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桜咲く国の姫君~神様の気まぐれで異世界に召された少女は王子と騎士見習いに溺愛される~  作者: 咲来青
第4章 ルドウィン国の王子

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第15話 君を信じる

 私は小さくため息をつくと、横にいるセバスチャンに視線を送った。セバスチャンはそれを受け止めると、私を(はげ)ますように大きくうなずく。


「問題ございません、サクラ様。ギルフォード様は、きっと信じてくださいます」

「……わかった。セバスチャンがそこまで言うなら、絶対だよね」


 私は王子を見上げ、その瞳をまっすぐ見つめる。


「今から私がする話は、全て本当のことです。でも、あまりにも不思議なことだらけだから、すぐには信じられないかもしれません。そんな感じの話ですけど……聞いてもらえますか?」


「もちろん。これでも、人を見る目はあるつもりだ。君が、こんなに緊迫(きんぱく)した状況下で、くだらない嘘をつくとは思えないからね。――信じるよ。たとえそれが、とんでもなく荒唐無稽(こうとうむけい)な……すぐには呑み込めないような、奇妙な話だとしても」


 王子は私の視線を受け止めながら、優しく微笑んでくれている。

 そのお陰もあってか、私は少し気が楽になり、


「……ありがとうございます」


 お礼を言ってにっこり笑ってから、本題に入った。


「えっと……。まず、わかってもらいたいのは……私が、別の世界から来た人間、ってゆーことなんですけど……。その……信じてもらえます?」

「……別の世界?」


 予想通り、王子はきょとんとした。



 ……まあ、そうだよね。

 ここで、『へえ。そうなんだ』って返される方が、逆にびっくりだし。



「そうです。別の世界です。こう言っても通じないのは、百も承知で言わせてもらうと……私は、日本という国の、中流家庭の高校生で、名前は神木桜と言います」


「……ニホン……? チュウリュ……カテイ? それから――コウコウセイ、だったかな?……申し訳ないが、何のことだかさっぱりわからないよ」


「ええ、そうでしょうね。そうだと思います。――大丈夫、想定内です。わからなくて当然ですから」



 私だって、未だにこの世界のこと、よくわかってないんだし。



「とにかく、私はこことは別の世界から、神様の中を通って、こっちの世界に落ちて来たんです。……あ。正確に言うと、落ちたのはセバスチャンの上だったみたいで、思いっきり下敷きにしちゃってたらしいんですけど。お陰で、こっちは怪我ひとつせずに済みましたよー。あはははっ」


「……ちょ――、ちょっと待ってくれないか?……その……『神様の中を通って』というのは、どういう意味なのかな?」


「どういう意味って言われても……。えーっと、私がこの世界に来る前の世界――つまり、私が元いた世界では、神様は、ただの桜の木に過ぎないんですけど……その木の前で、幼なじみの男の子と、話をしてたんです。そうしたら、いきなりどこかから私を呼ぶ声がして……。で、めまいがしてその木――こちらの世界で言えば神様ですね。――に、寄りかかったら、体が木にめり込んで、中に吸い込まれて……」


 王子は『?』で埋め尽くされたような顔してたけど、構わず続ける。


「木の中は空洞になってて、真っ暗で……。そこをずーーーっと落ちて落ちて、どのくらいかわからないけど、結構長い時間落ち続けて……。んで、いきなり周りが明るくなったなーと思ったら、また下に落っこちて……」



 ……うわ。

 王子ってば、今度は口をぽかんと開けちゃってる。


 こんな王子の顔、きっとレアなんだろうなー。



 ……っと、ヤバイヤバイ。

 笑っちゃ悪いけど、なんか顔が緩んできちゃう。



「まあ、つまり、その落ちた先……ってのが、セバスチャンの背中の上だったワケですよ。ここまでわかります?」

「……いや。わかった、ような……気もする部分も――……。……いや、すまない。正直、よくわからないな」


 王子は額に手を当て、目をつむって、何やら、考え込むようなポーズを取っている。



 ……やっぱり、大分混乱してるみたい。


 まあ、無理はないけど……。



「えっと、じゃあ……とりあえず、私は別世界から来た人間――ってことだけ、理解しててください。いいですか?」

「――ん?……あ、ああ……」


「じゃあ、続けますね。――それから先は、さっきセバスチャンが言ってたとおりです。姫様と勘違いされて、この城に来て、国王様に会って……。その時の国王様が、すごく心配して、姫様の帰りを待ってたように思えたんで……『実は偽者でした~』なんて、言えなくなっちゃって。……だって、余計にショック与えちゃうじゃないですか。だから……嘘ついて申し訳ないと思ったし、心苦しかったけど、もう少しだけ、姫様のフリを続けてみようって思ったんです」


「……クロヴィス様は、君を見てすぐに、リアだと?」

「え? あ、ああ……そうです。実の父親なら、すぐに見破られちゃうだろうなって、心配だったんですけど……。なんとか、バレずに済んだみたいです」


「……そうか」

「だから、今この時点で、私の正体を知ってるのは、セバスチャンとアンナさんとエレンさんと、カイルさん――そして、王子だけってことになります」


「……なるほど」

「それで……姫様が無事だって、私が思う理由、なんですけど――」


 言った後、私はちらっとセバスチャンを窺った。



 これは、セバスチャンにだけ話した――ってゆーか、口がすべって、うっかり漏らしちゃったことだけど……。


 セバスチャン、あの時パニクってたもんなぁ。……王子もパニクるかな?


 ……ってか、セバスチャンも、あの話をどこまで受け入れてくれてるんだか、イマイチわからないんだよね。


 ん~……、まあいっか。

 とにかく話してみよう。



 私はゴクリと唾を飲み込み、ゆっくりと深呼吸してから、考えた末に行きついた、ある仮説について語り始めた。

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