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桜咲く国の姫君~神様の気まぐれで異世界に召された少女は王子と騎士見習いに溺愛される~  作者: 咲来青
第4章 ルドウィン国の王子

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第14話 王子の動揺

 私がうなずいたのを確認すると、セバスチャンもこくりとうなずき返し、王子に視線を戻した。


「ギルフォード様、どうか落ち着いてお聞きいただきたいのですが……。姫様は――リナリア様は今、この城にはいらっしゃいません」

「……と言うと、本城に?」


「いいえ」

「本城でもない? では、どこに?」


「……わからないのでございます」

「わからない?……どういうことだ?」


 それまで落ち着いて見えた王子だったけど、『わからない』という返答は、さすがに予想外だったらしい。瞬時に顔色が変わった。


「どういうことであるのか、私共も、まだ呑み込めていない――と言うのが、正直なところなのです。姫様は、今朝、私がお部屋に参りました時には、もう……」

「『もう』?……もう、とは何だ? まさか、『この部屋から消えていた』とでも言うつもりか?」


「……はい。まさしく。……おっしゃる通りでございます」

「な……!」


 王子は目を見開いた後、片手で口元を覆った。『信じられない』って言ってるみたいだった。


「当然、城中くまなく捜したんだろうな?」

「はい。もちろんでございます」


「城外も、心当たりのあるところは、全て――?」

「はい。姫様がご存じの場所は、全て」


「それでも見つからなかったと?」

「……はい」


「……そうか……」


 王子は青ざめた顔でつぶやくと、辛そうに目を伏せた。



 ……意外。

 王子も、こんな顔するんだ……。


 ――って、小さい頃から妹のように思ってた人が、突然いなくなっちゃったんだもんね。

 動揺しない方がおかしいか……。



「それで? そのことは、皆知っているのか? クロヴィス様にご報告は?」

「……報告は……いたしました。ですが、その……」


 セバスチャンは言いにくそうに、体をもじもじさせた。

 そして、ちらっと私に目配せしてから、しょんぼりと肩を落とす。


「陛下にご報告しましてから、神様の御許(みもと)にて、サクラ様を拝見し……。その、何と申しましょうか……すっかり、姫様と思い込んでしまったのです。それからこの城にお連れし……陛下に、姫様がお戻りになられましたと、お伝えしてしまった次第でございまして」


「……なるほど。それで彼女に、リアが見つかるまでの身代わりを頼んだ、と……そういうことか」

「はい。申し訳ございません……」


 そう言うとセバスチャンは、叱られた子供のように縮こまった。


「セバスを責めるつもりはない。特に、何か事件があったわけでもないのだろう? 眠っている間も見張っている方が不自然だ。――そんなことより、リアの捜索は? 今、どんな状況なんだ?」


「姫様の護衛が一名、捜索のために、ルドウィンへ向かっております」

「一名? たった一人でか? しかも、ルドウィンだと――?」


 『何故?』と問いたげな王子を、慌てて手で制し、私は早口で言った。


「私が言ったんです! 姫様が、自分の意思で出て行ったんだとしたら、向かうのはきっと、王子のところだって!」

「……君が? 何故、リアが私の元へ向かっていると思ったんだい?」


「そりゃ――っ、決まってるじゃないですか! 王子が婚約破棄したがってるって聞いて、いてもたってもいられなくなったんだって思ったからですよ。人から聞いた話じゃ、納得出来なかったんじゃないかって。直接王子から、話を聞きたかったんじゃないかって」


「……しかし、あのリアが……。たった一人で城を抜け出すなど、とうてい信じられないよ。第一、城の警備は厳重なはずだ。そこをどうやって、協力者もないまま突破出来るというんだい?」


「う……っ。そーなんですよね。問題はそこなんです。でも、実際姫様は、この城の中にはいないワケですから……。とりあえず、その問題は置いとくことにして、カイルさんに、ルドウィンへ行ってもらったんです」


「……カイル?」

「はい。カイルさんは、姫様専属の護衛さんです。騎士見習いなんだそうですけど」


「……ふぅん……」



 ……あれ?

 どーしちゃったんだろ、王子?


 なんかちょっと……不機嫌そう、だけど……。



 ……んん?

 気のせい……かな?



 私はちょっぴりヒヤヒヤしながら、王子の様子を窺った。

 すると、ふいに顔を上げ、


「それにしても、リアの捜索が、たった一人だけというのは心配だな。もっと人員を増やせないのか、セバス?」


 不機嫌そうに感じたのは、やはり気のせいだったらしく、真剣な表情でセバスチャンを見据える。


「は、はい!……そうなのですが……」

「国王様にバレないようにするためには、仕方なかったんです。大人数での捜索ってなると、ごまかせなくなるから」


 私が口を挟むと、王子は怪訝(けげん)な顔つきをした。


「リアがいなくなったことを、どうしてクロヴィス様に伏せる必要があるんだい? 第一、君だって、リアの代わりをするのは大変だろう? 偶然セバスに会い、リアと勘違いされ、この城に連れて来られただけなんだろう?」


「そ……それは、そうなんですけど……」

「リアの捜索だって、急がないと危険だ。森には、怪しい者たちが(ひそ)んでいると聞く。こうしている間にも、危険に(さら)されているかも知れないんだ」


「えっ……と……。でも、あの……」



 ……うぅ、どーしよー。


『私、姫様は無事だと思うんです。だって姫様は、私のいた世界にいると思うから!』


 ……なんてこと、私の中では確信してても、証明出来ることでもないし……。



 どう言ったらいいものかと、頭を悩ませてると。

 急に、王子がハッとしたように目を見開き、私をじぃっと見つめて。


「君……もしかして、リアの居場所を知っているのか? 知っているか、もしくは……見当がついている?」



 ――うっ。



「そうでもなければ、あれほどリアに同情的だった君が、彼女の安否もわからない状態で、落ち着いていられるはずがない。そうだろう? 私は、見当違いのことを言っているかい?」



 ……うぅっ。

 やっぱりこの人、(あなど)れないなぁ……。

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