思えない』って、こっちが拍子抜けしちゃうくらいあっさりと、信じてくれたじゃない。
だから、本当のことを話そう。
こんないい人達を騙し続けるなんて、私には出来ない。
「あのっ!……考え込んでるとこ悪いんだけど……みんなにもうひとつ、言わなきゃいけないことがあるの」
黙り込んでる二人に、思い切って声を掛けた。二人は同時に、私へと顔を向ける。
「……え……と……。前にセバスチャン、言ってたよね? 姫様は六歳の時に、一日行方不明になって……で、無事見つかったと思ったら、すっかり性格が変わってたって」
「は?……ええ、はい。その通りでございますが――?」
「それ、変だと思わなかった? たった一日で、そこまで性格変わっちゃうなんて……おかしいと思ったでしょ?」
「は……? はい。それは、まあ……。そのようなことがあるのだろうかと、思いはしましたが……。しかしそれは、姫様が何らかの理由で記憶を失くされ、そのせいで、以前のご自身さえも、忘れておしまいになられたからかと……」
「……うん。そうだよね。そう思うしかないよね。……でも、姫様が、一切記憶を失ってなかったとしたら、どうかな?」
「ピ?……記憶を……失くされては、いない……と申されますと?」
セバスチャンは首をかしげて、不思議そうに私を見つめた。
「神様が言うにはね? 姫様は私と違って、六歳の頃に、記憶を失ってたりはしなかったんだって」
「君と違って?……それは、どういう意味だい? その言い方では、君もその年の頃には、記憶を失くしていたと……そう言っているように聞こえてしまうが?」
「えっ?……あ……えっと、それは……」
口ごもる私の顔を、前のめりになって窺い、二人は、私の次の言葉を待ってるみたいだった。
う……。
ど……どーしよう?
国王様のこと以外は、全部話そうって、決めたばかりなのに。
いざとなったら、怖気づいたりして……。
……もう。情けないなぁ。
みんなを信じてるんじゃなかったの?
「サクラ。もしや君は……君は、六歳の時にも、異世界に飛ばされた経験があるのか?……いや、違う。異世界に飛ばされたのは、六歳の時だけだろう? 今回の件では、異世界に飛ばされたわけではない。元いた世界に戻されただけだ。――そうではないのかい?」
「えっ?……ど、どーして……。王子が、なんで……そんなことを?」
今から言うはずだったことを、なんで王子が言うの……?
「そうか、やはり。……やはり君は、あの時の――!」
「へ? 『あの時の』って、何のこ――……ひゃっ!?」
拒む隙も与えられないまま、突然、王子に抱きすくめられた。
……え……何?
いったい、どーしちゃったの?
……なんでまた、こんなことになっちゃってんの!?
あまりにも予想外な展開に、私はパニクった。




